第70話 ライガーさんに秘密を明かす
ライガーさんにパンダちゃんの秘密を教えるにしても、召喚獣だということはクーヤちゃんの秘密にも繋がる話だし、とりあえずまだよく知らないベイダーさんの近くで話すことではないので外に出た。
「パンダちゃんのことを話すなら、ライガーさんに秘密にしていて欲しいことがいくつかあるの」
「秘密?あの動物って何か訳ありなのか??」
「えーと、どちらかと言うとボクの秘密?ライガーさんや家族になら知られてもいいんだけど、ベイダーさんとかまだよく知らないし」
「・・・なるほど。俺はクーヤが困るようなことは絶対にしない。秘密は漏らさないと誓おう!それにもう魔道具で飛ばされて来たことまで知ってるしな」
「じゃあこっち来て!」
俺とレオナねえとライガーさんの三人は、馬車の横を通り過ぎ、人目のつかない工房の横に移動した。
「えーとねえ、実はライガーさんにひとつ嘘をついてました!」
「嘘?」
「最初に出会った時に、『召喚士になりたい!』って言ったよね?」
「もちろん覚えてるぞ!」
「実はボクね、もうすでに召喚士なの」
「はあ??もしかして、クーヤって8歳なのか!?」
「5歳だよ!えーとね、外国生まれだから早いの!」
「なんだと!?仕事で何度か外国に行っているが、そんな話は聞いたことが無いぞ?ああ、でもクーヤの住んでた所は俺の知ってる外国とは違うのか・・・」
そっか!外国生まれの設定は、外国に行ったことがある人には通用しないのか。
・・・いや、すごく変な国ってことで何とかなるかな?
「でね、あのパンダちゃんって召喚獣なの!」
ライガーさんは口を半開きにしながら頭の中で話を整理していたが、この話の重要なポイントに気付いた。
「いや待て!召喚獣にするには単独で魔物を倒さなきゃダメなんだぞ!!あの大きな動物を、いや、魔物をどうやって倒した!?」
ライガーさんは召喚士なので、召喚獣を入手する大変さを誰よりも良く知っているのです。
「レオナねえはもう知ってるけど、ボクね、魔道具で飛ばされたせいなのかわかんないけど、変な召喚ができるんだ!でね、変な召喚獣も持ってるの!」
「・・・変な召喚獣??」
実際に見れば、もう認めるしかないでしょう。
「じゃあ呼び出すから見てて!いくよ?鉄板出てこい!」
ショタの目の前に鉄板が出現した。
もちろん半分は地面に埋まっている状態だ。
「なんだこりゃーーーーーーーーーーーー!?」
驚きを隠せないライガーさんだったが、恐る恐る鉄板に触れる。
「これは鉄の板なのか!?さっぱり意味が分からん・・・。召喚獣??」
「本当にただの鉄の板だよ。でも召喚獣なの!」
「まるで意味が分からんが、意味が分からんことに慣れてきたぞ。クーヤだしな!」
なんかタマねえも同じこと言ってたぞ!
「でね、あの屋敷の近くで遊んでたら魔物が出て来たから、この鉄板を出したら、勝手にぶつかって死んじゃったの」
「・・・・・・なるほど。確かに、走ってて目の前にこんな鉄の板が出現したら、魔物でも死に至る可能性は十分あるな」
「だから家にパンダちゃんがいたのです!」
長い説明が終わり、額に浮かんだ汗をレオナねえに拭いてもらう。
「いやちょっと待てや!あんな魔物なんか知らんぞ!!」
ここでようやくレオナねえが話に入ってきた。
「アレって、ライガーのおっちゃんもよく知ってる魔物だぜ?」
「はあ?・・・・・・いや、あんなの絶対知らんぞ!」
「クーヤに聞いた時アタシも驚いたんだ!クーヤは『パンダちゃん』って呼んでるけど、実はアレってポレフィータなんだとよ!!」
「ポレフィータ??・・・いや、アイツって真っ黒だろ?大きさは似ているが」
「クーヤ、説明してやれ!」
「えーーーーー!?笑い話は何度も繰り返すと寒くなるって父さんが・・・」
2回目ならギリギリセーフってことで、昨日の一幕を再現した。
「ぶわっはっはっはっはっはっはっはっは!!しかし泥んこ大好きって!!」
「あーーーっはっはっはっはっは!おもしれーだろ!?」
そこでふと気付いた。
ポレフィータの正体って、隠しておいた方がいいんじゃないかと。
噂が広まればマッチョ召喚士による乱獲が始まり、珍しいモノじゃなくなってしまう可能性が高い。せっかくのパンダちゃんロゴマークも台無しだ。
いや、その前に生身で倒せるのかが問題だろうけど・・・。
ライガーさんなら倒せるのかな?
「ねえ、ライガーさん!」
「ん?どうした?」
「ライガーさんって、一人でポレフィータ倒せる?」
「どうだろう?それなりに強い魔物ではあるが動きは鈍いからな。とはいえ頑強な身体だから俺でも倒しきれるかどうか・・・。しかしなぜそんなことを聞く?」
「んとね、パンダちゃんの噂が広まっちゃったら、召喚士がみんな倒しに行くんじゃないかな?って思ったの」
「「・・・・・・・・・・・・」」
その未来を想像し、二人とも考え込んだ。
「でも隠しておけば、しばらくは珍しい動物でいられるよね?でね、ライガーさんがポレフィータを召喚獣にしておけば、絶対良いことあると思うんだ!」
さっき描いたロゴマークを二人に見せる。
「それだ!!」
「天才かよ!!」
二人は瞬時に察してくれた。
そう、可愛いマスコットキャラには絶大な宣伝効果があるのです!
「いや待て、それならクーヤのポレフィータでも良くないか?」
「ダメーーーーー!あれはペットだから、ウチに置いとくの!!」
「あーーーっはっはっはっはっは!天才でもそこはクーヤなんだな!よし、ライガーのおっちゃん、頑張ってポレフィータを撃破だ!!」
「簡単に言いやがって!本当に勝つか負けるかギリギリの相手なんだからな!?それにアイツって滅茶苦茶臭くて汚いから、召喚士が全員避けてる魔物なんだぞ?お前だってポレフィータは避けてただろ?」
「当たり前だろ!乙女が臭くなるわけにいくかよ!」
「男だって臭くなりたかねえよ!!」
もしライガーさんがポレフィータを召喚獣に出来たら、名前を付けてあげよう!
ってか、役所にも行かず俺らは何をやっているんだ!?
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