第294話 ホニャ毛に次の任務を与える

 ようやくホニャ毛装備が完成したので、ギルドにいた冒険者達にオシャレ装備の情報をばら撒くと、大勢の冒険者がその日のうちに、シェミールとブロディ工房に駆け込んで行った。


 当然、ここから先は店に丸投げです。


 ブロディさんには従業員を雇うよう言ってあったし、クリスお姉ちゃんは出来る女なので、すでに土地を購入して2号店を建設中なのだ。


 そこは男性服専門店じゃなくて、オシャレ装備専門店にするんだってさ。


 もう1ヶ月後にはオープンする予定らしいから、冒険者達の装備が一新されるのはその頃になるのかな?また街が騒がしくなりそうです!


 そしてボク達は相変わらずグルミーダの革集めをしてたんだけど、リリカちゃん用の革が50枚ほど集まったところでそろそろ十分だろうってことになり、帰りに寄った冒険者ギルドで見つけたホニャ毛の四人を外に連れ出しました。



「何で人気ひとけの無い場所に連れて来られたわけ?」

「追い剥ぎか!?装備が格好良すぎるとこういう事もあるんだな・・・。上等じゃねえか!返り討ちにしてやるぜ!」



 リズお姉ちゃんがファイティングポーズをとって、シュッ!シュッ!とジャブを繰り出しているが、アレを倒すのは相当難易度が高そうですな。



「ちげえよ!!まあ簡単に説明すると、ホニャ毛に次のミッションだ!」


「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」



 相変わらずノリの良い人達ですね!



「次のミッション?」

「何それ、美味しいの?」


 ちなみにロコ姉ちゃんは制服姿になっていて、こっちもすごく可愛いです!


「アタシらの見た目が少し変わったことに気付いてたか?」


「見た目?」

「ん~~~、そういえばみんな同じ手袋を着けてるね」

「それも格好良いな!」

「ブーツも変わってない?」


 おお、レオナねえのブーツの変化にも気付くとは!

 シーラお姉ちゃん、なかなかの観察眼ですね~。


「正解だ。オシャレ装備は他の冒険者らにも教えたけど、これはお前らだけにしか教えないつもりなんで、誰にもしゃべらないと約束してくれ」


「えええええ!手袋のこと??」

「しゃべらないも何も、自分から見せてるじゃない」


 それを聞いたレオナねえがニヤリと笑った。


「手袋を見られる分には問題ねえんだ。重要なのは、秘められた『真の力』の方だ」


「「真の力だってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」



 本当にノリがいいなあ~!ホニャ毛すごく好き。



「しゃべらないって約束したら、それを見せてくれるってこと?」


「そういうことだ」


「しょうがないわねえ。こんな場所まで連れて来られて、『じゃあ見ない』って帰れるわけ無いじゃない!」

「二択にすらなってねえよな」

「でも面白そうだから見せてもらおうよ!」

「誰にも言わないって約束する!」


 話が纏まったようです。



「じゃあ行くぜ?」



 ヴォン!


 レオナねえの合図で、一斉に手袋を光らせた。



「うぇええええ!?」

「手袋が光った!!」

「なんだそりゃ!メチャクチャ格好良いなオイ!!」

「ちょっ、え?どういうこと!?」



 口端を上げたレオナねえが、右手に魔力を流すのを止め、金属バットを持って一歩前に出てから、握った左拳を顎の横あたりに構えた。



「リズ、これでアタシの左腕を殴ってみろ!光ってる部分をだ」


「マジで言ってんのか?・・・やるけど、怪我しても知らんからな?」



 金属バットを受け取ったリズお姉ちゃんが、レオナねえの左腕目掛けて、軽くバットを振る。



 キンッ!



「はあ!?一体どうなってやがる?」


「もっと強く殴れ!」


「・・・わかった」



 ゴイーーーーーーーーーーン!



 腕が折れてもおかしくない一撃だったけど、逆に金属バットの方が折れ曲がった。



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」



「というわけだ。当然アタシの左腕は無傷だぞ」



 シーラお姉ちゃんがツカツカと歩いて来て、レオナねえの光る腕を触った。



「硬いわね。この青白い光を消すとどうなるの?」


 レオナねえが魔力を流すのをヤメると、普通の革の手袋に戻った。


「あ、普通の革の手触りになった!えーと、一体どうやって光らせてるのよ?」

「魔力を流すと青白い光を放つようになるんだ」

「タマねえが発見したんだよ!」


 タマねえがドヤ顔になった。


「装備品に魔力を流すですって!?そんなことが出来るの?」

「最初は難しいけどな。やってみるか?」


 レオナねえが、肘まで手袋をシーラお姉ちゃんに渡した。


「・・・何をどうすればいいのか、全然わからない!!」

「んなもん気合だ。ウチらは全員出来たぞ」

「戦士系だから無理って言い訳は通用しない」

「クッ、光らせることが出来ないと負けって空気じゃない!」



 タマねえによる追撃の煽りで尻を叩かれたシーラお姉ちゃんだったけど、結局10分くらいで手袋を光らせることに成功した。


 戦士系だけど彼女は『パラディン』だから、治癒魔法も使えるんだよね。



「やっと光ったあああああーーーーーーーーーー!!」


「な?前例さえあれば、気合で何とかなるもんだ」

「やればできるは魔法の合言葉」


 タマねえ、それどっかで聞いたことあるフレーズ!


「すげえな!オレも挑戦していいか?」

「ん~、リズの手にはちょっとサイズが小さいかも」

「ちょっと待ってろ。肘までじゃない方の手袋なら丁度良い大きさかもしれん」


 レオナねえが、バッグから最初に買った肘までじゃない手袋を取り出して、リズお姉ちゃんに渡した。


「おっ!ピッタリだ」

「よかったな!ついでにアイリスとナナも、ロコとミルクに肘まで手袋を貸してやってくれ」

「はいは~い」

「ミルクは魔法使いだから、たぶん3分くらいでいけると思うよ」


 ロコ姉ちゃんとミルクお姉ちゃんも手袋を装着した。


「魔力を流すんだよね?なんか難しそう・・・」

「やってみる!」



 思った通り、ミルクお姉ちゃんは3分ほどで手袋を光らせることに成功し、ロコ姉ちゃんも10分ほどで光らせることが出来た。


 リズお姉ちゃんだけ大苦戦してたけど、それでも25分くらいで手袋がペカっと光り、疲れと安心感で地面に大の字になった。



「みんなおめでとーーーーーーーーーー!」

「あ、言い忘れてたけど、1時間ちょいくらいで魔力が枯渇するから気を付けろ。どんどん具合が悪くなっていって、しまいにはぶっ倒れるぞ」

「えええっ!?光らせてから30分くらい経ってるんだけど!」

「どっちにしても、そろそろ手袋を回収するぞ」


「「エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


 ホニャ毛全員からブーイングが飛んで来た。


「そいつは貸しただけだからな?っつーわけで、ホニャ毛は全ての予定をキャンセルし、明日からは手袋の素材集めだ!」

「手袋の素材まで教えてくれるの!?」

「それを隠したらお前らに自慢しただけじゃん。ってことで特別に教えてやるつもりだけど、素材の価値が跳ね上がって手に入らなくなったら困るから、絶対に情報を漏らさないのが条件だ」



 ホニャ毛全員が、真剣な表情になった。



「こんな格好良い装備品の情報が出回ったら、間違いなく争奪戦になるだろうな。この剣に誓おう。情報は絶対に漏らさない」

「でしょうね。私も絶対に口外しないって、この盾に誓うわ!」

「言わない!」

「私達にだけ教えてくれてありがとう!情報は絶対に漏らしません!」



 情報が漏れて他の冒険者達にグルミーダを狩り尽くされてしまったら、もうすべてが台無しだからね~。


 今から素材集めを始めるとこなのに、軽はずみな真似はしないでしょう。



「じゃあ明日の1時に西門に集合だ。ちょっと時間が早いけど狩場が遠いんだよ」


「1時か・・・」

「はやっ!でも頑張るしかないわね~」

「了解!」

「がんばろーーーーー!」



 あー、人数が多いからグリフォンが使えないのか。

 ちょっと大変だけど、久々にトナカイに乗って遠出ですね!

 

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