第293話 家族全員でクエクエ

 祝福の儀で、誰も予想していなかった『勇者』の職業を授かったリリカちゃん。


 これは司祭様ですら知らないレア職業でしたが、三人の子供達と、後ろでボケーっとクエクエを見ていたレオナねえは、それが何なのか知っていました!


 そうなると当然、家族のみんなも『勇者』について興味を抱くようになりまして、家に帰った直後にクエクエⅠを起動させました。



「*おおリリカ!ゆうしゃロロのちをうけつぎしものよ!そなたがくるのをまっておったぞ!」



 しばらくぶりで、再び『勇者リリカ』がクエクエの世界に降り立った。



 本当はお母さんがゲームをやった方がいいような気もするんだけど、やはり主役は『勇者リリカ』ですので、リリカちゃんがコントローラーを操作して、お母さんやお姉ちゃん達はそれを後ろで見ていることになりました。


 リリカちゃんはもうすでにひらがなをマスターしており、文章をこの世界の標準語である『レミセラート語』に翻訳しながら、少しずつゲームを進めていく。



「私も結構日本語が分かるようになったつもりだったけど、リリカの方が日本語を極めてる件について」



 ティアナ姉ちゃんも、『抱きしめて!僕の王子様』というBLアニメを理解するために、日々日本語の勉強を頑張っているのですが、ひらがな限定ではあるけど、リリカちゃんの方が日本語の理解度が上を行ってるみたいですね。


 まあクエクエⅢをクリアするまで、結構長いこと冒険したからな~。


 とにかくリリカちゃんは、お母さん達にクエクエを教えるのは自分の役目だと思っているらしく、今回ボクは翻訳の仕事をやらずに済みそうです!


 とはいってもそこは幼女。リリカちゃんの中で当たり前と思ってる行動を説明なしでやってしまうので、『今、階段を降りて下の階に移動したんだよ』といった感じで、ギャラリー達がわかるようにボクが解説してます。



「あ、なんか出てきた!」

「まものだよ!まだれべるがひくいから、たおすのたいへん!」


 お姉ちゃん達と会話しながらも、昔ボクがやっていたように、画面に表示された文字をリリカちゃんが読み上げていく。


「リリカのこうげき!スライムに2ポイントのダメージ!」


 そんなこんなでスライムを倒すことに成功。


「あ、倒した!?」

「ふーーーーー!あぶなかったーーーーー!」

「後ろで見ていてもよく分からないのですが、ゲームって凄いですね・・・」

「家の中で冒険が出来るとかマジで意味わかんねーよな!こんなの司祭様に説明しろったって絶対無理だ」

「このゲームってのを作った人、天才過ぎじゃないかしら・・・」

「リリカちゃんが操作しているのが『ゆうしゃ』なのよね?」

「うん!」


 お父さんは仕事が忙しすぎてゲームに興味を持つ時間すら無かったんだけど、娘が勇者という謎の職業になってしまったので、何とか理解しようと頑張ってます!


 しかし大家族が全員でクエクエを遊ぶなんて光景、日本でもそうそうお目にかかれないんじゃない?


 勇者を知るにはクエクエをやるしかないってのが、面白い状況を作り出してます。

 ただリリカちゃん本人にしても、勇者のおさらいをする良い機会かもだね~。



 ・・・とまあ、家族全員がクエクエの世界に旅立ってしまったので、今日の夕食はクーヤちゃんが一人で作りました。


 滅多に帰って来ないお父さんが家にいるってことで、バッファローのステーキとサラダです。みんな美味しいって褒めてくれました!


 結局その日は寝るまでクエクエをやっていたので、『勇者』がどういうモノなのかを、家族のみんなに少しは知ってもらえたと思います。




 ◇




 翌日。


 お父さんとクリスお姉ちゃんは普通に出社して、ティアナ姉ちゃんも学校へ行ったんだけど、リリカちゃんとお母さんはクエクエを続行するみたいです。


 お母さんも『勇者』をしっかりと理解することで、リリカちゃんと二人三脚で職業を育てて行こうって思ったんじゃないかな?


 なんせレア職業すぎて、学校の先生の指導だけじゃ不十分だろうからね。

 ただ娘と遊んでるようにしか見えないけど、これも重要なミッションなのだ。



 そしてボクとレオナねえは、相変わらずグルミーダの革集めです。



 自分達の分はもうほとんど集め終わったと言ってもいいんだけど、今度はリリカちゃんの装備分の革が必要になったからね~。


 まあ幼女一人分なので、何日か頑張れば革集めも終了かな?


 装備を揃えるのにめっちゃ時間が掛かったけど、ようやくセルパト連邦第二の国へ向かって出発しますぞ!



 今回、久々にバッファローを1体狩ってしまったので、グルミーダ狩りを少し早く切り上げて、解体の方に時間を回した。


 ジャーキーの弟子達も巣立ってしまったので、すぐ家に帰る必要もなくなり、みんなと一緒に冒険者ギルドに入る。



「うおっ!スゲー集団がいると思ったら、『ホニャ毛』じゃん!」

「オシャレ装備が完成したんだね!」

「大変だ!突撃ーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 新装備を着用して超絶格好良くなったホニャ毛の側に駆け寄って行く。



「おい!全員メチャメチャ格好良くなってるじゃねえか!」



 レオナねえが声を掛けると、ホニャ毛メンバー全員がパッと振り向いた。



「お、レオナ!やっと全員の装備が完成したぜ!」

「その鎧、お世辞抜きにマジで格好良いな!」

「折角だから新調した鎧を着てきたんだが、元の鎧もスゲー格好良いぞ!」


「シーラの装備も凛々しくてすごく良いね!」

「鎧も気に入ってるけど、1番はこの盾ね!」

「おーーーーー!大正義の盾だ!」


 ショタ自ら監修したデザインだけど、ブロディさんメッチャ良い仕事したなぁ~。

 頭に思い浮かべていた格好良い盾が実写化され、見てるだけで感動モノですよ!


 シーラお姉ちゃんが盾を翳すと、ボク達だけじゃなく周りで見ていた冒険者達も騒ぎ始めた。


「ミルクの見た目変わり過ぎぃ!クーヤちゃんの絵は見たけど、実際に着てみるとすごく可愛かったんだね!それでいて謎めいた不思議な感じだよ!」

「ありがとう!私もすごく気に入ってるんだけど、この可愛さを理解してくれる人がいて良かったーーーーー!」


「ロコさんは、もう可愛いの極みですね!上から下までピンクピンクしています」

「これは可愛い!」

「にゃははは!でも少し恥ずかしいかも。次回は制服姿も見せるね!」



 こうしてホニャ毛のみんなが喜んでる姿を見ると、頑張ってデザインして良かったなーって思いますね!


 ただオシャレ装備勢がまた増えたから、もう他の冒険者達も黙っていられないんじゃないかな?そろそろ、どこで手に入れたのか聞いて来る頃だよ。


 けどもう知り合い分のオシャレ装備は完成したし、他の冒険者達にしゃべっても問題ないような気がしますね。


 ようやく情報を解禁する時が来たのです!

 ブロディさんとクリスお姉ちゃん、今から店に冒険者達が雪崩れ込みますぞー!

 

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