第295話 なぜかショタの謎解き回

 今日は初めてホニャ毛と一緒に狩りに行くことになったので、朝早くからずっとワクワクしながら、待ち合わせ場所の西門へとやって来た。



「お、全員揃ってるな!」

「おはーーーーー!」

「おはよ~」



「「オッス!」」



 リズお姉ちゃんの声がデカくて、他の人の『おはよう』がかき消されて『オッス』しか聞こえなかった。



 無事ホニャ毛と合流したので、少しテンションが上がり、西門を出た後も何となくおしゃべりしながらテクテクと歩いて行く。



「じゃあ、あと4人分のトナカイを出すね!」

「いや、必要無い」

「ん?」

「まあ見てな?」



 ロコ姉ちゃんが、進行方向の左側に5歩くらい移動した。



「『タルタル』出ておいで!」



 シュシュシュシュッ!



「「おおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 なんだかよく分からない茶色が4体出現し、ホニャ毛のことを何も知らないボクとタマねえとプリンお姉ちゃんが、驚きの声を上げた。



「ホニャ毛はいつも精霊に乗って狩りに行くんだぜ?」

「へーーーーー!アレって精霊だったんだ!!」

「ああ見えて結構速いんだよ!」

「私達がシャンクルに乗る前はホント羨ましかったよね~」


 それを聞いたシーラお姉ちゃんが会話に入って来た。


「そう、それそれ!!いい加減さあ、シャンクルの持ち主の事を教えてくれてもいいんじゃない?っていうか、そっちの二人がかなり怪しいんだけどね~」


 そういえばレオナねえ達って、今じゃ当たり前のようにトナカイを乗り回してるんだけど、ホニャ毛の人達にもずっと隠したままだったんだね。


 そっちの二人ってのはタマねえとプリンお姉ちゃんのことだと思うけど、残念ながらハズレです!!


「ん~、どうする?」

「私達がいつもと同じ行動をとったら、どうせ色々とバレるんじゃない?」

「全然考えてなかったね~」


 まあ、ホニャ毛だけに話すってんならいいかな?


「じゃあ、ちょっと準備をするので待っててください!」

「準備って何だよ?」



 スタンドミラーを出して、ハゲヅラと鼻メガネを装着した。



「いや、何でそうなる!!」

「大事な場面ですので!」

「普通は格好良くキメるとこじゃないの!?」

「相変わらずの不思議生物だね~」

「クーヤはこの姿が一番格好良いと思ってる」

「そうなんでしょうか?」


 お姉ちゃんズはともかく、タマねえが適当なこと言ってますね!

 別に格好良いとは思ってませんぞ!


 テクテクとホニャ毛の前まで歩いて行く。


「おい!クーヤがまたハゲてるぞ!」

「そういえばこの前、ギルドで『小っさいおっさん』が噂になってたね」

「ハゲてるから、子供だって認識出来なかったんじゃない?」

「タルタルに乗りたいの?」



 ホニャ毛4人の足もとに急接近して、彼女らを下から見上げる。


 そして古くなった蛍光灯のように、パッ、パパパッ、パッと点滅させてからハゲを光らせた。



「「ぶわーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」



 唾が飛んで来ない位置まで緊急離脱し、サタデーナイトにフィーバーしているポーズを決めた。



「トナカイ召喚!」



 シュシュシュシュシュシュシュシュ!



 爆笑しているホニャ毛を、トナカイの大群で囲んだ。



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」



「ウソ!!この子だったの!?」

「シャンクルがいっぱい!!」

「マジかよ、これほど大量のシャンクルをテイムしただと?」

「・・・テイム?」


 そこでようやく彼女らは違和感を覚える。


「これ、テイムされたシャンクルじゃないよ!!」

「召喚魔法だ・・・」

「はあ!?マジで言ってんのか!?」

「嘘でしょ!?でも確かに突然現れたわね・・・」



 トナカイを全部消すと、レオナねえが会話に入った。



「というわけだ。もちろんこれもトップシークレットだぞ?」


「う、うん。もちろん言わないけど、まさかこんな小さな子が凄腕召喚士だったなんて、本当にビックリだよ!」

「クーヤちゃん凄いね!」

「今思い出したんだが、もしかしてあのカロリーゼロって・・・」

「あーーーーーーーーーーっ!魔物のスタンピードの時の!?」


「ストップ!ある程度までなら教えてやっから、狩場に移動しながらにしよう」



 楽しく狩場に向かうハズが、なぜかショタの謎解き回になってしまいました。


 でもグルミーダの森に行ったら召喚獣を出すことになるし、どうせ話すことになっただろうからね~。


 間違いなくホニャ毛は有事の際にメッチャ頼りになる存在だと思うから、ある程度知っておいてもらった方がいいのかもしれないな~。


 また魔物のスタンピードのようなピンチになった時に、ボクのことを知っているかどうかが明暗を分ける展開になる可能性だってあるわけだから。




 ◇




 今回はトナカイに乗って地上を歩いて来たので、いつもより到着に結構時間がかかってしまいました。


 グリフォンの有難みが身に染みますね~。

 またリナルナでいっぱい捕まえてこなきゃな。



「こんなに可愛いのに、カロリーゼロを何体も従える凄腕召喚士だったなんてね!」

「どうせ見られるから先に言っとくけど、クーヤが所持している召喚獣ってマジで半端ねえからな!」

「アルペジーラとカロリーゼロの他にも凄い召喚獣がいるの?」

「クーヤ、もう隠す必要も無いし、いつものメンバーを召喚してもいいぞ~」

「じゃあ出すよ?メルドア召喚!」



 しかし呼び出された召喚獣を見て、ホニャ毛が完全にフリーズした。



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」



 そういえばメルドアって、超絶ブラックリスト入りの指定暴力獣でしたね。



「ちょ、ちょっと待って!!この白いのって、南の森の主じゃないの!?」

「メ、メルドアジェンダ・・・」

「あわわ、あわわわわわ」

「うそ・・・、こんなのどうやって倒したの・・・?」



 ウーム、今日はサクッとグルミーダ狩りのやり方を教えるつもりだったのに、なかなか狩場まで辿り着けない件。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る