第135話 絶体絶命のピンチ

 

 ―――――ペチコ視点―――――




「ふーーーーー!にゃんとか倒せたにゃ。カロリーゼロありがとにゃ!!」



 かにゃり手強い魔物だったけど、カロリーゼロが背後からぶん殴ってくれたおかげで、ギリギリ倒せたにゃ。3体同時はさすがにちょっと厳しいにゃ~。


 向こうに逃げて行った手負いの魔物も、筋肉隊ともう1体のカロリーゼロで倒したみたいで安心したにゃ。



 ・・・見た感じ、コイツが最後の1体にゃね。



「ペチコやるじゃない!あっちの魔物も片付いたみたいよ!」

「良かったにゃ!『マデストラミア』はさすがにちょっとキツかったにゃよ」

「ペチコがいなかったら、間違いなく大惨事だったわね・・・。本当に助かったわ!ありがとうペチコ!」

「カロリーゼロがいてくれたお陰にゃ!」

「本当に頼もしい守護神よね!でも何でこんなのがパンダ工房を守ってるわけ?」

「街の守護神にゃ!冒険者達と一緒に全ての門を守ってるんにゃ」

「なんで魔物が街を守ってるのか本当に意味不明なんですけど・・・」


 マズイにゃ。ランにゃんに気付かれるわけにはいかにゃいにゃ!


「凄腕のテイマーか召喚士が、この街にいたのかもしれにゃいにゃね~」

「誰かが置いてったってこと!?ところで召喚士と言えばクーヤを見かけないけど、一体どこに行ったの?」


 しまったにゃ!ししょーを連想させてしまったにゃ!!


「知らにゃいにゃ。さっきタマししょーに抱えられて飛び出していったにゃ。全然気にする必要にゃいにゃ」

「飛び出して行ったって・・・本当に大丈夫なの!?」

「余裕にゃ」


 ランにゃんがジト目でこっちを見てるにゃ。



「クーヤとタマねえしらない?」



 声のする方を見ると、リリカがこっちに向かって歩いて来ていた。



「リリカちゃんダメじゃない!工房の中に隠れてないとまだ危ないわ!」



「あーーーーーーーーーっ!なにそれ!?」



 とてててててててて



 駆け寄って来たリリカが、カロリーゼロの足にしがみついた。



「あははははははは!クーヤみたいでかわいい!!」

「いや全然似てないから!!・・・ん?たしかに可愛いといえば可愛いわね。でも何でそう思うんだろ?どう見ても厳つい顔してるのに・・・」

「にゃはははははははははは!飼い主に似たにゃね!!」

「飼い主?」


 しまった!ランにゃんがまたジト目でこっちを見てるにゃ。


「にゃんのことだか、さっぱりわからにゃいにゃ」

「アンタ、何か知ってるわね?白状しなさい!!」



 ししょーーー!早く帰って来るにゃ!もう隠し通せにゃいにゃ!!






 ************************************************************




 ―――――激しい戦闘中のクーヤちゃん視点―――――




 地面に激突し、痛みに悶絶するドラゴン。


 しかし飛行の邪魔をしたゴーレムを身体から振り落とし、怒りのままに前足を叩きつけ、炎で燃やしてから尻尾で粉砕するというオーバーキルで鬱憤を晴らした。



「ぐはっ!ゴーレムでも全然歯が立たないじゃん!!」

「ゴーレムも背は高いけど、攻撃力が違い過ぎる」


 相手は全長20メートルクラスの超重量級だからな~。身長4メートルのゴーレムとじゃ、プロレスラーと園児くらい差があるのか・・・。


「とにかく今のうちにもう少し距離をとろう。飛んで来たら簡単に追いつかれちゃうから、もう一瞬も気が抜けないよ!」

「あ、飛んだ」

「はえーよ!!」



 またもや真後ろに迫ったドラゴンがボク達を燃やそうと大口を開いたので、先程と同じく口にゴーレムを突っ込んでから抱きつかせて墜落させる。



「トレント召喚!」



 ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! 


 ドラゴンの頭上にトレントを大量召喚し、樹の雨を降らせた。



『ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』



 別に強い魔物というわけではないんだけど、何本もの大木が空から降って来たら痛いに決まってる。


 おそらく久々にダメージを負ったであろうドラゴンが、憤怒の表情でトレントを燃やし尽くした。当然ながらゴーレムはまたもや粉々だ。


 しかし、約10メートル先に召喚獣を呼び出すことが可能だってことを事前に知ることが出来たのは本当に良かった。


 炎を吐かれてからの防御では、熱風で大火傷してもおかしくないからね。

 実際に近くで炎を吐かれまくっているから、絶賛気温上昇中だし!



 何にしてもこの作戦は大成功で、ゴーレムとトレントによる重量攻撃を繰り返しながら、『黄色と黒』コンビは北へ北へと逃げて行った。




 ◇




 こりゃ拙いぞ・・・。


 疲労も半端ないけど、もうすぐ魔力が尽きる。

 そして寝不足なのもあって、気を抜いたら倒れそうになる。


 ここらで総攻撃を開始して、一旦ドラゴンを撒く必要があるな・・・。



「タマねえ、そろそろ魔力がやばいから総攻」

「クーヤ!前に大きな壁!!」

「はい!?」



 見るとそこにあったのは聳え立つ壁。そしていつの間にか左右も森に囲まれており、完全に袋小路に追い込まれているような状況だった。



 やられた!後ろに気をとられすぎていて、地形の変化を見過ごしていた・・・。

 壁はまだもう少し先だけど、左右の森に逃げ込むことすらできない。


 樹々に進路を遮られてもたついている間に炎でも吐かれたら、逃げる間もなく丸焼けになるだろう。当然ながらドラゴンの横をすり抜けるのも至難の業だ。


 どうする!?

 ボクは一体どうしたらいい!?



「・・・タマねえごめん、逃げ道が無くなっちゃった。魔力も残り少ない」

「ううん、クーヤは悪くない。後ろのドラゴンとずっと戦ってたんだから。ちゃんと周りを見ていなかったタマが悪い」

「あははははは!どっちも悪いってことで、もう謝るのはやめよう!」

「でもどうするの?」



 溜息を一つ漏らして、タマねえに最後の作戦を発表する。



「残りの魔力を全部使って最後の総攻撃を開始するよ!そのドサクサに紛れてドラゴンの横をすり抜ける!」



 ・・・でも一歩間違えば死にますね、コレ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る