クーヤちゃん ~Legend of Shota~

ほむらさん

第1話 運命の転生ルーレット

 どうやら俺は死んだらしい。

 まあクソみたいな人生だったから、正直やっと死ぬことができたって感じだ。



 ―――俺は死ぬほど運が悪い。



 生まれてすぐ死んでしまった人や、非常に治安が悪い国に生まれて無残な殺され方をする人とかもいるのだから、世界的規模で見れば日本に生まれたってだけで最悪ではないのだろうけど、日本人の中では最底辺と言っていいだろう。


 とにかく良いことなんか何一つ無いまま死んだ。


 って自分語りはこれくらいにして、とりあえず今の状況を把握せんとな。




 景色も何も無い白い空間にいるんだけど、ここは部屋なのだろうか?

 とにかく周りに人がいっぱいいる。


 でも現実世界と違って、誰からも生命力を感じない。ちょっと説明はしにくいんだけど、死体を見ているような感じというか・・・。


 あっ!気付いた。俺呼吸してない。

 だからと言って苦しいわけでもない。まあこれが死後の世界なんだろな。 



 見た感じご年配の方が大半で、若い人は少ない。

 まるで病院の待合室にいるような感じだ。


 しかし俺だけじゃなく、他の人もなんらかの原因で死んだ人なのだとしたら、こんな割合になるのも納得か。大抵の人の死因は病死だろうから。


 でも幼児とか100歳前後の人が見当たらないな?最年長でも80歳ってとこか。

 見た感じ、ここにいるのは全員日本人だと思う。


 みんな俺と同じように今の状況が理解できないようで、キョロキョロを周囲を見渡したりしている。会話をしている人もいないので、俺と同タイムでここに連れて来られたのかもしれないな。



「よーしお前ら、楽しい転生ルーレットの時間だ!」



 いきなりデカい声が聞こえたので声が聞こえた方向を見ると、そこにはオールバックにサングラス、そして派手なスーツを着たファンキーな男が立っていた。


 へ?何だアイツは??

 今ルーレットとか言ってたよな!?



「俺は転生を担当している管理者の一人だ。まあ神様に近しい存在だと思っておけ」


 は??神様だって!?このファンキーな恰好をした男が?・・・嘘だろ!?


「お前らは死んだ!ほとんどの奴は自覚があるだろうから、諦めてそれは認めろ。煩い奴は魂グチャグチャに破壊してやっから騒ぐんじゃねえぞ?」



 ざわっ


 この軽薄そうな男に生殺与奪の権限があると知り、辺りは騒然となる。



「1000の魂が集まった所で一気に呼び寄せたから、死んだ時期は皆バラバラだ。そして人生を謳歌していない10歳以下の子供と長い人生を謳歌した85歳以上の老人は、特例処置でまた人間に転生することが決まっている。お前らも人間に転生したけりゃせいぜい長生きするんだな!」


 いや、もうおせえよ!死んだからここに来たんだろが!!


「この場に日本人しかいないのは、俺が日本の担当だからだ。他国の人間は別の者が担当している。何ヶ国もの言葉でイチイチ説明してられんからな」


 なるほど、たしかにその通りだ。


「でだ!ここに集まった諸君には、今から転生ルーレットをやってもらう。運が良けりゃまた人間にもなれるし、この世界に転生することだって出来るだろう。精々気合を入れて臨むんだな!」


 え?人間にもなれるって・・・、もしかして次は犬になったりもするのか!?冗談じゃねえぞ!!


 ・・・ん?今たしか、『この世界に』とか言ってたよな?もしかして別世界もあるの!?



「ちょっと待てや!!人間にもなれるって、もしかして人間以外に転生したりするのか!?」


 おおお!?ガラの悪そうな50歳くらいのおっさんが良い質問をしてくれた!


「あ?口の利き方がなってねえな。まあいいだろう、その質問には答えてやる」


 ナイスだおっさん!魂グチャグチャにされない程度にもっと攻めてくれ!


「諸君らの転生先は全てルーレットで決まる。運が良けりゃ15歳の青年にもなれるし、運が悪けりゃ蛾の幼虫だ。そして地球以外にも数多くの世界が用意されているから、行く世界によってはドラゴンに転生する可能性だってあるぞ!」


 うおおおおおお!マジか!ドラゴンとか最高だろ!!


「蛾の幼虫って・・・、ん?15歳の青年?転生って赤ちゃんからじゃねえのか!?」


「それはこれから説明するつもりだったのだが、まあ今答えてやろう。ルーレットの当たりには年齢が書かれているモノがある。その場合、俺が用意した健康な体に転生することになり、大サービスで今の記憶もそのままコピーしてやるぞ!年齢表記には15歳までしかないから、どの年齢でも大当たりだ!」


「「おおおおおおおおおおおおおおっ!!」」


「年齢表記が無い転生の場合は記憶も完全に消去されるから、例え蛾の幼虫になったとしても本能のまま生きるだけだ。変に苦しむことはないから安心しろ」


 くっ・・・、たしかに記憶がなくなるのだったら変なモノに転生したとしても問題は無いのか。でもカメムシとかは勘弁して欲しいなあ。


「質問タイムはこれで終了だ!俺も暇じゃないんでな。ああ、言い忘れてたがルーレットは生前に保持していた運が影響する」


 何だと!?俺の運って最低最悪なんだけど!!


「公平を期す為に、生前の運はここでは反転する。そしてそれは転生先にも影響を及ぼす。そうしないと運の良い者は永久に運が良く、運の悪い者はずっと運が悪いことになるからな。生前運の良かった者は覚悟しておけ!」



 ・・・・・・マジで!?壊滅的だった俺の運がまさかここで光るとは!


 思わぬチャンス到来だ!マジで気合入れて絶対に良い転生先を当ててやるぞ!!




 ―――そして運命の転生ルーレットが始まった。






 ※この神様を不快に思われる方もいるでしょうけども、このクズっぷりが物語の重要ポイントだったりしますので、どうか続きを読んでみて下さいませ。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る