第334話 思った以上に大当たりでした!

 来る時は6人だったけど、成り行きから帰りはマグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんを乗せて8人となったゴンドラを首にぶら下げ、ドラちゃんはミミリア王国目指して飛んで行く。



「マグロのおっちゃんも、メルお姉ちゃんも、これからドラゴンって呼ぶのを禁止します。ドラちゃんって呼ぶように!」

「この大きさで『ちゃん付け』かよ!」

「でもどうしてなのですか?」

「もちろんトップシークレットだからです。人前では『ドラちゃん』という単語を使うことすら控えてください!」

「確かに普段から気を付けていなければ、何かの拍子にうっかり口に出してしまう可能性があるか・・・」

「そうですね。普段から話題に出さないよう心掛けます!」



 とりあえずこれで口止めの方はバッチリかな?


 ちなみに昨日イルプシアの冒険者ギルドに寄った後、ドラちゃんで1時間ほど飛んだ辺りで着陸し、いつもの様にゴンドラで一泊したんだけど、冷静に考えたら急ぐ必要がまったく無く、宿屋で一泊すればよかったとメッチャ後悔しました。


 しかも王妃様から3000万ボッタくったので、ハイドリムドの諜報部隊に所属している二人の前でハム水のお風呂に入るわけにもいかず、お風呂が無かった頃の悲しい旅に逆戻りしてしまいました・・・。



「さて、そろそろ麻雀しようぜ!」

「いいね!」

「やっぱりドラちゃんの旅といったら麻雀だよね~!」


 もちろんマグロのおっちゃん達は、頭に『?』を浮かべている。


「そのマージャンってのは何だ?」

「まあやれば分かる。折角だから二人に麻雀を教えてやろう!」



 ボクは強すぎて麻雀禁止令が出ているので、ここはレオナねえ達に全部任せることにし、ゴンドラの後ろに全自動麻雀卓だけ出してソファーに戻った。


 席に着いたのは、レオナねえ、ナナお姉ちゃん、マグロのおっちゃん、メルお姉ちゃんの4人だ。


 アイリスお姉ちゃんが、ゴンドラの側面に備え付けられた小さなタンスの引き出しから麻雀のルールブックを取り出し、おっちゃん達に手渡した。



「非常にややこしいな・・・。これを読んだだけではサッパリわからん」

「本当に難しいですね~」

「やりながら教えるから、役だけ覚える感じでいいぞ」

「遊びなんだから気楽にいこうよ!」



 というわけで、初心者二人を巻き込んだ麻雀大会がスタートした。


 タマねえとプリンお姉ちゃんはそこまで麻雀にハマってるわけでもないので、ボクと一緒に召喚獣を愛でながら旅の話をしてまったり過ごした。






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「ロンだ!!」

「うっそおおおおお!?」

「わはははははははははは!遊び方が分かると結構面白いな!」

「だろ!?」

「私もようやくマージャンの遊び方が理解出来たような気がします!」



 もう夕方なんだけど、やっぱり麻雀組は時間も忘れて夢中になってますね~。



「そろそろ暗くなるから、夕食にしない?」


「ん?あーもうそんな時間か!」

「確かに少し腹が減ったな」

「じゃあ一旦清算しよっか」

「そういえばお金を賭けていたのでした!」

「大丈夫だよ~。初心者さんのために掛け金は小さくしてあるから」

「でも賭け事ってのは、ある程度痛みを感じるくらいの方が盛り上がるから、そろそろ互角に戦えると思ったらレートを上げると宣言してくれ」

「わかった!」



 良い感じの場所を見つけてドラちゃんを着陸させ、ブルーシートを敷いた。


 そして鳥の丸焼きをいくつか出したんだけど、肉は買った時点ですでに冷めていたので、鉄板に火をかけ少し温めることにした。



 ジュワー パチパチパチパチ



 その間にアイテム召喚をしておこうと思い、鉄板の方から少し離れる。


 麻雀組はさっきまでの対戦の話をしながら鳥の丸焼きに夢中だけど、タマねえとプリンお姉ちゃんはボクの勝負を見に来た。



「今日は何となく良いモノが出るような気がするのです!アイテム召喚!」



 ヴォン



 まだ明るい時間なので目は滅びなかった。

 しかし25㎝四方の箱が出現しているのを見て、ボルテージが上昇した。



「箱だ!・・・でもこの箱って、すごく知ってる感じの箱だな~」

「当たり?」

「普段ならすごく嬉しいんだけど、中身はケーキのような気がするのです・・・」

「ケーキならハイドリムドで腐るほど買いましたよね・・・」



 箱を開けると、中に入っていたのは黒いチョコレートケーキでした。


 しかも上には、お菓子で作られた家とか月とか星とか動物とか色々乗っていて、見た目もすごく可愛いしメチャメチャ美味しそうですな~!



「チョコレートケーキだったーーーーー!」

「チョコレートケーキ!?すごい、大当たりだ!!」

「すごく可愛いですね~!」

「ただ、ハイドリムドでいっぱいケーキを買った後なので、もっと早く出て来てほしかったかもです」

「クーヤ、これはチョコレートケーキ。格が違う!」



 とりあえず箱を最初の状態に戻してストックした。

 召喚獣リストの文字化けを、『チョコレートケーキ』に書き変える。



「チョコレートケーキ召喚!」



 目の前に再びケーキの箱が出現。

 でもそろそろ鳥の丸焼きが温まった頃なんだよな~。



「ケーキは夕食が終わってからの方がいいかな?」

「味見したい!」

「私も一口食べてみたいです」

「じゃあちょっとだけ食べてみよう!」



 アイテム召喚の初期に手に入れた『鋼扇屋の包丁』を呼び出し、チョコレートケーキを8等分に切っていく。ホールケーキって一口分だけ切る方が難しいのです。


「・・・ん?」


 8等分してる時の手応えもなんだけど、ショートケーキ一個分を皿に乗せた時に違和感を覚えた。



「あれ?これって本当にケーキ?」

「ん?」

「どうかしたのですか?」

「う~ん、よくわかんないけど・・・」



 変に思いながらも、タマねえとプリンお姉ちゃんにケーキが乗った皿を渡した。

 そして自分の皿に乗ったケーキを、一口分だけ食べてみる。



「「!?」」


「チョコレートケーキじゃなくて、チョコレートアイスケーキじゃん!!」

「なにこれ!?めちゃくちゃ美味しい!!」

「冷たくて驚きました!でもすごく美味しいですね~」

「上に乗ったお菓子も全部チョコレートだ!」

「黄色いチョコだ!これも美味しい!!」

「私のケーキには白いチョコレートが乗っていますよ!」



 まさかのチョコレートアイスケーキで驚いた。超大当たりじゃん!

 しかも、ホールケーキの中でもこれは特大サイズだ!


 三人とも一口だけ食べる予定だったのに、あまりの美味しさに結局ショートケーキ一つ分を食べ尽くしてしまうのだった。

 

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