第313話 第二次ジグスレイド征伐の役職を決める

 屋敷の外に出たら焼き肉パーティーをするってことになったので、生き残りの悪党二人から食堂の場所を聞き出し、そこで人数分の食器を確保した。


 アジトから助け出した女性や子供達がいっぱいで、手持ちの食器じゃ全然足りないことに気付き『どうしよう?』ってなったんだけど、『この屋敷にある食器を使えばいいんじゃね?』ってレオナねえが閃いたのだ。


 一応マグロのおっちゃんが『食器を使っていいか?』と、ギロっと睨みながらこの屋敷に住んでいた二人の男に聞いたんだけど、『どうぞどうぞ!』と快い返事がもらえたので、たとえ皿を何枚か割ってしまっても全然問題なしです!


 というわけで、屋敷の広い庭に鉄板を二枚並べて、バッファローの肉を豪快に焼き始めました。



 ジュワー パチパチパチパチ



 肉の焼ける美味しそうな匂いにやられて、子供達は涎を垂らしまくりですが、もう少しだけ待っていて下さいね!



「この水って飲んでもいいのか?」



 みんな喉が渇いてるだろうと、ボク達が旅の間に使ってる水の入った樽を出しておいたんだけど、拷問帰りのマグロのおっちゃんの喉が一番乾いていたようだ。



「そこに置いてある柄杓で水を掬ってから、コップに注いで飲んでください!」

「なるほど、衛生面に気を使ってるんだな」


 マグロのおっちゃんがコップに水を注ぎ、豪快にゴクゴクと飲み始めた。


「おいクーヤ!その樽は飲み水じゃなくてハム水だぞ。樽に水色のシールが貼ってあるだろ」


 ん?


「あ、ほんとだ」



 ブシャアアアアアアアアアアアアアアア!!



 時すでに遅し、マグロのおっちゃんがハム水を大噴出した。



「ゲホッ!ガハッッ!ぐおおおおお、まっず!!な、なんじゃこりゃあああ!!」

「ごめんマグロのおっちゃん、そっちはハム水でした」

「ハム水って何だよ!?」

「えーとねえ、美容と健康にいい水?メッチャまずいけど、腐ったりしてるわけじゃないよ。むしろ身体に良いんだよ!」


 ハムちゃんに飲み水の入った樽を出してもらい、ハム水の樽は片付けた。


「死ぬほど身体に悪そうな味だったぞ!えーと、その樽の水は大丈夫なんだな?」

「うん、こっちは普通の水だよ!」


 おっちゃんがコップに水を注ぎ、おっかなびっくり水を飲み始めたが、今度は普通の水だということがわかって一気に飲み干した。


「ふう~~~~~、生き返った!!」

「もっとガンガン飲んじゃっていいよ~。無くなったら屋敷で補給するから」

「あと一杯だけにしておく。美味そうな肉が控えてるしな!」

「あ、そろそろ焼けそうだよ!子供達が先だけど」

「うむ。まずは牢屋に幽閉されていた拉致被害者達からだ。奴らが十分な食事を与えていたとは思えないしな」



 二枚の鉄板にビッシリ並べられて焼かれていたバッファローのステーキが、それぞれの皿に乗せられていく。


 冷めるともったいないので、女性達にナイフとフォークの使い方を教わりながら、子供達から先に頂くことになった。



 肉を口の中に放り込んだ子供達の目がキラキラと輝く。



「「おいしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 基本となる塩胡椒の味付けだけでも最強クラスなのに、今日は秘伝のタレも大奮発しましたからね!そりゃーもう美味しいに決まってます!


 女性達やマグロのおっちゃんも、子供達の喜ぶ姿を見てほっこりしている様子。


 そして第二陣のステーキを焼き始めたのを確認し、ノートを開いた。

 さっき思い付いたことを書き記さねばならんのです。




 ◇




―――『新選組』―――



【局長】クーヤちゃん


【副長】レオナねえ

【参謀】悪そうなお兄さん

【総長】ペカチョウ


【副長助勤】

・一番隊隊長 タマねえ

・二番隊隊長 プリンお姉ちゃん

・三番隊隊長 メルドア

・四番隊隊長 レグルス

・五番隊隊長 クマちゃん

・六番隊隊長 アイリスお姉ちゃん

・七番隊隊長 ライオン

・八番隊隊長 ナナお姉ちゃん

・九番隊隊長 ゴーレム

・十番隊隊長 ドラちゃん


【諸士調役兼監察】

 スズメ ハト キツネ レンクル モルモット



 フム、こんな感じかな?


 不逞浪士を拷問してたから鬼の副長かという話もあったんだけど、やっぱりクーヤちゃんが局長をやらなければ、このメンバーを纏めるのは不可能と判断。


 なので鬼の副長は、一番それっぽい感じがするレオナねえに任せます。

 あと副長助勤ですが、組長だとどうもしっくりこないので隊長にしました。


 しかし残念ながら参謀が行方不明なので、第二次ジグスレイド討伐ではマグロのおっちゃんが代理を務めることになりそうです。


 14代将軍であるレオナねえが率いるエロ幕府のアイデアもすごく気に入ってるんだけど、規模がデカすぎてイマイチしっくりこないんですよね。


 大老、老中、若年寄、とか書いても全然格好良くないしな~。少し下の陸軍総裁や海軍総督みたいなのだったら格好良いけど、とにかく規模が大き過ぎるのです。


 やっぱりここは新選組で行くしかないっしょ!



「クーヤちゃん、なに書いてるの?」

「難しい字で書いてるから全然読めないんだけど!」

「これはクーヤの国で使われている日本語」

「でもアタシらの名前が書いてあるぞ?召喚獣サモンビーストの名前も」

「人と召喚獣サモンビーストの順番がごちゃ混ぜなのは、何故なのでしょうか?」


 夢中で書いていたら、いつの間にかお姉ちゃん達に囲まれていた。


「えーとですね、第二次ジグスレイド征伐にあたっての役職を決めていたのです」

「何それ!すっごく面白そうなんですけど!!」

「ちゃんと説明して!」



 というわけで、負け戦と知りながらも主君のために最後まで戦い続けて散っていった忠義に篤い烈士の集団、それが『新選組』なんだと力いっぱい熱く語った。



「格好良すぎだよ!!」

「クーヤちゃん、私とナナの名前が下の方にあるのが納得いきません!」

「一番隊から十番隊に優劣は無いのです!むしろボクが好きな隊士のところに当て嵌めているので、その役職に就いたことを誇りに思ってください!」

「へーーーーー!特別な意味があったんだね!」

「一番隊隊長、すごく気に入った!」

「私は二番隊隊長なのですね。お仕事頑張ります!」

「なぜかペカチョウがやたらと偉そうな役職に就いているな。つーか何でガイアまで入ってるんだよ?」

「そんなのなんとなくです!でも不在なので、マグロのおっちゃんが代理です」

「適当すぎるだろ!」



 そういえばマグロのおっちゃんはどこにいるんだろうと思って周囲を見渡すと、向こうで知らない女の人と話をしていた。


 ・・・あの人誰??

 

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