第187話 白き魔獣と黒き魔獣
一泊二日のドラゴン旅行から帰って来たボク達は、獲って来た魚介類で大いに盛り上がり、翌日からは何気ない日常生活へと戻った。
とはいえまだ楽しかった余韻が残った状態でもあります!
旅行のことを考えてるうちに、ドラゴンに乗っている時にみんながクーヤちゃんの目覚まし時計に注目していたことを思い出したので、ゴンドラや家に設置する時計が欲しくなり、タマねえと一緒にレミお姉ちゃんの家に向かった。
ブーーーーー
玄関のドアの横に取り付けられていたブサーを押してみた。
少し待つと中からバタバタ音がして、レミお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
『あれ?誰もいなくない??』
ガチャッ
ドアを開けて中から出てきたレミお姉ちゃんと目が合った。
最初は驚いていたけど、次の瞬間歓喜の表情に変わる。
「クーヤちゃんがキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「わぷっ!!」
レミお姉ちゃんに抱き上げられて、顔が完全に爆乳に埋もれた。
「ぷはーーーーーッ!息ができないのです!!」
「お客さんの背が小さかったから、覗き窓から見えなかったのね~!」
タマねえも一緒だからギリギリ見えそうな気もするけど、タマねえは死角ポイントにいたみたい。
「クーヤ、その人が時計屋さんなの?」
レミお姉ちゃんが声の方へ視線を向けた。
「えーと、この子は?」
「レミお姉ちゃんに時計を作ってもらおうと思って、タマねえと一緒に来たの!」
「タマです。よろしく」
「あ、私はレミお姉ちゃんよ!タマちゃん初めまして!えーと・・・、時計ってのはあの目覚まし時計のことかしら?」
「んとね、ボクが使ってる時計が意外にも家族に評判が良かったから、壁に掛けて使うような大きい時計を作ってもらおうと思って来たの!」
「本当に!?実は私も自分で使ってるうちに、あの時計の良さに気が付いた所だったのよん!だからもうすでに新しいのを作って、壁に掛けて使っていたりするわ!」
「おおおおぉぉぉ~~~~~~~~~~!見せてもらっていい?」
「いいわよん!入って入ってー」
レミお姉ちゃんの家の中はとても綺麗で爽やかだった。
置いてある家具なんかも実に上品で、センスの良さが伺える。
「あっ、アナログ時計だ!思ってたのより一回り大きくて良い感じ!!」
見た感じ、大きさは35cmくらいかな?
家のリビングに置くには、ピッタリなんじゃないでしょうか。
ただ、大きければ大きいほど良いってモノでもないので、ゴンドラに設置する方は25cmくらいにしてもらおうかな?
「レミお姉ちゃん、あれと同じヤツを7個作って下さい!それより一回り小さい時計も1個お願いしますですよ!」
「え、多すぎない!?そんなにいっぱい欲しいの?」
「えーと、ボクの家だけじゃなく、タマねえの家や、ウチのお姉ちゃんの友達の家に設置する分も作ってほしいのです。欲しがってるのはボクの知り合いとかだから、今回は普通にお金を支払っての製作依頼です!」
レミお姉ちゃんは少し考えている。
「そうねえ・・・、でも時計1個の材料費だけでも2万ピリンほど必要よ?」
「やっぱり結構かかるね!じゃあそれと工賃で、1個4万ピリンでお願いしてもいいですか?」
「それじゃあ貰い過ぎよ!」
「こんなのレミお姉ちゃんにしか作ることが出来ないんだから、それくらいの価値は十分あります!いや、店で売るならもっと高くていいくらいかも?売れるかどうかはわかんないけど・・・」
こういうややこしいのは、ライガーさんに相談だな!
「どうせ今は暇してるし、引き受けてもいいかな?大きいのが7個で、一回り小さいのが1個ね?」
「うん!大が7個に中が1個で。あ、目覚まし時計も1個追加していい?」
「ついでだから構わないわよん。壁に掛ける方には目覚まし機能とかいらないわよね?」
「流石はレミお姉ちゃんです!壁に掛けてある時計がジリジリ鳴っても、止めに行くのが面倒臭いだけだからいらないです!」
そこでふと気が付いた。
「・・・レミお姉ちゃん、あの時計ってどうやって動いてるの?」
「どうやって??」
「えーと、たしかサンプルで渡した目覚まし時計には電池が入ってたハズだから、それが今ボクの元にあるってことは、電池なしの状態だと思うんだけど・・・」
「デンチ??」
「ああ、えーと、何て説明したらいいんだろ?体を動かすための食事みたいな?」
それを聞いたレミお姉ちゃんが、手をポンと叩いた。
「言ってる意味が理解出来たわ!えーとね、動力源として魔石を改造して使ってるのよ。アレは上手くいったわね~」
「天才かよ!!」
間違いねえ!この人絶対天才だろ!!なんせ初めて依頼した時、半月で目覚まし時計を完成させて持って来たくらいだし。あんな複雑なヤツを!
あの時は電池のことまで考えが及ばなかったけど、短期間のうちに現地のモノで動力源まで作り上げていたとはマジで驚きだ!なんでこの人は天職である物作りや夜のお店じゃなく、学園の先生なんかしているのか?
・・・しかし答えはすぐに見つかった。
重度のショタコンだからやんけーーーーーーーーーーーーーーー!!
◇
「・・・ん?」
レミお姉ちゃんに時計を注文した後、タマねえと二人でテクテクと家に向かって歩いている時に、突然脳内に召喚獣からの【援軍要請】が届いた。
「何だ?ゴリラくんか!?」
「どうしたの!?」
ゴリラくんがいるのは、メルドアが住んでいた街の南にある森の中だ。
「黒い獣だって?・・・わかった、すぐそっちに向かう!下手にそいつを刺激しないでやり過ごしてくれ!」
心配そうにこちらを見つめているタマねえに事情を説明する。
「街の南にある『メルドアの森』に、黒くてヤバイ魔物が現れたみたい!ゴリラくんが『あんなの倒せない』って言ってる」
「大変だ!助けに行かなきゃ!!」
「放っておいたら街に入って来ちゃうかもしれないからね。すぐに向かおう!」
「レオナねえ達は?」
「用事があるって、朝からどっか行っちゃった」
「じゃあクーヤとタマだけで何とかする!」
次の瞬間、タマねえに抱えられて一陣の風となった。
「にょああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
◇
例のお化け屋敷に到着し、そこからは慎重に森の中へ入って行く。
「メルドア召喚!」
シュッ
今回はヤバそうな相手なので、彼の力が必要だ。
魔物のスタンピードが発生した時、ドラゴンの元へと向かう道中に見せたメルドアとタマねえのコンビは本当に強烈だったからね。
それをボクが後ろから援護すれば、たぶん何とかなるだろ。
「向こうにいる!結構強そうな気配」
「うん、いるね。ドラゴン以来の大物だ」
そして樹々の間を抜けた時、そいつの姿が見えた。
「黒いメルドアだと!?」
「強い!!」
その時、メルドアから憤怒の感情が流れ込んで来た。
「・・・え?マジで!?」
「なんだって?」
「メルドアを倒して召喚獣にした時の話なんだけど、どうして戦闘初心者のボクが勝てたのかというと、メルドアの魔力がスッカラカンだったおかげなんだ。んでなぜ魔力が空っぽだったのかというと、直前まであの黒い魔獣と戦ってたせいなの」
「天敵ってヤツ!?」
「もしくは宿命のライバルだね!」
メルドアから、本気で戦うために魔力の使用許可を要請されたので、それを許可した。そして手出し無用とも言われたので、この場は彼に任せることに決めた。
「メルドアは、あの黒い魔獣と決着をつけたいみたい。だからボク達は手を出さずに、宿命の闘いを最後まで見守ろう」
「・・・わかった」
次の瞬間、メルドアと黒き魔獣から闘気が放出され、互いが強い魔力に包まれる。
『グルルルルルルルルルルルルル!』
『グアアアアアアアアアアアアア!』
そして、白き魔獣と黒き魔獣は、互いを滅ぼすために大地を蹴った。
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