第186話 さらばリリカ島(たぶん何度も来る)

 

「あーーーーーっ!クーヤがいた!!」

「あれで隠れたつもり?」



 バタン


 リリカちゃんとタマねえが近付いて来る足音がする。



「クーヤ、みーーーつけた!!」


 リリカちゃんに触れられて、黄色いのがプルっと震えた。


「・・・あれ?」


「あっ違う!ペカチョウだ!!」

「にせものだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 そう!ボク達三人は今、ログハウス内で『かくれんぼ』をして遊んでいるのだ。


 ジャンケンで負けたリリカちゃんが鬼になったんだけど、簡単に見つかってしまったタマねえと一緒に、今度はショタを探しに来たのです。


 おそらくタマねえはわざと見つかりやすいとこに隠れたんだろうけど、クーヤちゃんはガチでいきますよ!!


 そしてご覧の通り、クーヤちゃんの影武者である『黄色ハムちゃん』を囮にして、実はその奥の物陰に隠れているという大技を繰り出したところです。


 ちなみにこのハムちゃんは、どう見てもあの大人気アニメの『ペカチョウ』としか思えないので、やっぱり我慢出来ずに改名してしまいました!家族にもすでにその名前で認知されています。


 他のハムちゃんと一緒に遊んでいた所で突然呼び出されたからメチャメチャ不満そうだったけど、『ペカチョウ』の仕事は影武者なんだから、たまには働け!



「偽物を囮に使うなんて、クーヤは本気だ!」

「クーヤのくせになまいき!ぜーーーーったい、みつけてやるんだから!!」



 タタタタタタ バタン



「ふーーーーー、行ったようだな・・・」



 パシッ


 物陰から這い出て、ペカチョウとハイタッチを交わした。



「所詮は女子供よのう。クーヤちゃんにかかれば世界を騙すなど造作もないのだよ!にゃーーーーーっはっはっはっはっは!!」


『チュウ!!』



 ガチャッ



「ほら、やっぱりいた」

「クーヤ、みーーーーーつけた!!」


「しまったーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 戻って来た、だとお!?

 どうやらタマねえに行動パターンを読まれていたらしい・・・。


 くそう!物陰から出て来るのが少し早過ぎたか!




 ◇




 それからもう何戦かやって、満足した子供達は外に出た。


 辺りを見回してみると、岩場の方にお母さんとクリスお姉ちゃんがいて、それ以外の人達は釣りの再戦をしているようだった。


 昨日の『海づくし』は本当に美味しかったからね。

 帰ってから家でも食べられるように、時間いっぱいまで頑張るみたいです。


 三人は、とりあえず岩場の方へと向かう。



「おーーーーーーーー!貝がいっぱいだ!!」

「いっぱいだーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「朝からずっと獲ってたのかな?」


 ボク達の声援に気付いたお母さん達が振り向いた。


「お母さん頑張ったのよ~!」

「滅多に無い機会ですもの!でもそろそろ腰が痛くなってきたわね」


「ハムみず飲む?」


「そんなのいらないわよ!!」

「釣りに行ったみんなも頑張ってるのかしら~?」


「これから見に行くところだよ!」

「あっちみてくるねーーーーーーーーーーー!」

「じゃあ頑張って!」



 レオナねえ達がいる浜辺へと移動。



「あっ、三人とも良いところに来たね!たった今ティアナちゃんが大物を釣り上げたんだよ!」


 見ると、ティアナ姉ちゃんの足もとで大きな魚がピチピチ跳ねており、釣り上げた本人もこれにはドヤ顔だった。


「これで私の優勝は間違いなしだよ!あれ?レオナねえが釣った一番大きな魚って、もしかしてその小魚ですか?」

「くっ、まだだ!アタシの力はこんなもんじゃねえぞ!!」

「レオナ、最下位はハムみず一気飲みだからね?」

「わかってるって!!」

「オーーーーーッホッホッホ!せいぜい頑張りなさいな!」


 ティアナ姉ちゃん、キャラが変わってんぞ・・・。


「おめでとー、ティアナ姉ちゃん!」

「ありがとう!帰ったら、夜は豪華な晩餐会だよ!」

「クーヤいい所に来た。ポテチを出してくれ!アレをエサにして大物を釣る!」

「えーーーーー?魚ってポテチが好きなの?」

「知らん!でもあの美味さは魚にも通用するに決まってるだろ!」

「海に浸かった瞬間、ふやけて行方不明になると思う」


 絶対タマねえの言う通りになると思うけど、藁にも縋る思いなのだろうとサンタの袋を召喚し、レオナねえにポテチを渡した。


「よっしゃ!これで勝てる!!」

「クーヤ、たぬきのマーチちょうだい」

「リリカはね~、たけのこひめ!!」

「あ、私にもキャラメルポポーンくーださい!」

「じゃあ、きのこの王!」

「箱がいっぱい入ったヤツ!」


「結局みんなじゃん!!」



 それぞれがご所望するお菓子を渡していき、残ったお菓子を見てふと気付く。



「キャベツ魔王って、もしかして不人気なのか?」



 ・・・いいもん!その分ショタが食べ放題ってことだし!!



 そんなこんなで釣り勝負は帰る直前まで続き、大量の海の幸をゲットしたボク達は、ホクホク顔で帰路についた。


 ちなみに釣り勝負に負けたレオナねえは、ハムみずの一気飲みをして、例の如く豪快に噴出していました!




 ◇




 不死鳥ラーニャンが、オルガライドの北のスタート地点、『ネジポイント』に向かって飛んで行く。



「はぁ~、少し疲れたけど本当に楽しかったね!」

「最初はどうなることかと思ったけど、とても素晴らしい旅行だったわ!」

「お母さんも、『リリカ島』が大好きなのよ~!」

「またみんなでこよーね!!」



 前列のソファーに座っている新規メンバーの楽しそうな会話を聞き、今回の作戦が大成功に終わったことを確信する。


 この空の旅が、リリカちゃんの『祝福の儀』に影響を与えるかはわからないけど、家族のみんなに大きな隠し事を打ち明けることが出来たのが本当に良かった。


 そして、もう誰もドラゴンに乗ることに恐れを抱いてないのが重要ポイントだ。


 これにより、ボク達がドラゴンに乗って飛び回っていても、過剰に心配されることが無くなったのですよ。


 さらに話の流れで、クーヤちゃんに結構な戦闘力があることを知ってもらえたのが地味に大きかったりする。


 やっぱり何だかんだ心配はされるだろうけど、『まあクーヤちゃんなら大丈夫か』って思ってもらえれば、そこまで過保護にはされないと思うから。



 さて、そんなわけで大冒険の準備は整いました!

 家に帰って一休みしたら、レオナねえ達と次の冒険についての話し合いだーー!!

 

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