第180話 タマねえの卒業式

 時は流れ、季節は春を迎えようとしていた。

 そう、本日をもってタマねえが小学校を卒業するのです!


 ちなみに数日後にボクとリリカちゃんも学園を卒業するんだけど、卒業式みたいなイベントがあるわけでもなく、ただ『祝福の儀』への準備が整ったって扱いです。


 もう明日からは来なくていいよ的な?

 レミお姉ちゃんが憂鬱そうな顔をしてたので、それだけが気掛かりですが・・・。


 とにかくこれからはもう学校に縛られることなく、自由奔放に暮らせるということで、タマねえは朝からメチャクチャご機嫌だった。



「クーヤ!明日からタマは自由になる!!」

「よかったね、タマねえ!」

「でも今日は卒業式とかいうクソみたいなイベントがある・・・」

「いやいやいや!最後なんだし、そういうのも楽しもうよ!」

「すごくどうでもいい。もうアイツらの顔を見ないで済むのが嬉しいってだけ」



 なんかタマねえの学校生活の話って地雷なんだよな~。


 前にレオナねえがボソッと呟いたのが聞こえたことがあるんだけど、どうもタマねえは学校で恐れられてるみたいなんだよね・・・。


 おそらく『バーサーカー』という危険な職業のせいだと思う。


 怒らせたら殺されるかもしれないってことで、学校では腫れもの扱いだったのかもしれない。


 こんなに素直で良い子なのに、危険な職業ってだけで生徒達から恐れられたままの学校生活だなんて、タマねえが可哀相すぎるよ!


 いや、もしかしたら先生達からも距離を置かれていた可能性があるな・・・。


 ボクだけでも彼女の味方になってあげなきゃね!

 いや、うちの家族は誰もタマねえのことを恐れてなんかいない。


 本当にボクは家族に恵まれたと思う。血は繋がってないけどさ!


 万が一タマねえに何かあったとしても、必ずボク達が助け出す!

 だからタマねえも、周りの人達を傷つけることを恐れないでほしい。


 とにかく、これ以上学校生活についての話はしない方がいいな。

 今日という日を心から喜んでいるのだから。



「じゃあ行って来るね!」

「ボクも卒業式がどんなのか見に行きたかったんだけど、残念ながら学園があるのですよ・・・。ってことで、最後の一日頑張ってねーーー!」

「がんばってねーーーーーーーーーー!」

「いってらっしゃ~い!」



 ショタとリリカちゃんとお母さんに見送られながら、タマねえは元気良く学校へと向かって行った。


 ってことで、ボク達もそろそろ学園に行かなきゃな。



「じゃあそろそろ、リリカちゃんとクーヤちゃんも学園に行くわよ~!」


「はーーーーーーーーーーい!」

「あい!」



 さあて、今日もレミお姉ちゃんとまったり字の勉強でもしますか~。






 ************************************************************






 そして字の勉強が終わった途端ぐずり出したレミお姉ちゃんをあやしながら、残り少ない学園生活を満喫し、ボクとリリカちゃんは家に帰って来た。


 それにしてもレミお姉ちゃん、ボクが卒業しても大丈夫なのか?


 間違いなくクーヤちゃんと別れるのが辛くて泣いてると思うんだけど、アレは重度のショタコンだからとかじゃなくて、母性本能的な何かだと思う・・・。


 そこまで愛されて悪い気はしないんだけど、正直めちゃくちゃ心配だ。


 ボクとしても、レミお姉ちゃんとこれっきりにするつもりなんて無いし、何か繋がりを用意した方が良さそうですね・・・。


 仕事関係で繋がりを持たせてもいいんだけど、普通に友達みたいになった方がいいのかな?


 気軽に家に遊びに来るような関係が一番良いんだけど、誰が見てもショタコン丸出しの女性を、家族は受け入れてくれるのだろうか?


 そうか!モコティー先生繋がりならば、スッと溶け込めるかもしれん。なにしろティアナ姉ちゃんという腐女子が、すでに家族に認知されているのだからな!



 ガチャッ



「ただいまーーーーー!!」



 声の方を見ると、そこには満面の笑みのタマねえがいた。



「おかえりタマねえ!卒業おめでとーーーーー!!」

「おめでとーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「クーヤ、リリカ、ありがとう!タマは自由になった!!」



 ワーーー パチパチパチパチ。



「よかったねタマねえ!そういえば冒険者登録はどうするの?」



 タマねえが、ボク達のいるテレビの前まで歩いて来た。



「5月の誕生日までは登録しない。仮登録しても変な仕事しか無いから」


 仮免で受けられる依頼ってのが、労働力の割には実入りの少ないモノばかりって話だもんな。そんなんだったら大人しく誕生日を待ってた方がいいのかもしれないね。


「そっか~、だったらパンダ工房でアルバイトした方がまだ稼げるだろうしね~。タマねえの実力なら討伐依頼でガンガン稼げそうだし、まだ急ぐ必要は無いか!」

「うん!それまではクーヤの護衛してる。その後もクーヤの護衛」

「いや、さすがに普段はそこまで危なくないです!もっと自由にしてて!」



 そういえば、ボクの口座に特許料が振り込まれるようになったので、専属SPとして護衛をしてくれているタマねえに給料を支払おうと思ってます。


 小学校に通ってる時と違って、もう彼女は社会人となったのだから、これからは無償で働かせてはいけないのです!


 最初は絶対拒否されるだろうけど、こればかりは受け取ってもらわないとボクの気が済みません!小学校を卒業した後ならば、同じ冒険者チームとして対等な立場にするつもりだけどね。



 そして家族のみんなが帰って来た後、沢山の料理とプレゼントでタマねえの卒業をお祝いしました!彼女がすごく嬉しそうにしていたのが印象深かったです。



 本当によかったね、タマねえ!

 

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