第179話 彼女を魔の手から救い出せ!
家に帰って『レミお姉ちゃんが喜んでたよ!』と、ティアナ姉ちゃんとモコねえに伝えてから半月ほど経った。
そしていつものように学園で字の勉強を始めようとしたら、レミお姉ちゃん先生がいつも以上にニコニコしていることに気が付いた。
「むむむ?レミお姉ちゃん、何か良いことでもあった?」
「クーヤちゃん!頼まれていた時計が完成したわよん!」
「・・・え!?もう完成したの!?」
レミお姉ちゃんが、鞄の中から時計を二つ取り出して床に並べた。
「おおーーーーーーーーーーーーー!!」
片方は参考にする為に貸してあったボクの目覚まし時計だったけど、もう片方は、この世界仕様で作られた、0から9までの数字が書いてある時計だ。
この世界は20時間仕様なので、4時間分削るために自分でちょっと考えてから依頼したのですよ!
日本のアナログ時計の6時があった場所にこの世界の数字で『0』と書いてあり、7時+1メモリの位置に『1』、8時+2メモリの位置に『2』という感じで、少しずつずらしていくと、12時の位置が『5』となるのだ。
そのまま1周してスタート地点の0まで行くと、この世界の10時ということになり、そこが日本の18時で夕食の時間となります。
本当は日本の目覚まし時計そのままに20時間で調整した方がボクにはわかりやすいんだけど、今はこの世界の住人なのだから、やっぱりこの仕様に慣れなきゃダメなんだよね。
「流石レミお姉ちゃん、完璧です!」
「本当に!?よかったーーーーーーーー!!」
「こんなのよく半月で作れたね!何ヶ月もかかると思ってたのに・・・。秒針をカチカチ動かすだけでもめっちゃ難しそうだけど?ああ、えーと、長い針の方ね」
「すごく難しかったわよん?時計屋さんに聞いても『さっぱりわからない』って言われたから、クーヤちゃんが貸してくれた謎時計を開けて調べてみたの」
「えええええ!?見ただけでわかるモノなの!?」
っていうか、ドライバーなんて貸してないんだけど?
一体どうやって開けたんだ?
「お姉ちゃんは『クラフター』なのよん?細かい部品ばかりで大変だったけど、なんとか真似することが出来たって感じね~。でも中を見て本当に驚いたわ!この謎時計を作った人って天才じゃないかしら?」
「ボクもそう思います!それを再現して改造したレミお姉ちゃんも天才です!」
「お姉ちゃんは真似しただけだから、天才なんかじゃないわね~」
「真似しようったって、普通こんなの真似できません!!」
レミお姉ちゃんが鞄の中に手を入れて、時計をもう一つ取り出した。
「じゃーーーーーん!お姉ちゃんの分の時計も作っちゃいました!」
「わっ、ボクとお揃いだ!!」
「作ってる時に、意外とこの形の時計も悪くないかもって思ったの!」
「使いやすいかどうかはわかりません!ボクはこの形じゃないとダメだけど」
「一ヶ月くらい使ってみて、その時どう感じているかってところかしらね~」
「だね!」
というわけで、無事アナログ時計をGETしました!
冷静に考えると、時計を作ってくれってのはかなり無茶な要求だったかも。
それをこうも簡単に作ってくれたレミお姉ちゃん。
その『クラフター』って職業も関係してるのだろうけど、実は彼女って、普通のショタコンエロ教師じゃなく、天才ショタコンエロ教師だったのかも・・・。
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そして時は過ぎ、
ボクはレミお姉ちゃんと一緒に、会場の入り口付近に立っていた。
正直ボク自身、このイベントにはまったく興味無かったんだけど、一つ大きな間違いを犯してしまったことに気が付きました。
そう、こんな腐った会場をレミお姉ちゃんに教えてしまったのです!
あの時は、おねショタ本のことしか頭に無く、腐女子共がBL漫画を買い漁る場だということを完全に失念していました!今は本当に後悔しています。
なのでボクの役目は一つだけ。
レミお姉ちゃんがBL漫画を手に取るのを食い止めること!
あの世界に触れさせてはいけないのだ。
腐っていくレミお姉ちゃんなんて見たくない。
ボクは何としても彼女を魔の手から救い出さねばならないのだ!!
会場に入ると、そこはすでに凄まじい熱気で満ち溢れていた。
「凄まじい人の数ね!」
「
「ん?」
「と、とりあえずモコティー先生を探そうよ!」
「そうね!でも結構広いわよ?探し出せるのかしら?」
「一応場所は聞いてるよ!えーと・・・、たぶんあっち!」
人混みの中をすり抜けるのは大変だったけど、迷うこと30分、とうとうボク達はティアナ姉ちゃん達を発見することができた。
「モコティー先生!クーヤちゃんがやって来ましたよーーーーーーーーー!」
ボクの声を聞き、モコねえとティアナ姉ちゃんがこっちを見た。
「あーーーーーっ!クーヤ様が来たですよ!」
「ということは、隣にいる凄いスタイルの女性が例の?」
「あれ?二人いるけど、どちらがモコティー先生なのかしら?」
「えーと、二人合わせてモコティー先生なのです!」
「へーーーー!漫画の世界はよくわからないけど、そういうやり方もあるのね~」
しかしショタを見ていたのは、モコねえとティアナ姉ちゃんだけじゃなかった。
―――――ボクはまたもや失念していたのだ。
モコティー先生はBL漫画だけじゃなく、おねショタ漫画も描いていることを。
「何?このめちゃくちゃ可愛らしい子は!!」
「ご褒美きっつああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うっひょーーーーーーーーー!お持ち帰りいいいいィィィィィィィ!!」
しまった!!
「にょあああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
レミお姉ちゃんがBL本を手に取るのを阻止するのがボクの任務だったのに、まさかそれをショタコン腐女子勢に阻止されるとは!!
「ちょ、待って、今はらめなの~~~~~~~~~~~~~~~!!」
「「かわいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
ダメだ、レミお姉ちゃん!その腐った本に触れてはいけない!
ぐおおおお、どきやがれ腐女子共ーーーーーーー!!
「え?これって両方とも少年なの?」
「そうなのです!少年二人が愛し合うお話なのですよ!」
「・・・えーと、ということは、すなわち、これは後ろの・・・」
ダメだーーー!それ以上はいけませぬ!戻って来られなくなるから!!
「あまり趣味じゃないわね。これでは自分に重ね合わせられないもの」
・・・え?
「お姉さんが少年と甘い恋をする物語がいいわ!この前クーヤちゃんに貰った漫画がすごく良かったのよ!あの続きはない?」
「ほうほう、そちらをご所望でしたか。お目が高い!もちろんありますよ~!」
「やった!!」
「お姉さん主導じゃないけど、お姉さんが少年達に襲われてしまうお話なんてのもありますが・・・、そういうのはどうです?」
「・・・アリね!えっ!?こんなにいっぱいあるの?全部買うわ!!」
なるほど。
BLにはまるで興味が無く、おねショタ一本で行くのですね・・・。
やっぱりこの人は、真正ショタコンエロ教師だったのだ!
おねショタのみを貫いていくその姿勢、さすがとしか言い様がありません!
腐女子になってしまうのは何とか回避できたけど、それはそれでどうなんだ!?
ちなみにレミお姉ちゃんは、モコティー先生から漫画をたっぷり買った後、他の販売ブースでも、おねショタ本を爆買いしてました・・・。
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