第178話 時計を作ろう!

 準備に長い時間を要したけど、ボク達一行はとうとうドラゴンに乗り、『リリカ島』へ遊びに行って無事帰って来ることが出来ました!


 ただ、大成功ながらも改善点がいくつか見つかったんですよね。


 一つ目は、ゴンドラを装着する時にドラゴンの背中に昇り降りする時のロープ。


 これがナナお姉ちゃんにはちょっと大変らしく、次回までに縄梯子を用意することが決まった。


 二つ目は、テーブルに置いた物が動いてしまうこと。


 フライト中に三度もコップが倒れてしまったので、この件に関してはコップを置けるような窪みのあるテーブルをどこかで作ってもらうことにした。


 三つ目は、ボクの時計!


 目覚まし時計でも別にいいんだけど、そもそもこの世界の一日は24時間じゃないですし、毎回時間を合わせるのも面倒臭いので、日本のアナログ時計みたいなのをどこかで作ってもらおうと思ったのですよ。


 そこで閃いたのが、レミお姉ちゃん先生だ!

 あの人は、何でも作ることが出来るという『クラフター』という職業なのです。


 ただボクが先生に頼むと、おそらくお金なんか受け取ってくれない気がするんですよね。だから物々交換みたいな感じにしようと思ったのですが・・・。



「レミお姉ちゃんが喜びそうなモノってなんだろう?」



 本人に直接聞いたら『クーヤちゃんにおっぱいを飲んでもらうわよん!』なんてことになり兼ねないし、あの人にあまり迂闊なことは言えないのです。


 レミお姉ちゃんのショタコンはガチだからなあ・・・。


 いや、もちろんおっぱいに興味はありますよ?でもこの年齢では悶々とした気分を発散出来ないのです!血の涙を流しながらの却下です!


 あ、そうだ!ショタコンで思い出したけど、ティアナ姉ちゃんとチンチクリンって、BL漫画だけじゃなくて、おねショタ漫画も描いてるって話だったよな。


 一冊貰って、それを報酬としてレミお姉ちゃんに渡せば万事解決じゃないですか!


 ってことで、早速ティアナ姉ちゃんの部屋に突撃ーーーーー!!



 トントントン


「・・・・・・・・・返事がない。チンチクリンもいるはずなんだけどな」



 なんでも同人誌即売会コミケが近いとかで、腐女子二人が最後の追い込みをかけているのだ。よく分からん名称のイベントだったんだけど、絶対にコミケだと思ったのでそう翻訳しました。



 トントト トントト トントントントン


『むっ!?誰かがドアをノックしまくってるですよ?』

『突然ドアを開けたりしない紳士的な行動のくせに変なノックをする人物。これはクーヤくんで間違いない!入っていいよーーーーー!』


 ガチャッ


 ティアナ姉ちゃんの部屋に入ると、二人の前に置かれたテーブルが漫画の原稿まみれになっていた。


「やっぱりクーヤくんだった!」

「クーヤ様!ぺろぺろ補給していいです?」

「ダメです。えーと、忙しい所申し訳ないんだけど、一つお願いがあるのです!」

「クーヤくんがお願い?何だろう?」

「逆にわたしをぺろぺろしたいですと!?バッチ来いですよ!」

「しません。じゃあ説明するので、変態チンチクリンも黙って聞いてください!」

「変態とチンチクリンをくっ付けるなんて酷いです!・・・ん?悪くないかも」



 死ぬほど打たれ強いモコねえは無視して、詳細を説明した。



「「素晴らしい先生です!」」



 なぜハモる!?



「23歳くらいならアレかな?」

「アレじゃわからないですよ!」


 ティアナ姉ちゃんが、本棚から一冊の本を取り出した。


「流石ティアナ、いいチョイスです!」

「コレって貰っても大丈夫なヤツ?」

「うん!むしろそれを読んで興味を持ってくれれば、即売会でいっぱい買ってってくれるかもしれないでしょ?」

「なるほど~、先行投資だね!」

「ティアナも策士よのう~」


 一応中身をチェックした方がいいような気もするけど、間違いなくボクは捕食対象キャラの方なので、深入りは禁物と思い踏み止まった。


「ありがとーーー!!ティアナ姉ちゃんもモコねえも頑張ってね。先生が気に入ってくれたら、『モコティー(二人のペンネーム)』の宣伝しとくから!」

「気に入ってくれるといいな~!」

「それは自信作だから大丈夫と思うですよ!」



 というわけで、無事『おねショタ漫画』をゲットしたボクは部屋を出た。

 早速明日にでもレミお姉ちゃんと時計の交渉だ!






 ************************************************************






 そして翌日。



「レミお姉ちゃんにお願いがあるのです!」

「お願い?それは字のお勉強じゃなく?」

「えーとですねえ、時計を作ってほしいのです!街で売ってるような時計とは形が違うんだけど・・・」



 時計の形を紙に描いて説明した。



「ムム!?なかなか難しいお願いが来たわね・・・」

「これはビジネスなのです。だからちゃんと代金を支払います!」

「クーヤちゃんからお金なんて取れるわけないじゃない。タダで作ってあげるわよん!」


 やっぱりお金は拒否されてしまったか。


「それじゃあボクの気が済まないのです!」

「ん~~~~~、それならおっぱ「却下です!」・・・却下早っ!?」

「なんかお金は受け取ってくれないような気がしてたので、レミお姉ちゃんが喜びそうな物をいくつか持って来ました。ってことで支払いはそれでお願いします!」


 召喚獣化してないボールペン・エメラルドっぽい宝石の付いた指輪・そしておねショタ漫画を鞄から取り出して、床に座っているレミお姉ちゃんの前に並べた。


「お納め下さい」

「まあ!こんな所でクーヤちゃんに求婚されてしまうなんて!!」


 レミお姉ちゃんが真っ先に手に取ったのは指輪だった。

 それを右手の薬指に嵌めてニッコリする。


「求婚じゃなくて、それは支払いなのです!」


 左手薬指じゃなかったのでセーフ!?

 でもココは異世界だから、どういう意味合いがあるのかは知らん。


「これはクーヤちゃんが持ってる使いやすいペンね!嬉しいわ~!」


 そっちは普通のボールペンだから、インクが無くなったら使えなくなるけどね。


「この本は?」

「レミお姉ちゃんの欲しい物がわからなかったんだけど、こういうのが好きそうだなーと思って、知り合いの『モコティー』って作家さんに一冊貰って来ました!」

「私が好きそうな本??」


 レミお姉ちゃんが、おねショタ漫画を手に取った。

 そしていぶかしげに読み始める。



「・・・・・・・・・・・・・・・」


 真剣な表情で読んでるんだけど、モノがモノだけに何とも言えない気分だ。


「・・・こ、これは!?」


 なんか反応したぞ!


「・・・・・・・・・・・・・・・」



 そして15分ほど経過。



「クーヤちゃん!この続きは!?」



 喰いついた!!



「えーと・・・、ボクは一冊しか貰ってないのです」

「そ、そんな~~~~~~~~~~!」

「でもボクは、モコティー先生から情報を入手することに成功しております!」

「詳しく!」

「レミお姉ちゃんは、同人誌即売会コミケって知ってる?」

「知らないわ」

「近々その会場で、モコティー先生が漫画を大量に販売するらしいのですよ!」

「な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーー!?」



 結局この日は字の勉強どころではなくなってしまったけど、献上品をとても気に入ってくれたレミお姉ちゃんに、時計を作ってもらうことになりました!


 ちなみに同人誌即売会コミケには必ず行くと張り切っておられました。

 家に帰ったらティアナ姉ちゃんとモコねえに報告しなきゃだね!

 

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