第164話 社畜
ハムちゃんの受け渡しもメメトンカツのお裾分けイベントも無事終了し、ようやくいつもの何気ない日常に戻った。
とかいいつつ、リリカちゃんのご要望でリビングをハムちゃんまみれにして、お母さんと三人でゲームで遊んでいるんですけどね!
ちなみに今日やっているのは、『ロードランニャー』というゲームだ。
主人公は猫で、謎の穴掘り銃で地面に穴を掘りながら金塊を集めていき、襲い掛かって来る豚みたいな敵キャラから逃げながら、最後に出現した梯子を使って画面上部に脱出すれば1面クリアだ。
冷静に考えると主人公は金塊泥棒なんじゃないかって気もするんだけど、当時は深く考えないで遊んでいたので、結局どういうストーリーなのか分からないまま。
ああ、もしかすると盗まれた金塊を取り戻してるのかも!それならば納得だ。
でもなぜ主人公は猫なのかって疑問は残るけど・・・。
♪デデッテ デデッテ デデッテ デデデデ
レレッテ レレッテ レレッテ レレレレ
謎解き的な雰囲気を感じさせる不思議なBGMが流れる中、リリカちゃん猫が金塊を集めていく。
「あーーーーーっ!きんかいが、かべのなかにある!!」
「あらあら~、どうしましょう?」
「えーとねえ、上の壁を掘って中に落ちてから金塊を取るんだよ!」
「えーーーーーーーっ!おちるの~~~!?」
リリカちゃん猫が自分の掘った穴に落ち、動けなくなってやられてしまった。
「クーヤ!うごけなくなったんだけど!!」
「あーごめん!二つか三つくらい掘って、その下の壁も掘らなきゃダメなの!」
「なるほど~!そんなやり方もあったのね~」
―――――そんなほっこりムードの中だった。我が家に異変が起きたのは。
バタン!
『みんな大丈夫ですかーーーーーーーーーーーーー!!』
突然玄関の方から男の声が聞こえて来た。
今、大丈夫ですかって言ってたよな?何かあったのか!?
ガチャッ
慌てて玄関に移動すると、そこには人生に疲れ果てた感満載の、社畜としか言い様が無い眼鏡を掛けた男が立っていた。
「んんん~?誰・・・ですか?あっ!もしかして家を間違えた!?」
慌てた社畜が外に出て行った。
ガチャッ
「やっぱりウチじゃないですか!じゃあ、この子は誰なんだろう?」
社畜にガン見されたので、ハニワのようなつぶらな瞳で見つめ返した。
パタパタパタパタ
「まあ!お父さんだったのね~!お帰りなさ~い!!」
リビングから出て来たお母さんが、社畜を見てまさかの一言。
お父さんだって!?じゃあこの人生に疲れ果てた社畜が、お母さんにあんなことやこんなことをして、娘をいっぱい産ませたというのか!!
・・・許さん、許さんぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!
憤怒のオーラを撒き散らしながら、力いっぱい社畜を睨みつけた。
「マリアンネ!無事だったのですね!!娘達は!?」
「みんな元気ですよ~!」
「よ、良かったあああぁぁぁ~~~!」
人生に疲れ果てた社畜がフニャフニャと腰砕けになり、リストラを宣告された直後のように玄関にへたり込んだ。
「魔物のスタンピードがこの街を襲ったと聞いて、慌てて帰って来たんだよ」
「あらあらあら~。レオナ達冒険者の頑張りで、街を襲った魔物は全て討伐されたのよ~!でも貴族街はメチャメチャで、まだ復旧の目途が立ってないみたいなの」
「魔物に門を突破されたのですか!?」
「北門を守っていた伯爵様の軍隊は壊滅状態みたいね~。高待遇で兵士の募集が始まったって街の噂なのよ~」
「軍隊が壊滅!?」
「あーーーーーーーーっ!おとーさんだ!!」
とてててててててて ぴょん!
「おっと!!リリカちゃんも元気そうで良かったですよ!」
「ぱんだこーぼーにいってたんだよ!」
「ぱ、ぱんだこーぼ??何ですかそれは・・・」
リリカちゃんの突撃を何とか受け止めた社畜だけど、結構懐かれてますね?
頼りになる感じではないけれど、優しそうなのは認めましょう。
「ところで・・・」
社畜が人生に疲れ果てた目でショタを見た。
「この子は誰なんでしょう?」
その言葉を聞いたお母さんとリリカちゃんもショタを見た。
「クーヤちゃんですよ~?」
「クーヤだよ!!」
「いや名前だけ教えられても・・・、クーヤちゃんと言うのですね?男の子かな」
「クーヤちゃんのことを忘れるなんて、酷いお父さんですね~!」
「おとーさんひどい!!」
「忘れる??いや、・・・え?僕が忘れてるだけなのですか!?まったく記憶に無いのですが・・・」
「家族の顔を忘れるなんて・・・オヨヨヨ」
「うぇっ!?家族?僕の子だったのですか!!しかしいつの間に・・・え??」
お母さんの冗談にリリカちゃんが追従したので、完全に混乱していますね!
そろそろちゃんと説明してあげないと収拾がつきませんぞ!!
「あはははは~~~冗談ですよ~!!じゃあクーヤちゃんが
「暮らす??」
出会いから順を追って話していくお母さんだったが、子供がとんでもない家に一人で暮らしていたことを知った社畜のボクを見る目が変わったのがわかった。
「それは素晴らしい判断です!こんな小さな子供がたった一人で暮らしていたなんて、とんでもない話だ。えーと、クーヤくん?まだ会ったばかりの僕を『お父さん』とは思えないだろうけど、この家のお父さんです。よろしく!!」
さすがに今すぐ『お父さん』と呼ぶのは抵抗があって無理だけど、この人が優しい人だってのはわかる。挨拶くらいは元気よくしておこう!
「クーヤです!よろしくーーーーーーーーーーー!!」
社畜風お父さんに手を握られ、大きくブンブンと握手された。
・・・うん。この人となら仲良くやっていけそうですね!
なぜかずっと玄関で長話していたわけだけど、話が一段落した所でようやくリビングへと移動することになった。
バタン
そしてリビングを見た社畜風お父さんが仰天する。
「何ですかこれはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
あ、そういやリビングがハムちゃんまみれだったのを忘れてた。てへっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます