第331話 ジャーキー効果で思わぬ事態に!?

 首都からスイーツが消え去るという不思議な事件が発生したらしいけど、ボク達は無事に任務が完了したので、大満足しながら城へと帰って来た。


 それはすなわちミミリア王国に明日帰ることが決定したということになるので、だったら使い切っても問題なしと、残り少なくなったバッファローのブロック肉を王妃様にプレゼントしようという話になった。


 まあ、お金いっぱいもらったしね。それに『聖なる水』を毎年購入してくれるお得意様なわけだから、サービスするのも大事なのだ。


 メルお姉ちゃんを見つけたので王妃様の居場所を聞くと、お姫様達と一緒に洗面所にいることが判明した。


 どうやら『聖なる水』の効果が凄まじいことに感激して、アレからずっとお姫様達と洗面所に籠っているような状態らしい。


 王妃様恐怖症でブルブル震えているお姉ちゃんズが本気で行くのを嫌がったので、メルお姉ちゃんの案内で、ボク一人だけ洗面所へと向かった。



 ガチャッ



「お取込み中の所、申し訳ないのですが失礼します!クーヤちゃんがテスマリア様に用があるそうなのでお連れしました!」



 洗面所に入ると、王妃様は洗面台の方を向いており、お姫様達も顔を濡らしている状態だった。


 ドアをノックしたらロゼフィーナお姉ちゃんが返事をしたので入室したんだけど、とりあえずみんな服を着ていたのでよかった。



「あっ、クーヤだ!!」

「やっぱりお城に住みたくなったって伝えに来たのね!?」


「それは違うのです!えーとね、明日ミミリア王国に帰ることになったから、その前に美味しいお肉をプレゼントしようと思って持ってきたのです!」



 お姫様達の方へ近寄ると、ようやく王妃様も顔を拭いてこっちを振り返った。



「美味しいお肉ですの?」

「うん!ボクが住んでるオルガライドの街でこれから売られるようになる、名産品になる予定の一品なのですよ!ペカチョウ、そこにお肉を出してください!」


『チュウ!』


 ペカチョウが洗面所の床にシートを敷き、大きなバッファローのブロック肉を二つ並べた。あと秘伝のタレが入った容器も出してもらう。


「生肉の塊を見せられても、美味しいかどうか分からないわね~」

「これ本当にメチャメチャ美味しいですよ!少し前に私もご馳走になったのですが、今まで食べたお肉の中で一番美味しかったです!もう断トツです!」

「ほうほう」

「お肉はステーキにして、塩コショウを振って焼いてから、この容器に入った秘伝のタレにつけて食べてみてください!」

「ファリーメルテ、お肉は料理長に渡して、夕食に出すよう申し付けなさい」

「ハッ!」



 夕食前の時間帯だったので、今日食べることになってしまったようです。

 王妃様達の夕食を作ってる最中だったろうに、料理長さん本当にごめんよ!



 用事が済んだのでボクは自室に戻り、今日で最後となる豪華な夕食を頂き、眠りについたのだった。






 ************************************************************






 一夜明け、とうとうミミリア王国へと帰る日になった。



 何も告げずに帰るわけにはいかないので、王妃様やお姫様にお別れの挨拶がしたいとメルお姉ちゃんに言うと、最初にロゼお姉ちゃんと出会った部屋へと全員連れて来られた。


 そしてミミリア王国に帰ると報告すると、王妃様から『聖なる水が予想より早く無くなりそうだから、次回は半年後でお願いするわね!』と言われたんだけど、半年もつのかすら怪しかったので節約して使うよう言っといた。


 なんせ我慢ができない悪役令嬢マダムですから、樽一つで1年も絶対もつわけないと思って3樽手に入る設定にしたんだけど、咄嗟の判断にしては英断だったかも!


 なんせ2樽売るだけで年収6000万ですからね!

 お姉ちゃん達と分けるから、一人1000万ってことになりますが。


 こんな凄い水をボク達がまったく使わないのもおかしいから、残りの1樽はお姉ちゃん達が使うヤツってことにしてあります。



 王妃様とそんな会話をしていると、お別れが悲しくなったアンナちゃんがわんわん泣き出してしまった。



「そうだ!アンナちゃんに美味しいのあげる!」


 ペカチョウにジャーキーを出してもらった。


「これは『ジャーキー』って名前の食べ物なんだけど、昨日渡したお肉と同じく、ボクが住んでいる街の名産品になる予定の一品なんだよ!」

「ジャーキー?」

「せっかくだから、みんな食べてみて!」



 アンナちゃんだけじゃなく、王妃様とロゼおねえちゃんにもジャーキーを手渡す。それと後ろで黙って会話を聞いていたマグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんにもジャーキーを手渡した。


 ついでなのでウチのお姉ちゃんズにもジャーキーを手渡し、結局部屋の中にいる全員で食べることになった。



「カチカチなので、繊維に沿って引き裂いて、少しずつ食べてみてください!」



 手本を見せるために、まずはボクがジャーキーを引き裂いて口に入れると、みんなも真似してジャーキーを食べ始めた。


 それを口にした王妃様やお姫様達の目が大きく開く。



「「おいしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



「すでに街で販売しているのかはわからないけど、ジャーキーを作ってる人は知り合いなので、ボク達は特別に売ってもらえるのですよ!」

「昨日のステーキも美味しかったですけど、この干し肉みたいなお肉もすごく美味しいですわね~!」

「本当に美味しいわ!」

「おいしーーーーーーーーーー!!」


 王妃様の前だから大人しくしてるけど、マグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんも、ジャーキーの美味しさに興奮を隠せない様子。



「決めましたわ!」



 王妃様が大きな声を出したので、全員の視線がそっちへ向いた。



「マグナロック、そしてファリーメルテ。クーヤちゃんに同行して、昨日食べたあの肉と今食べているジャーキー?とかいう食べ物を沢山買って来なさい!」



「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」



 その二人だけじゃなく、ボク達全員がおったまげた。



「いや、えーと、レヴリオス公爵軍との戦争がまだ終わっていませんが・・・」

「もう負けようがありませんわ!諜報部隊が2人抜けるくらい全く影響しませんので、安心してミミリア王国まで買出しに行くといいですわ!」

「は、はあ・・・」

「それに、あなた方二人ってデキ・・てますわよね?帰りは男女の二人旅になりますが、全然問題ないでしょう?」


「「なッ!?」」



 マグロのおっちゃんが、驚きで口をあんぐりと開けた。

 そしてメルお姉ちゃんの顔がどんどん赤くなっていく。


 薄々勘付いてはいたけれど、この二人ってやっぱデキてたのか!!



「あ、それならいっぱいお金を持って行くといいのです。ボクの知り合いが馬車屋さんをやってるんだけど、本当に全然揺れない最強の馬車を完成させたのですよ!」

「揺れない馬車を!?」

「その馬車をハイドリムドまで届ける感じで、ゆっくり帰ってくればいいのです!王家が使うような馬車を作るとなると、1000万ピリン以上かかると思うけど」

「とても興味ありますわ!ではマグナロック、実際に馬車に乗って性能を確認し、素晴らしいと思ったら王家に相応しい馬車を特別注文して買って来なさい!」

「了解しました!」



 なぜこうなったのかはジャーキーが美味し過ぎたせいだろうけど、マグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんが同行することになってしまいました!


 でもなんか、新婚旅行みたいでちょっとムカつきますね・・・。




 ◇




 登場人物紹介ページを更新しました。

 名前の後ろに職業を追加。あとホニャ毛とハイドリムド勢を追加したみたいです。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る