第225話 タマねえのお買い物

 とりあえず最初はみんなで店内を見て回ったんだけど、やっぱりプリンお姉ちゃんは女性らしさを焦点に服を見ている感じではなかった。


 長い騎士生活の後に冒険者となった経歴の持ち主なので、どうしても機能性で服を選んでしまうのです。


 これはイカンと、クリスお姉ちゃんに彼女のコーディネートをお願いすると、『腕が鳴るわね!』と言って、プリンお姉ちゃんの手を引いてどこかへ行ってしまった。



「クリスお姉ちゃんに任せておけば、プリンお姉ちゃんに似合う服を探し出してくれるハズ!」

「タマもクリスねえに選んでもらった方がいい?」

「ん~~~、その黒いポンチョは絶対着るの?」

「これは絶対。黒ポンチョに合わせた服じゃないとダメ」

「めっちゃ難しいんですけど!!どんな服を着ても黒いポンチョで隠れちゃうから、見える部分って足だけだし・・・」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」

「あ、じゃあカッコイイ靴を買おう!意外とブーツとか似合うと思うんだよね~」

「靴はタマも欲しいと思ってた!」

「じゃあ靴コーナーにレッツゴー!」



 タマねえと靴コーナーに移動すると、さっきショタをハムハムした店員さんが一緒について来た。



「店員さん!タマねえは冒険者なので、野山を駆け回っても大丈夫なブーツが欲しいのですよ!」

「店員さんじゃないです~。エミリーお姉ちゃんです~」


 なにィ!?

 ここの店員は、『店員さん』呼びじゃコーディネートしてくれないのか!


「エミリーお姉ちゃん、冒険者でも大丈夫な靴をですね・・・」

「うっひょーーー!クーヤちゃんに、エミリーお姉ちゃんって呼ばれちゃった!」



 また抱っこされて、5分近くハムハムされた。



「ハイそこまで!!早くタマねえの靴を選んで下さい!!」

「あっ、そうだったわ!」



 普段から色んな場所を無限のスタミナで走り回ってることを伝えると、エミリーお姉ちゃんが頑丈な靴をいくつか並べてくれた。


 そこから足のサイズの問題もあるので、いくつかの靴に候補が絞られる。



「あっ、その茶色のブーツがお洒落で良いかも!」

「ん~~~、でもこっちの黒いブーツも捨て難い・・・」

「黒いポンチョに黒いブーツだと、全身真っ黒になっちゃうよ?」

「タマは真っ黒でも気にしない」

「ふっふっふ。安心して!エミリーお姉ちゃんに秘策があるわ!」

「秘策?」


 ボクとタマねえの視線が、不敵に笑うエミリーお姉ちゃんに向いた。


「その黒いポンチョは絶対外せないって話だったけど、それでもお洒落することは可能なのよ!」

「「おおおおおおおおおおおお~~~~~!!」」



 ブーツを両方とも持って、服がいっぱい飾られてるゾーンに移動した。



「ふんふんふ~ん♪」



 エミリーお姉ちゃんが鼻歌を歌いながら、春らしい爽やかなスカートやワンピースなんかをいくつか持って来た。



「じゃあ試着室で着替えるわよ!クーヤちゃんは中に入っちゃダ~メ!」

「エーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 ちなみに今『エーーーー』って言ったのは、ボクじゃなくてタマねえです。


「秘策を使って、クーヤちゃんを驚かせるのよ!」

「なるほど!」



 試着室のカーテンが閉まったのでドキドキしながら待っていると、カーテンの下から手が出てきて、ブーツが中に吸い込まれていった。



 シャーーーーーッ



 カーテンが開くと、少し顔を赤くしたタマねえと目が合った。



「いつものタマねえと少し違う?・・・あ~~~、わかった!黒いポンチョの下から白いスカートが少し出てるんだ!へーーーー!ブーツともピッタリ合ってるし、タマねえが可愛くなった!!」


 簡単に説明するとゴスロリに近い感じだね!全身真っ黒だからこそ、10センチくらい出ているだけのヒラヒラしたスカートの白さが際立っている。


 ボクが可愛いって言ったからか、タマねえがモジモジしていて、それも可愛い!


「ほらね?クーヤちゃんも大絶賛してくれているし大成功ね!今度は茶色のブーツに合わせてみようか!」

「う、うん」



 それから、青いスカート、緑のスカート、チェックのスカート、赤いスカートと色々チェンジしていったんだけど、ぶっちゃけ全部可愛かった!でも赤いスカートには黒いブーツの方が合うかな?


 ちなみにスカートしか見えないからスカートって言ってるけど、半分はワンピースのスカート部分らしい。


 もう今日から、黒いポンチョ+スカート+ブーツの組み合わせが、タマねえの基本スタイルになりそうな予感。


 エミリーお姉ちゃん、グッジョブです!



「こんな感じかな?正直どれも似合ってたから選ぶのが難しそうだけど、そこは予算と相談して決めてね~」


「全部買おう」


「・・・・・・・・・・」


「いや、えーと、タマちゃんが服を買うのよね?」

「紳士であるボクが買うに決まってるでしょう。全部でおいくら?」

「タマもお金持ってるから、服は自分で買う」

「ダメです!タマねえは毎日ボクの護衛を頑張ってくれてるのですから、せめて服くらいはボクが揃えるの!今日はタマねえとプリンお姉ちゃんに服をプレゼントしようと思ってココに来たのです!これはもう最初から決まっていたことなのです!」

「うわあ~~~!クーヤちゃんが可愛いカッコイイ!!ねえねえタマちゃん、こういう時は敢えて男性に甘えるのがイイ女なのよ?」

「イイ女!?」



 エミリーお姉ちゃんの援護がパーフェクトすぎる!

 彼女の評価がうなぎ登りですよ!ハムハムさせてあげた甲斐があった。


 やはり『イイ女』という強烈な単語の前にはタマねえも折れるしかなく、紳士であるボクが支払いをすることになった。



「ブーツが二つに、ワンピースが4着、ブラウスが4着,スカートが4着、それと下着や靴下が数点で合計65000ピリンになりますけど、クーヤちゃん大丈夫?」

「ほう、思ったより良心的な値段ではないか。キャッシュで払おう」


 ペカチョウを呼び出してお金を受け取り、エミリーお姉ちゃんに渡した。


「あっ、黄色いハムちゃん!なんだかクーヤちゃんそっくりね?」

「最初は影武者担当だったのですが、今や出世頭なのですよ」

「言ってる意味がさっぱり分からないわ!はい、丁度65000ピリンですね。お買い上げ有難う御座いました!」


 カウンターに並べられた紙袋を、一つ一つタマねえに渡していった。


「クーヤありがとう!これは一生の宝物!!」

「今日は本当に良い買い物が出来たね!マダム騒動さえなけりゃ良い店なのに」

「マダムが多い店が良い店だって、クリスねえが言ってた」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」



 紙袋をいっぱい抱えたタマねえはニッコニコだ。


 ペカチョウに預けるといいよ?って言ったんだけど、自分で持って帰るってさ。

 でも、その気持ちはすごくわかります!


 ・・・さてと、次はプリンお姉ちゃんの番ですね~!

 

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