第224話 マダムからは逃げられない

 リビングには定員オーバーの7人がいたのもあって、5人前のお寿司は一瞬で無くなってしまいました。


 まあ大好評だったってことだから、ボクとしてはむしろ大歓迎なんですけどね!


 そしてレオナねえによる『おかわり』の要求に答えて、もう一度特上寿司を召喚したんだけど、今度はみんな1回目の召喚の時に食べられなかったネタに挑戦したり、1回目に美味しいと思ったネタをもう一度食べてみたりと大いに盛り上がった。


 名のある寿司職人が握ったのか、魚は新鮮でネタも大きく、他のみんなより舌の肥えているボクが食べても全部美味しかったです!


 そしてレオナねえによる採点結果は、200と言いかけてからの195点だった。


 紙一重で味噌ラーメンの方が上回ったらしい。まあ食べ物の好みは人それぞれですからね。レオナねえはあの濃厚なしょっぱさが大好きなんだと思う。


 でも当然ながら、寿司に満点評価をした人もいます。


 まずは、召喚直後の第一印象から大当たり予想をしていたお母さん!

 本当に大ハマりしたようで、明日も召喚するよう頼まれてしまいました。


 あとタマねえとプリンお姉ちゃんも200点でした!

 プリンお姉ちゃんはともかく、タマねえは大体何食べても満点な気もしますが。


 そして予想外にも、リリカちゃんが200点評価という驚きの結果に!


 召喚1回目のイクラはスルーしたけど、2回目の時に挑戦したら美味しかったようで、最終的に一番大好きな寿司ネタにイクラが君臨したみたい。次点で甘エビ。


 元々赤とかピンクが大好きな幼女でしたからね。

 バルバルの卵の仕様が狂ってるだけで、味は嫌いじゃなかったのかも。


 クリスお姉ちゃんとティアナ姉ちゃんは150点評価だったんだけど、やっぱりバルバルの卵にそっくりなイクラに少し抵抗があるからとのこと。


 お姉ちゃん達にトラウマを植え付けるとは、バルバルの野郎・・・余計な真似を!



 ・・・とまあ、朝から寝るまで本当に充実した一日でした!






 ************************************************************






 翌日の朝。

 昨日の打ち合わせ通りに、タマねえとプリンお姉ちゃんが我が家へとやって来た。


 クリスお姉ちゃんには店に行くと言ってあるので、ボク達のために時間をとってくれているハズ。


 問題は、マダムの大群によるショタ包囲網を突破出来るかどうかだ・・・。



 ―――――『シェミール』を見上げる。



 額から汗が一滴ツツーッと垂れた。


 なんという禍々しいオーラを放っているのだろう・・・。

 この中に一歩足を踏み入れた途端、魑魅魍魎ちみもうりょうが一斉に襲い掛かって来るのだ。



「クーヤ、いつまでそうしてるの?」

「天使様が真剣な表情をしていますけど、ただの服屋さんですよね?」

「この店は本当に危険なのだ・・・。やっぱりフォーメーションBで行こう!」

「ビーってのは確か、私が先頭でしたか?」

「うん。クーヤが真ん中でタマが最後尾」

「じゃあお店の中に入りますね~」



 ガチャン



「「いらっしゃいませ~!」」



 プリンお姉ちゃんの後ろにピッタリ貼り付いたまま店内に侵入。



「ウォッホン!そこの店員さん、クリスお姉ちゃんはどこかね?」


「・・・ん?」



 あ、間違った!


 プリンお姉ちゃんが店員さんにクリスお姉ちゃんの居場所を聞く予定だったのに、なぜかボクが紳士風に語り掛けてしまったぞ!!



 ―――――女性店員が目を細めてこっちを見ている。



「あーーーーーーーーーーっ!クーヤちゃんが隠れてた!!」

「なんですって!?」


 ダダダダダダダッ


 ヒョイッ


「「あっ!」」


「相変わらず可愛いな~~~~~!」

「コレよコレ!クーヤちゃんで久々の栄養補給!」

「ずっとクーヤちゃんが来るのを待ってたんだからね!」


「にょわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


 しまったああああああああああああ!


 店内を跋扈ばっこするマダムの動きにだけ警戒してたけど、店員さん達に掴まってハムハムされると、店内にいるお客さん全員がこっちに注目してしまうのだ!


「何だか騒がしいわね?」

「あそこよ!!」

「まあ!なんて可愛い子なのかしら!」

「抱っこさせてもらいに行くわよ!」



 ドドドドドドドドドドドドドドドド!!



「き、き、き、来たあああああああッッッ!タマねえ!プリンお姉ちゃん!」



 二人の武人が魑魅魍魎ちみもうりょうの群れの前に立ち塞がった。

 まるで三国志の『関羽』と『張飛』のように頼りになる我が義姉達だ!



 ドドドドドドドドドドドドドドドド!!



「「うわーーーーー!」」



 関羽と張飛がマダムの群れに飲まれて視界から消えた。




「にょわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」




 ◇




 クリスお姉ちゃんによって救出されたのは、1時間後のことだった。



「クーヤくん、相変わらずマダムにモテモテね!」

「だからこの店はダメなのです!!次女性服を買いに来る時は、マダムがいないお店にする!」

「女性服を売ってるお店にマダムは付きモノだと思うわよ?逆にマダムが寄り付かない店にはロクな服が無いと思うし・・・」

「八方塞がりじゃないですか!!」


 タマねえとプリンお姉ちゃんが近寄って来た。


「残念ながらマダムからクーヤを守り切るのは不可能だった。魔物じゃないから攻撃することが出来ない」

「大浴場でどんな状態だったか、身を以て理解することが出来ました!」

「もう本当に大変なのです!!」



 毎回この店に来るたびに余計な時間が掛かってしまうけど、とりあえずマダム達は満足したので、買い物の邪魔はして来ないと思う。


 さあて、プロであるクリスお姉ちゃんにプリンお姉ちゃんの服をコーディネートしてもらって、いつも頑張ってくれているタマねえにも服をプレゼントしよう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る