第223話 牛丼を超える大当たり!?

 お土産を渡してからグリフォンの鞍の製作依頼をしたので、とりあえずパンダ工房での用事はすべて終わったんだけど、麻雀に誘うのはやめといた。


 せっかく本気で鞍を作る気になってるのに、麻雀なんかにハマってしまったら、レオナねえ達みたいに徹夜で遊んでしまいそうですからね!


 だからライガーさんベイダーさんを麻雀に誘うのは、グリフォンの鞍が完成して受け取りに来る時かな?


 たぶん作るのに2週間もかからないと思うんだよね。

 自分達が空を飛びたくてしょうがないのに、手抜きなんかするわけないし。


 ただ悪そうなお兄さんが麻雀セットを完成させるのは、余裕で1ヶ月以上かかると思う。麻雀牌を大量に作ってから1個1個彫って色を塗って、点棒やサイコロもあるし、麻雀卓を作るのだって苦労するハズだ。


 とにかく、麻雀セットだけはそう簡単に作れるようなもんじゃない。


 ライガーさん達に麻雀を教えるのは、そっちの麻雀セットが完成してからでも遅くはないんだけど、まあレオナねえ次第か・・・。


 でもサングラスの方は、たぶんすぐ完成するんじゃないかな?

 ガラスに色を着けるのにちょっと苦戦する程度だと思うし。


 ・・・いや、サングラス職人さんにも色々と苦労があるのかもしれないから、ボクがよゆーよゆーとか言ってたら怒られちゃいそうだな。憶測で言うのはやめよう。



 今日は色々やって疲れていたけど、もうついでだってことで、そのままトナカイに乗って貧民街スラムに向かい、孤児院の中をお土産まみれにした。



 孤児院用のお土産は子供が喜びそうな物ばかり買って来たので、もう子供達は全員大喜び!思わぬプレゼントに、目に涙を浮かべた先生方に何度も頭を下げられた。


 もちろん孤児院にも最新型の時計を設置し、普通の時計とはちょっと違うってことを院長先生に説明した。


 しかしこの時計で育った子供達が、将来一般的な時計を見た時に、時間が分かりにくくて悩まされるかもしれんけどね~。


 あ、悪そうなお兄さんにも時計を届けなきゃな・・・。

 今日はもう遅いから今度にしよう。



 そしてお土産イベントもすべて終了し、ようやく家に帰って来た。






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 ブオーーーーー



 本日の湯治も無事終わって、タマねえと二人でプリンお姉ちゃんの綺麗な銀髪を乾かしてる時に、ふと大事なことを思い出した。



「しまったーーーーー!ダメ猫を連れて帰るの忘れてた!」

「あっ!野生猫に戻ってたんだった」

「それって確か、ペチコさんのことですよね?」

「うん。でも今日は忙しかったからしょうがないか~~~」

「鞍が完成するのはまだ先だから、しばらくパンダ工房に用事が無い」

「別に用事が無くても、遊びに行って構わないのでは?」

「それでもいいんだけど、明日はクリスお姉ちゃんのお店に行かなきゃ!」

「服屋さん?」

「うん!」


 プリンお姉ちゃんに服をプレゼントする予定なんだけど、まだ内緒にしとこ。


「服屋さんですか!それは楽しみですね!」

「でも服屋に行くと、マダムが大量発生するから危険なのです・・・」

「マダムはクーヤの弱点!!」

「そういえば、大浴場がマダム風呂になったって泣いてましたね」

「二人の護衛に期待してますからね!!」



 そんなまったりした会話の後、昼間にアイテム召喚が出来なかったことを思い出し、全員が所定の位置についた。



「なぜか今日は良いモノが出る予感がするのです!アイテム召喚!!」



 ヴォン



「ひゃいッ!?」



 この時間のアイテム召喚を初めて経験するプリンお姉ちゃんが、眩しい光に目をやられて軽く悲鳴をあげた。


 その声に釣られたかのように、出現したブツを見たショタも悲鳴をあげた。



「あわわ、あわわわわわ・・・、す、す、すごいのが出た――――――――!!」



「何だこりゃ?食いもんか??」

「食べ物みたいだけど、ずいぶんとカラフルね~」

「お母さんね~、これ大当たりの予感がするのよ~!!」

「私も!!」

「リリカも!!」

「タマにはよくわからない」

「やっと目が見えるようになりました!」



 それは丸くて大きな黒い器に入っていた。

 赤・白・茶・黄・ピンクと色彩豊かな出来栄えに、ショタの目が輝きを増す。



「寿司キマシターーーーーーーーーーーーーーーーーー!しかもウニとかイクラとかトロまで入ってるみたいだから特上のヤツです!!」



 その中身も多く、たぶん5人前くらい入ったビッグサイズ!

 さっき夕食を頂いたばかりだけど、こんなん余裕で食えるし!!


 おっと、遊んでる暇なんかないぞ!



「ストック!」


 召喚獣リストのバグった文字を『特上寿司』に書き変える。


「特上寿司出て来い!」


 そして再び目の前に5人前の特上寿司が出現した。


 さっきは興奮していて気付かなかったけど、よく見ると『ガリ』もちゃんと入っていて、さらに小さな袋に入った寿司醤油までいっぱい入っているではないか。


「ティアナ姉ちゃん、至急全員分の小皿を用意してください!」

「小皿?」

「この家にある1番小さなお皿を人数分です!」

「任せて!」



 しかし、このお寿司を楽しみにしていたお客さんには悪いことしちゃったな。

 アイテム召喚で当たりを引くたびに、毎回考えてしまうことなんだけどさ。


 でも特上寿司を注文できるほど裕福な人ならば、しょげずにもう一回注文し直してくれるでしょう。


 どの場面で呼び出されたのかにもよるけど、配達途中ならばお寿司屋さんがクソミソに文句を言われて作り直しになるのか・・・。


 うん、気にしないでおこう!ボクはただ美味しく頂くだけです。



 ティアナ姉ちゃんが小皿をいっぱい持って来てくれたので、それぞれの皿に寿司醤油を入れていった。



「じゃあ、まずはボクが手本を見せるね!ティアナ姉ちゃんにお箸を持ってくるよう頼むのを忘れたんで、今回は豪快に素手でいきます!」



 どれにしようか迷ったんだけど、寿司で1番大好きなサーモンを手に取り、ネタに醤油を付けてから口に放り込んだ。



「・・・・・・・・・・・・・・・」



「久々にクーヤが食いもんで泣いている!」

「これは期待できそうね!!」

「でもコレって、もしかして生魚じゃない?食べても大丈夫なの?」

「バルバルの卵みたいなモノが乗ったのもあるわね~」



 久々のお寿司、とてもおいしゅうございました。



「メチャクチャ美味しかった!!みんなも好きなのを手に取って、小皿の醤油に付けて食べてみてください!」

「クーヤくん、今食べたのって生魚じゃないの?お腹壊さない?」


 やっぱりこの国には、刺身を食べる習慣ってないのかな?


「海で獲れたばかりの新鮮な魚ならば、ちゃんと捌けば生で食べてもお腹を壊さないのです!というか魚って実は、生で頂くのが1番の贅沢なのですよ!」

「1番の贅沢ねえ・・・」

「とにかく食べてみればわかります!どうせ全部無くなったら消すから、お腹を壊すことは100%ありません!」

「それもそうだな。じゃあ食ってみようぜ!」


 ひょい


 レオナねえがマグロの赤身を手に取り、醤油に付けてから口に入れた。


「・・・・・・うめえ。ちょっと待て、次はあの白いヤツいってみる」


 もぐもぐもぐもぐ


「何だこりゃ!?メチャクチャ美味えぞ!!」

「今のはホタテですね!貝だよ」

「マジか!?全然貝っぽくなかったぞ?」

「美味しいと聞いては静観していられないわ!私も食べてみよっと!」

「タマも食べてみる」


 レオナねえが先陣を切ってくれたので、やっとみんなお寿司を食べ始めた。


「お母さんコレすごく大好きかも~~~!!」

「ビックリだよ!魚って、そのまま生で食べても美味しかったんだね~」

「でも川魚は生で食べたらダメだよ?絶対お腹壊すから」

「天使様!メチャメチャ美味しいです!!」

「牛丼に匹敵する!」


 リリカちゃんが甘エビを手に取ったので、尻尾は硬いから食べない方がいいって教えてあげた。


 そして最後に、とあるお寿司だけがいっぱい残った。



 ―――――そう、イクラである。



「みんな警戒してるみたいだけど、これは『バルバル』じゃなくて『イクラ』だから爆発しないのです!じゃあレオナねえ、食べてみて!」

「アタシが食うのかよ!!」



 死ぬほど警戒しながら、レオナねえがイクラを咀嚼した。



「・・・・・・あれ?爆発しないし、なんか普通に美味えぞ?」

「でしょ?他のみんなも食べてみて!」


 爆発がトラウマになっているリリカちゃん以外の全員が、イクラに挑戦した。


「お母さんね~、これ大好きかもしれない!」

「爆発しなければ美味しいわね~」

「思ったよりも生臭くなかったーーーーー!」



 とまあ、そんなこんなで5人前のお寿司はサクッとなくなり、レオナねえが食い足りないとのことなので、もう一度特上寿司を召喚し直したのだった。

 

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