第52話 コンビ結成
「*おおリリカ!ゆうしゃロロのちをうけつぎしものよ!そなたがくるのをまっておったぞ!」
勇者リリカがクエクエの世界に降り立った。
文字は読めずとも、クーヤちゃん翻訳システムさえあれば、このゲームを存分に楽しめることだろう。
「*このちにふたたびへいわをとりもどすのじゃ!よこにあるたからばこをあけるがよい!」
しかし全部ひらがなってのが、レトロ感あっていいね!
「*そしてそのへんにたっているへいしからはなしをきくがいい!ではまたあおう!ゆうしゃリリカよ!」
王様の話が終わり、勇者リリカがその場で足踏みをしている。
「えーとね、この青い人が勇者リリカで、その上にいるのが王様。んで、勇者リリカの右にあるのが宝箱なんで、その宝箱の上に移動してからボタンを押してみて!」
リリカちゃんが言われた通りに動いてボタンを押す。
するとコマンドが開いたわけだけど、これも全部日本語だから教えるのが大変なことに気付く。
「おおう、なんてこったーーーーー!!ちょっとこのまま待ってて!」
自分の部屋まで走って、ノートとボールペンを持って来た。
そしてコマンドをそっくりそのままノートに書き写してから、今度は逆に、タマねえにコマンドを翻訳してもらう。
『はなす』のすぐ上に、この世界の『話す』って文字を書いてもらう感じだ。
ステータスの方にも、HPの上に体力、MPの上に魔力、って感じで記入してもらった。こりゃ慣れるまでノートは必需品だな・・・。
ちなみにノートはアイテム召喚でゲットしたヤツです!
「じゃあ一番右下にある『とる』を選んでからボタンを押してね」
リリカちゃんがコマンドを選択すると、100ゴルドを入手することができた。
もちろんながら、それも全部翻訳して伝えなければならないので大変だ。
うーむ・・・、クエクエをやらせたのは大失敗だったな。
ここまで教えるのが地獄だとは想像できなかった・・・。
まあそんなこんなで兵士や街の人に話を聞きまくってから、フィールドマップに飛び出した勇者リリカは、ようやくモンスターと遭遇した。
「なんかでたーーーーーーーーーーーーーー!!」
「おおーーーーーーー!」
「えーとね、それ可愛いけど魔物なんだよ!さあ頑張ってやっつけよう!」
戦闘コマンドもしっかりノートに書き写して、タマねえの訳をつける。
「リリカのこうげき!スライムに2ポイントのダメージ!」
そんなこんなでスライムを倒すことに成功。
「やったーーーーーーーーーーーーー!!」
「うわ~~~、これ面白いかも。文字を読めないのが残念」
「日本語を覚えるしかないねえ・・・」
「ニホンゴ?」
しまった。ひらがなばっか見てたので、日本語とか言ってしまった。
まあ別に隠す必要は無いか?
「えーとね、ボクが住んでたのは日本って名前の国なの。その国で使われてる言葉だから日本語なの」
「なるほど。じゃあニホンゴ覚える」
「ええ?ゲームのために言葉を覚えるの!?」
「覚えたら別のことでも役に立つような気がする」
おおぉ~、タマねえ鋭い読みだな!
日本語をマスターしたら、あのファッション雑誌だって読めるようになるわけだから、俺と関わっている限り日本語はおそらく役立つ。
どうせならリリカちゃんにも日本語を覚えさせたいくらいだ。
そうすりゃ翻訳する手間が省けるぞ!!
暇な時間にでも、タマねえと一緒に『ひらがな表』みたいの作るか~。
リリカちゃんもバイリンガルに育てるなら今だな!
そうこうしているうちに夕食の時間になり、今日はアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんだけじゃなく、タマねえもウチで一緒に食べていくことになった。
◇
「じゃあいっくよーーーーー!アイテム召喚!!」
ヴォン!
リビングが眩い光に包まれ、光が去った後に残されていたのは黒い布だった。
「なんだこれ?・・・黒い布!?」
床に広げてみると、どこかで見たような形をした布だった。
「あーーー!あひるポンチョと一緒のやつだ!!」
「ああ!クーヤくんが着てる黄色くて可愛い服の色違いね!?」
でもショタにはあひるポンチョがあるし、これは着ることないな~。
横に来たティアナ姉ちゃんを見るが、黒いポンチョは似合わない気がする。
他のお姉ちゃん達にしても、黒いポンチョは着ないよな~。
何となくリリカちゃんにでもあげるか?
「リリカちゃん、これいる?」
「ん~~~~~~、リリカいらなーい!」
あっさり幼女に断られた。
白いワンピースが良く似合うリリカちゃんに、黒いポンチョは正直微妙だよな。
タマねえと目が合った。
「タマねえ、これ「いる!」にゅあっ!」
めっちゃ食い気味に『いる!』って言われた!
タマねえが頭を差し出して来たんだけど、ショタに着せて欲しいってことだよな?
「あ、そうだ!ちょっと待ってて」
「ん?」
触った感じ、この黒いポンチョは新品だ。
ならば着る前にストックしておけば、汚れてしまっても俺のひと言で新品に戻るから、絶対その方がいいハズ。
「ストック!」
ササッと召喚獣リストのバグった文字を『黒ポンチョ』に書き換える。
「黒ポンチョ出て来い!」
召喚獣へと進化を遂げた黒いポンチョを、タマねえに着せてあげた。
「おお~~~~!タマねえにはすごく似合うね!!」
「ほんと?」
黒髪だから更に黒成分が増えてしまったけど、エキゾチックな感じが俺は好き。
「本当に良く似合ってるわ~!」
「良かったね、タマちゃん!」
「・・・なるほど。黒に黒を被せるのもいいわね」
「あはは~、クーヤちゃんとお揃いだー!」
「クーヤちゃんの服もだけど、すごく綺麗な布だよねー」
「へーーーー!袖が無いってのが個性的で面白いな!」
みんなに似合うと褒められたタマねえも、ちょっと嬉しそうだ。
―――そしてこれは、完全な
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