第265話 冒険者ギルドが騒然となる

 ナナお姉ちゃんとアイリスお姉ちゃんも手袋を光らることに成功したので、手袋をタマねえとレオナねえに返し、トナカイに乗って街へ向かって歩き出す。


 これで全員が魔力の流し方をマスターしたわけだけど、見る人が見ればグルミーダの革の手袋だということがバレてしまうようなので、とりあえず人目のあるところでは手袋は光らせないことにした。


 理由はもちろん、競合相手がいるとグルミーダ狩りが捗らないからだ。

 せっかく見つけた美味しい狩場は、ボク達で独占したいからね!


 みんなの分の手袋と、ボクとナナお姉ちゃんの防御力をアップさせる分のグルミーダの革を集めなきゃならないので、今はまだ冒険者達には内緒なのです。


 それにこれほどの性能を秘めた素材だから、噂が広まれば一気に値段が高騰するに決まってる。タマねえの肘までタイプなんて一体どれほどの値打ち物なんだか。



 ガチャッ



 冒険者ギルドのドアを開け、お姉ちゃん達に続いて中に入る。



 ―――――その瞬間、ギルド内が静まり返った。



「ん?」



 ギルドの異様な雰囲気を訝しみながらも、カウンターの方へ歩いて行く。



「お、おい!アレって、もふもふ隊・・・だよな?」

「あの格好は何!?」

「オイオイオイオイ!何だよありゃ?レオナの背中が燃えてるぞ!」

「アレって炎の絵なの?」

「それよりあのドレスの鎧は何だよ!?豪華過ぎんだろ!!」

「あんな冒険者知らないぞ?もしかして王都から来た人かな?」

「アイリスとナナの装備もメッチャ可愛くなってるじゃん!!」

「あの黒い胸当てスゲー格好良いな!どこに売ってんだろ?」



 そうだった!手袋騒動のせいで忘れてたけど、みんなのオシャレ装備って初披露みたいなもんじゃんね~。


 冒険者達が驚愕して大きな声でしゃべってるから、ボク達の方まで驚きの声が聞こえまくりですよ!


 噂の的になっているお姉ちゃんズの口端が上がってますな。



「おいレオナ!一体何なんだよその服は!」

「っていうか全員が前見た時と全然違うし!!」

「ちょっと!ナナのその可愛いローブ、どこで手に入れたのさ!?」

「アイリスの服すごく好みなんですけど!!あっ、クーヤちゃん発見!」


 例の如く『騒がれ慣れてますので』ってすまし顔で歩いていたのに、一瞬のうちにホニャ毛の五人組に絡まれ、目立たないようにしていたクーヤちゃんも、ピンクのホニャ毛がトレードマークのロコ姉ちゃんに捕まってしまいました。


「フッ。冒険者たるもの、オシャレにも気を使わないとダメだぜ?」

「ちょっと前までクッソ適当な服着て歩いてたくせに、何言ってやがる!!」

「わかったわかった!とりあえず討伐依頼の素材を出して来るから、ちょっとそこで待ってろ。その後でちゃんと話してやっから」


 筋骨隆々でアマゾネス風のリズお姉ちゃんは、どうもレオナねえの格好に興味津々な様子。やっぱ可愛い系よりも格好良い系に惹かれるタイプなのか・・・。


 お姉ちゃんズがカウンターで職員と会話した後、奥の部屋へと入って行った。おそらくそこで討伐対象の『マーダーハウド』を出して査定してもらうのでしょう。


 そしてなぜ他人事なのかというと、さっきロコ姉ちゃんに捕まったまま忘れ去られたクーヤちゃんは、現在、ホニャ毛の人達にぺろぺろされているからです。


 あの人達、ギルドに入ってからずっとクールを装ってたくせに、服を褒められてメチャクチャ浮かれてるじゃないですか!!


 ・・・ん?


「ねえねえ、アイリスお姉ちゃんが手招きしてるよ?」

「クーヤは返さんぞ」

「いえ、あの人達は今クーヤちゃんのことなど忘れてますから!ホニャ毛の皆さんを呼んでるんだと思います」

「私達を?」

「何の用だろ?行ってみよう」



 なぜか紫色の髪をしたクール系美女のシーラお姉ちゃんに抱えられて、奥の部屋に連れて行かれた。



「あ、来た来た!」

「なんでこっちに呼んだのさ?」

「査定に少し時間が掛かるから、此処でさっきの話の続きだ」

「あ?話なら向こうでいいだろ」

「リズだってこのオシャレ装備に興味があるだろ?でも他の冒険者達に聞かれたら入手困難になるぜ?」

「ウチらとホニャ毛の間柄だから、特別に教えてあげようと思ったんだけどな~」

「あ、そうか。オレの考えが浅はかだった!確かにあっちで話をしたら何人もの冒険者と競合しちまうな。スマン、こっそり教えてくれ!」


 怖そうな女性だけど、素直に間違いを認めることができる良い人だね~。

 なるほど、だからレオナねえ達と仲がいいのかも。


「じゃあ教えてやっか。やっぱ気になるのは『この服と装備品が一体どこに売っていたのか?』だよな?」


 それを聞いて、ホニャ毛の4人はウンウン頷いた。


「その答えは『どこにも売ってない』だ。完全オーダーメイドだからメッチャ金がかかったけどな!」


「「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」」


 まあ、売ってないって答えはがっかりしますよね~。


「どこにも売ってねえのかよ!」

「完全オーダーメイドってことは、『こういう服を作って欲しい』ってお店に注文したってことだよね?」

「今まで服に無頓着だったもふもふ隊が、こんな斬新な服をデザインしたとでもいうの?ちょっと信じられないんだけど・・・」

「突撃もふもふ隊だ!」

「どっちでもいいわよ!」

「ズバリ!プリンちゃんが怪しい!!」


 ロコ姉ちゃんが、プリンお姉ちゃんをビシッと指差した。


「私にそんな凄いセンスはありません!セルパト連邦にいた時はフルアーマー姿で戦っていましたので。ドレスアーマーは天使様に考えてもらったんですよ!」

「あっ!プリンねえが言っちゃった」


「「天使様??」」


 たしかに言っちゃったけど、『天使様』じゃサッパリわからないと思う。

 って、何でホニャ毛の全員がボクを見てるのさ!?


「もう少し引っ張るつもりだったけどまあいいか!オシャレ装備は全てクーヤがデザインしたんだぜ?」


「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」



 なんかこの流れって、またボクが服のデザインしなきゃならない感じじゃん!


 でも今日はもう考えてる時間が無いし、ホニャ毛4人のオシャレ装備を考えるのはもっと余裕がある時でお願いします!

 

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