第256話 新装備記念に討伐依頼を受けてみるらしい

 悪そうなお兄さんに死神コートを渡し、本日のミッションは無事完了した。


 彼は死神コートに着替えた後、革ジャンを見てニヤリとしていたので、部下達に試着させてヨイショして買わせる作戦のことを考えていたんだと思う。


 その前にコートを自慢してる姿が目に浮かびますけどね!


 あんな服を着てたら間違いなく貧民街スラムで話題になるだろうから、しばらく気分良く過ごせるんじゃないかな?



 そして我が家に向かってトナカイに乗ってトコトコ歩いていると、レオナねえが何か閃いたようで、『あ、そうだ!』と話をきり出した。



「なあなあ!すぐにでも実戦で新装備を試したいから、明日にでも服に付与魔法を掛けてもらいに行って、それが完成次第、討伐依頼を受けてみないか?」

「いいね!」

「私は全然問題ないよ」

「プリンアラートも一緒にどうだ?」

「いいですね!湯治とリハビリの毎日でしたので、実戦で感覚を取り戻したいと思っていました!」


 トナカイで隣を歩いているタマねえが、話を聞いてうずうずしてるのがわかった。


「ボク達も一緒に参加してみる?」

「行く!!」


 その声が聞こえたようで、レオナねえがこっちを見た。


「ふむ。タマは問題ないが、クーヤも来るとなると大問題だな・・・」

「えーーーーーーーーーー!なんで!?」

「ドラちゃんで狩りをされると、新装備のお試しどころか、プリンアラートの実戦復帰すらメチャクチャになるだろ」

「確かにお試しどころじゃなくなりそう」

「クーヤちゃんの場合、一人で山を丸ハゲにしちゃいそうだもんね・・・」


 するわけないじゃないですか!


「前にクーヤが本気で戦った時、タマの出番がまったく無かった」

「天使様が!?」

「クーヤが本気で戦った?それってもしかして、ドラちゃんとやり合った時か?」

「うん。空からトレントやゴーレムがドッカンドッカン降ってくるから、邪魔しないように隣で大人しく見てた」

「その『トレント』ってのは、確か『ウォーレヴィア』のことだよな?」

「えええええ!?大きな木じゃない!!それが空からドッカンドッカン・・・」

「山が丸ハゲになっちゃう!!」


 するわけありました!!


「うーむ・・・。クーヤも一緒に来るのは構わんけど、一つ条件を付けよう。戦闘には参加しないでアタシ達の戦いを後ろで見ていること!」

「エーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「乗り物要員だね~」

「それだって重要だよ!何を狩りに行くかによるけど・・・」

「手袋がいい!」

「はい??」


 タマねえ、手袋の討伐依頼なんか絶対に無いと思います!!



「コレ!」



 そう言った彼女が右手を高く突き上げた。

 その手には黒い革の手袋が・・・。あっ、そういうことか!!



「あーーーーーーーーーー!『グルミーダ』を狩って、黒い革の手袋の予備を作ろうって作戦か。アリだな!!」

「面白いかも!でもグルミーダの討伐依頼を受けたら、丸ごと全部ギルドに提出することになっちゃうよ?」

「えーと・・・、グルミーダの生息地って、北西にずっと行った所にある未開の地だったよね?他の魔物の依頼を受けて、そのついでに狩る感じにする?」

「目的は完全に逆だけどな!グルミーダのついでに依頼を達成するんだ」

「未開の地ですか!?そこって危険な魔物がいるのでは・・・」


 ほうほうほうほう!新しい召喚獣を増やすチャンスじゃないですか!


「ん~~~、このメンバーなら大丈夫じゃね?」

「ハイ、いつものテキトー来ました!」

「たぶん何とかなると思うけど、危なくなったら逃げちゃおう!」

「クーヤが目をキラキラさせてる」

「あの顔は、召喚獣を捕まえる気マンマンの顔ですよね」


 全員がこっちを見た。


「同行を許可する条件は、黙って後ろで見てることって言ったよな?」

「エーーーーーって顔になった」

「手に負えない魔物が出た時だけ参戦可能にするとか?」

「私達の狩りの邪魔にならない方向になら、攻撃を許可してあげようよ!」

「ドラちゃん禁止ということでなら、いいのではないでしょうか?」


 みんなの意見を聞いて、さすがの呂布も、ヤレヤレ・・・って表情に。



「しゃーねえなあ・・・。んじゃアタシらの邪魔にならない方向限定で、ガジェムの使用だけ許可する!」



 はあ!?カブトムシしか使っちゃダメなの?

 それだけだとゴーレムみたいのが出たら、倒すの大変じゃないですか!



「エーーーーーーーーー!?せめて白くまの使用許可を!!」

「そいつも最強クラスじゃねえか!!あーでも、白いローグザライアの戦闘シーンはちょっと見てみたいな!」

「だよね!?もうずーーーーーっと気になってたの!!」

「タマも気になってた!」

「ドラちゃんに簡単にやられちゃったけど、リナルナの冒険者がみんな避けてたくらいだから絶対に強いと思う!」

「全然出番が無くて可哀相・・・」

「死にたくないので私もローグザライアだけは避けてました。でも噂では、とてつもない攻撃力と防御力、そして驚くほどの素早さを兼ね備えていて、一度狙われたら逃げることすら至難の業とのことでした」


 正真正銘の化け物じゃないですか・・・。

 そんなのを鼻歌気分で狩って来たドラちゃんって、規格外にも程がありますな。



「よし!アタシも戦闘シーンが見たいから、ローグザライアの使用を許可する!その代わりみんなの邪魔はするなよ?よほどのピンチじゃなければ助けもいらん」


「了解であります!!」



 よっしゃああああああああああああ!!

 厳しい条件だけど、かわいい召喚獣をいっぱいゲットしてやるぜーーーーー!

 

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