第257話 特攻隊長

 プリンお姉ちゃんの実戦復帰と新装備のテストをする為に、北西の未開の地へと手袋狩りに行くことが決定した。


 タマねえが手袋って言ったからそう呼んでるだけで、本当は『グルミーダ』って名前の魔物なんだけどね!


 ただその前に、購入したばかりの服や装備品に付与魔法を掛けてもらいに行くみたいなので、面白そうだからついて行こうと思ったんだけど・・・。



「ねえねえねえ!みんな付与魔法を掛けてもらいに付与魔法使いのところに行くんでしょ?気になるから一緒に行ってもいい?」


 それを聞いたレオナねえが、とんでもない一言を放った。


「別に構わんけど、今から向かう店にいる付与魔法使いってマダムだぞ?」

「やっぱり行かない」

「諦めるのはやっ!!少しも悩まないで即断したなオイ!」


 そんな危ない店になんか行くわけないでしょうが!


 あひるポンチョに付与魔法を掛けてもらうとか、そういう理由があったらしぶしぶついて行ったと思うけど、ポンチョを消したら魔法効果も消えるとしか思えないんで、やるだけ無駄なんだよね・・・。


 中に着ている普通の服を強化してもたかが知れてるから、マダムにぺろられてまで行く価値が無いのです。



 というわけで、みんなが出発する時に見送りだけして、その日はリリカちゃんとお母さんと三人でゲームをして遊びました。


 いちごパフェを食べながらまったりゲームをして過ごすのも、何だかんだで結構楽しかったです!



 レオナねえが帰宅した時に話を聞いてみたところ、服に掛ける付与魔法ってのは基本的に[斬撃耐性][衝撃耐性][魔法耐性][炎耐性][汚れ耐性]といった風に、複数掛けてもらうのが良いらしく、それが5人分ってことで大体10日くらいかかるみたい。


 しかもそのマダムが凄腕だからこそ、その日数で仕上げてくれるのであって、他の付与魔法使いだと倍の日数がかかってもおかしくないとか。


 すぐにでも狩りに出発すると思ってたから、ちょっとガッカリです・・・。


 そして、またもや装備品が手元から無くなったレオナねえ達も、少し前の自堕落な生活に戻ってしまったのでした。






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「ようやく完璧な服になったぜ!」

「私の可愛い服が帰って来たーーーーー!!」

「本当に待ち遠しかったよね~!」

「違いがまったくわからない」

「鑑定士に調べてもらえば確実に分かるのですが、そのような真似をしなくても、しっかりと付与魔法が掛かってると思いますよ」

「安心していいぞ!あの店は適当な仕事なんかしねえから」



 ちなみにココはドラゴンの旅のスタート地点でもある『ネジポイント』なんだけど、付与魔法のお店でみんなの服や防具を受け取った後、そのまま真っ直ぐ寄り道もせずにやって来て、お姉ちゃん達がゴンドラの中で着替えたところです。


 冒険者ギルドで依頼も受けてきたので、もう、今すぐにでも出発可能ですぞ!



「さてさて、みんな着替え終わったし出発する?」

「今日はシャンクルじゃなくて、グリフォンに乗って行くんだよね!?」

「一応ギルドで地図を見て確認してきたけど、『グルミーダ』がいるって噂の森まで結構遠そうだったからな~」

「間違って違う森に入ったら最悪」

「討伐依頼を受けた『マーダーハウド』でしたか?最低でもその魔物だけは狩らなければなりません」

「ああ、『マーダーハウド』ならこの森の奥にもいるから大丈夫だ。依頼の方はどうにでもなるから安心してくれ」

「それなら良かったです!」


 あれ?何か忘れてるような・・・。


「あーーーーー!またアイテム召喚するの忘れてた!」

「そういや朝に戻ったんだっけか」

「この前、アイテム召喚をする前に寝ちゃったせいですね」

「タマもいつの間にか寝てた」


 みんな腑抜けてたからな~。

 まあ、やってしまったものはしゃーない。切り替えていこう!



 草むらにシートを広げてそこに座る。

 呼び出した物が汚れてしまうので、アイテム召喚は適当じゃダメなのだ。



「使えるモノなら何でもいいや。アイテム召喚!」



 ヴォン



 朝なので全員ダメージゼロです!・・・って地味に良い物が出たぞ!!



「何だこりゃ?もしかして武器か!?」

「違うけど半分正解です!武器として使う人もいますな」


 ヤンキーとか暴走族とか、アウトローな人達がね!

 そういやレオナねえの格好って、ちょっと暴走族っぽいな。



「ストック!」


 召喚獣リストの文字化けを、『金属バット』に書き変える。


「金属バット召喚!」


 無事召喚獣となった『金属バット』が目の前に出現した。



「ぬお!金属バットってこんな重かったっけ!?はい、レオナねえ」



 ショタにはこんな物でも重いんだな。

 普通にバットとして振るのも厳しいから、ボクは野球すらできないのか・・・。


 頑張ってレオナねえに手渡した。



「キンゾクバットって名前なのか。おお?結構イイ感じの重さだな!!」

「バットって呼ぶといいですよ」

「ほうほうほう」


 ブンッ! ブン! ブン! ブンッ!


「悪くねえ!今回みたいに獲物を傷つけたくない場合にピッタリの武器じゃん!」

「タマもブンブンしてみたい!」

「いいぞ、ホレ」


 タマねえも、金属バットをブンブン振りまくった。


「これも良い感じ!でもちょっと軽いから魔物を倒し損ねそう。やっぱりタマはバールの方がいい」

「私もちょっと振ってみたいです」

「ん」


 今度はプリンお姉ちゃんが金属バットをブンブン振り始めた。


「使いやすい重さですね!ただ少し短いので、大きな魔物を相手にこの武器で戦うのは危険かもしれません」


 金属バットは結局レオナねえの元へと返ってきた。


「アタシもメイン武器がコレは嫌だぞ?でも素材を傷つけない予備の武器があったらなーって前から思ってたんだ!」


 ブン! ブン! ブン!


 それから何度か素振りして満足したのか、レオナねえは右手でグリップを握ったまま、金属バットの芯の部分を自分の右肩に乗せた。


 ・・・どう見ても特攻隊長ですやん。


「バットが気に入ったならば、レオナねえが使ってていいよ。野球する時だけ返してもらうけど!」

「いいのか?じゃあ有難く使わせてもらうぜ!ところで『やきゅう』って何だ?」

「結構面白いゲームだよ!ああ、テレビゲームのゲームじゃなくて、大人数で身体を動かして遊ぶの!」

「へーーーーー!今度暇な時にでもやってみようぜ!」

「やろうやろう!」



 数を揃えるならハムちゃんをいっぱい呼び出せばいいんだけど、あの体型でボールを投げたりバットを振ったり出来るんだろか?


 あ、野球ボールが無いじゃん!

 しょうがない。野球をするのはボールをゲット出来たらだな~。

 

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