第304話 またかよ!!

 

 ―――突然ですが、誘拐されました。



 なぜこんな事になったのかというと、むしろボクが聞きたいくらいです。


 揉め事はお姉ちゃん達に任せて、か弱いショタは一番後ろでプルプルしているハズだったのに、そんな人畜無害なショタが誘拐されるなんて誰が思います?



『揉め事はお姉ちゃん達が解決するだろうし、守られる立場は楽でいいな~♪』



 そんなふうに考えていた時期が、ボクにもありました。

 しかしですね、不幸というモノは突然やって来るのです。



 あの時、みんなと一緒に暴れていれば、こんな未来は訪れなかったでしょうに。






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 ―――――ショタの回想シーン―――――




 3人のクズを速やかに処刑した後、ボク達は中高生に教えてもらった宿屋に向かって歩いていたのですが、今度は6人のチンピラに囲まれた。


 少し歩いただけで変なのに絡まれる状況にもうウンザリしてるんだけど、お姉ちゃん達がキラキラと輝いていて、すごく目立つのも事実なんですよね。


 オシャレがまだ発展途上なこの世界で、お姉ちゃん達にオシャレ装備を着させてしまったのは、ちょっと早過ぎたのかもしれない。


 いや・・・、南にあるという帝国くらいになると服装も垢抜けてたりするのかもしれないので、色々と発展途上なのは未開の地と面しているのが原因かもね~。


 まあとにかく、6人のチンピラもお姉ちゃんズに処刑されました。

 しかし本当にうざいです。この国ちょっと悪者多過ぎ!



 そして宿屋の目印だという黄色い建物の近くまで歩いて来た時、10人のチンピラに囲まれる事態となった。



「コイツらだろ!」

「炎の黒い服に、ドレスを着た女、間違いねえな」

「ウハハハハ!本当に美女ばっかじゃねえか!」

「さすがにお前らちょっとやり過ぎ。『ジグスレイド』に喧嘩を売ってタダで済むと思ってんの?」

「面倒だからもう攫っちまおうぜ!」



 ぬう・・・、この10人は仲間の報復をするために駆け寄って来たっぽいな。

 でもお前らがしつこく絡んで来たんじゃん!逆ギレすんなや。



「しらねえよバーカ!お前らが絡んで来るから撃退してるだけだろ」

「もういい加減にしてほしいよね~」

「こんな無法者を放置してる軍の姿勢もちょっとおかしいと思う」

「ハイドリムドに来たのは失敗だったかもしれませんね」

「しょうがない。タマも参戦するから、クーヤは安全な場所まで下がってて」

「あい!」



 百戦錬磨のお姉ちゃん達にかかれば、10人程度なら大丈夫でしょう。

 これ以上敵の人数が増えるようなら、ボクも参加して全面戦争に突入かな?



「痛い思いしたくなかったら、大人しくついて来な」



 ドガッッ!



「ぐあッッッッッッ!」


「なッ、てめえコラ!!」



 バギッ!


 ズサーーーーーーーーーーッ



「いってエエエッッ!くそがッッ!!」



 悪者退治に定評があるタマねえが参加したことにより、一瞬で大乱闘に発展した。 


 とはいえ、普段から危険な魔物と戦いまくってる高ランクの冒険者が、こんな街のチンピラごときに苦戦するハズも無し。


 かなり一方的な展開なので、敵の増援にだけ注意しようと周囲を見渡してみた。


 突然の乱闘で辺りは騒然としていたが、暴れてるのがジグスレイドの連中だと分かっているみたいで、喧嘩を止めに入るような人はいないようだ。



「うわーーーーーーーーーーん!」



 向こうの方で小さな女の子が泣いていた。


 突然始まった喧嘩のせいで泣いているのか、転んで泣いているのかはわからないけど、お兄ちゃんと思われる男の子が、泣いてる女の子の手を優しく握っていた。



 ―――――そんな光景を見ながら、ほっこりしていた時だった。



 カポッ



 突然目の前が真っ暗になった。



『なんだ!?』



「よーし、捕獲成功だ!」

「ヒャハハハハハ!これで俺達の勝ちィ!」



 タタタタタタタタタタッ



 しまった!これはイカンですよ!!

 えーと、こういう場合どうすればいい!?



『ハム助召喚!』



 タタタタタタタタタタッ



 咄嗟のことで頭が回らなかったけど、お姉ちゃん達と連絡手段が無くなるとマズイと思ってハム助を召喚し、ボクはそのままどこかへ運ばれて行った。






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 ―――――話は冒頭に戻る―――――




 ボクはまたもや牢屋に閉じ込められていた。

 目の前に鉄格子があるので、これで牢屋だということがわかった感じ。



「失敗こいたーーーーーーーーーーーーーーー!」



 なんでボクはハム助なんか召喚してしまったのだろう?

 今にして思えば、メルドアかクマちゃんを出しとけば誘拐されずに済んだじゃん!


 テンパってるとダメだな~。

 武力で解決できる場面で、連絡手段を第一に考えてしまうとは・・・。


 まあでも最低限の仕事はしたってことで、20点くらいはあげてもいいか。

 咄嗟に100点の行動がとれるように、誘拐される練習もしとかなきゃなダメだね!



 ハム助に念波を飛ばし、お姉ちゃん達にクーヤちゃんの無事を伝えてもらう。



『誘拐されて牢屋に入れられたけど全然よゆー!たぶんヤツらのアジト。急いで助けに来なくても大丈夫。危なくなったらドラちゃん呼ぶから』



 よし、これで一安心だ。



 クーヤちゃんを誘拐したのは万死に値するから、ジグスレイドを潰すのはもう確定として、どんな感じで動こうかな~。


 昔と違ってカブトムシとメルドアだけのショタじゃないから、建物をぶっ壊すのは簡単なんだけど、調べもせず暴れるわけにもいくまい。


 この建物の中に、悪者以外の人もいる可能性があるからね~。



 ガチャッ ガチャガチャッ



 ・・・ん?



 ドスン ドスン ドスン ドスン ドスン ドスン



 ガシャン



 なんか隣の牢屋の扉を開けたっぽい?



 ドサッッ!



「う、うぅ・・・」



「フン、明日こそは口を割らせてやる!楽しみにしてな!!」



 ガチャリ



 ドスン ドスン ドスン ドスン ドスン ドスン



 ガシャガシャッ バタン!



 すごくデカくて太った悪者看守が、一人で騒音を撒き散らしながら牢獄からいなくなった。


 っていうか、隣の牢屋に死にそうなおっさんがいるんだけど、どうしよう!?

 

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