第260話 クエクエにこんなヤツがいた!

 

「クーヤ動くな!」

「クーヤ邪魔!」

「クーヤちゃんどいて!そいつ殺せない!」



 動くなとか邪魔とか、どうすりゃいいのさ!?

 っていうかナナお姉ちゃん、それどこかで聞いたセリフ!!



「はいストーーーップ!この黒いモコモコは『モルモット』だから、勘違いしないでよね!ボクの召喚獣だから攻撃禁止!!」



 それを聞いたお姉ちゃんズが、ようやく武器を降ろしてくれた。



「モルモット?いや、その黒いモコモコは絶対グルミーダだろ!」

「もう召喚獣にして名前まで付けてる!」

「ちょっと目を離した隙に捕まえてるなんて凄すぎない!?」

「グルミーダって、本当に小さくて真っ黒なんだね~」

「一体どこで見つけたのですか?」



 えーと、後ろを向いた状態で左にいたわけだから・・・。

 右側の少し後方を指差した。



「あの辺の原っぱに・・・」



 みんなが一斉にその方向を見ると、またもや黒いモコモコと目が合った。



「うわっ!またいたし!!」


「手袋だ!!」

「よっしゃ!あいつはアタシらが頂くぜ!」

「あの辺に巣があるのでしょうか?」



 イカン!手袋マニア達に目を付けられたらもう逃げられないぞ!


 同胞がやられるのを見せるのもどうかと思ったので、頭の上にいたモルモットを一旦消した。



「大事な手袋を剣で傷物にするわけにゃいかねえ。ここはバットの出番だな!」

「大勢で近寄ったら逃げるかも」

「私は剣と盾しか持っていませんので、この場所で見学しています」

「やっぱ弓矢も槍もダメだよね。私も見学!」

「硬化するって話だから気を付けてね~」



 というわけで、鈍器を持ったレオナねえとタマねえの二人が、グルミーダに近寄って行った。



「動物は逃げるけど、大抵の魔物は好戦的だから、よほど劣勢にでもならない限り逃げないと思うぞ?アルペジーラは魔力が尽きたら一斉に逃げるけどな!」

「へーーーーー!」



 そんな会話をしながら二人が近付いて行くと、突然グルミーダが青白く光った。



 ヒュン ガギン!


「うおッ!」

「速い!」


 辛うじて金属バットで防御したようだけど、グルミーダが凄い速度でレオナねえに突撃したぞ!


 ヒュン ドゴン!


「危なッ!」

「しかもやたらと硬くねえか!?」


 ギンッ! ゴギン! ガイン!


「うわ、バットが凹んだし!」

「意外と強い!!」


 スカッ


「しかも小さいから攻撃が当たらねえッ!」


 ゴイーーーン!


「当たった!」

「でも攻撃が効いてねえし!」


 ヒュン



「オラアアアアアアアアアッ!」



 カキーーーーーーーーーーーーーーーン!



 レオナねえのフルスイングでグルミーダが空高く弾き飛ばされ、星となって視界から消えた。



「いきましたーーーーー!場外ホーーームラーーーーーン!!」



 会心のホームランに思わず腕をグルグル回してしまった。



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


 あ、ダメじゃん。


「手袋が・・・」

「スマン!やっちまった」


 小さなボディーだから、フルスイングするとホームランになってしまうのか。

 これ倒すのめっちゃムズくない?


 ドゴッ!


「ごふッ!」


 二人が気を抜いた瞬間、レオナねえのみぞおちにグルミーダがめり込んだ。


「痛ってェなコラ!」


 ガギッ! ゴギン!


「危なッ!」



 よく見ると、青白く光ったグルミーダが3体に増えていた。



「なんか増えてるし!!」

「マズくない?」

「思った以上に手強い魔物ですね!私も参戦します!」

「待って、ここは私に任せて!」



 ナナお姉ちゃんが呪文を唱え始めた。



「手袋強い!」


 ゴイーン! バリバリバリッ!


 タマねえがバールで防御して跳ね返ったグルミーダに、ナナお姉ちゃんが放った雷の魔法が直撃した。



「あ、動かなくなった!」

「雷の魔法が弱点だったんだ!?」

「なるほど!そういう作戦なら盾を持っている私の出番ですね!」


 プリンお姉ちゃんが、レオナねえとタマねえのいる場所まで駆け寄る。


「グルミーダが更に2体増えたから気を付けろ!」

「でも全滅させない方がいいのかも。手袋が無限に増えそう」

「いい作戦ですね!防御に徹して1体ずつゆっくり倒しましょう!」



 あっ!クエクエでもそんな敵がいたぞ!


 手袋みたいなモンスターがしつこく仲間を呼びまくってさ、戦いが全然終わらないの!まさかリアルでアレが見れるとは・・・。


 でも長くなりそうだなーとか思いながら周囲を見渡すと、木の上にピンク色の何かがいるのを発見した。



「わああああ!ピンク色のウサギがいた!」


「ん?」


 一人だけ暇そうにしていたアイリスお姉ちゃんが、ボクの声に反応した。


「木の上にピンクのかわいいヤツがいるの!」

「木の上?・・・あっ、ホントだ!」

「アレって普通の動物かなあ?」

「あんなの初めて見たよ!どっちだろね?」


 普通の動物なら可哀相だけど、魔物の可能性があるなら倒すしかないよね!?

 しかし、この世界のウサギは木に登るのか・・・。



 ターーーーーン



「ぶっ!クーヤちゃんが容赦なくいったーーーーー!」

「よし当たった!」



 アイリスお姉ちゃんと二人で、木から落ちたウサギに駆け寄った。


 ただカブトくんの攻撃は小動物には明らかなオーバーキルなので、倒れている姿はなるべく見ないようにして、速やかにストックする。


「ストック!」


 その瞬間ピンクのウサギが消えたので、倒したのが魔物だったことにホッと胸を撫で下ろした。


「あっ、消えた!」

「うん、魔物だったみたい!かわいいのゲットーーーーー!」



 召喚獣リストを開くと、『ホニューン』という名前が追加されていてニヤけてしまった。このままでも可愛い名前だけど『ウサギ』に変更。



「ウサギ召喚!」


 そして目の前に出現したピンク色のウサギが、可愛い顔でボク達を見上げた。


『ミュ?』


「うっひょーーー!メチャメチャ可愛い!!キミの名前は『ウサギ』に決まったよ。今日からボク達の仲間です。よろしくね!」

「わあああああ!可愛すぎる!!ねえねえ抱っこしてみていい?」

「いいよ!」


 アイリスお姉ちゃんがウサギを優しく抱っこした。



「ほわあ~~~~~!やわらかくて気持ちいい!」

「この森って可愛いのがいっぱいいるから、すごく好きかもです!」



 ドガッ! バリバリバリッ!


 後ろの方から激しい戦闘音が聞こえて来た。



「見た目は可愛いけど、この子も実は暴れん坊なのかも・・・」

「ハムちゃんも半端なかったもんね・・・」



 可愛い顔してるけど魔物ですからな~。

 それにしてもピンクのウサギとか、リリカちゃんがメッチャ喜びそう!

 

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