第261話 白くまはやっぱり強かった
手袋マニア達がグルミーダを誘き寄せながらの長期戦を始めたので、ボクはアイリスお姉ちゃんと一緒に、かわいい魔物探しをすることにした。
まずは迷子にならないよう、風ハムちゃんに頼んでそこそこ深い穴を掘ってもらい、錆びたスプーンを埋めた。
もう有り余るほどの手袋が作れるくらいグルミーダを狩れそうな雰囲気だけど、その前にこの森は可愛い魔物が多くてボクが気に入ってるから、絶対無駄にはならないでしょう。
心配するといけないので、ナナお姉ちゃんに一声掛けてから、風ハムちゃんに木の枝を切ってもらいながら森の奥へと進んでみる。
「ちょっと待って!私一人じゃクーヤちゃんを守り切れないかもしれないから、あまり奥まで行くのは危険だよ」
「あっ、そうか!じゃあクマちゃんに守ってもらおう。白くま召喚!」
シュッ
目の前に巨大な白くまが出現した。
見知らぬ森に召喚されたので、ココはどこだ?とキョロキョロしている。
「うはっ!!久しぶりに見たけど、ローグザライアってやっぱ大きいね!!」
「これでもう、どんな魔物が出てきても安心なのです!」
「たぶん冒険者10人で襲い掛かっても返り討ちにされる強さだと思う・・・」
リナルナの冒険者が全員ビビってたくらいだもんな~。
「クマちゃんにお仕事です!大きな魔物が出たら全部倒してください!」
『ンゴ!』
リナルナで呼び出して以来なんだけど、召喚システムは絶対なので、すぐにボクがご主人様だと理解して良い返事をしてくれた。
「ドラちゃんのせいで感覚がおかしくなってるけど、こんな凄い魔物を使役してる召喚士って、クーヤちゃん以外に一人もいないと思う・・・」
「どうなんだろ?ライガーさん以外の召喚士と話したことないから、他の召喚士がどれくらいなのかサッパリわからないのです」
「私も馬を連れてる召喚士しか見たことないよ。同級生に何人か召喚士がいたけど、馬すら持ってないただのマッチョだったし」
「どれだけ筋肉を鍛えても、一人じゃグルミーダとか絶対倒せないよね!」
「さっき目の前の黄色い子が、簡単に召喚獣にしてましたけど?」
・・・アイリスお姉ちゃんが、ジト目でこっちを見ている。
まあ、クーヤちゃんはちょっと意味不明なショタですから!
ただ、この世界には様々なタイプの魔物がいるので、正々堂々拳で語り合わなくても、何かしら抜け道はあると思うんだけどね~。
世界のどこかに凄い召喚獣を使役している召喚士がいたとしても、全然不思議じゃないと思ってます。
もし凄腕の召喚士と出会うことが出来たら、色々話を聞いてみよう!
小動物を見逃さないように、アイリスお姉ちゃんと二人で、木の上まで注意しながら進んでいく。
ガサガサッ
―――――でっかいトラが2体出た。
「やばっ!」
「クマちゃん助けてーーーーーーーーーー!」
『ンゴ!』
勇ましい返事をした白くまが、二人を守る為に前へ出た。
『ガルルルルルルルル・・・』
『グルルルルルルルル・・・』
よく見たらトラとは少し模様が違うのか。
でも体長が3メートルくらいあるんですけど!
この森って可愛い魔物も多いけど、少し歩いただけで獰猛な魔物ともすぐ出会うし、かなり難易度が高くないっスかね?可愛いヤツだってなんか強いしさあ。
ああ、だからまだ未開の地のままなのね・・・。
ダダッ ダダッ ダダッ ダダッ ダダッ
あっ、クマちゃんが行った!デカいくせにメッチャ速いぞ!!
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
『ゴアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
『ンゴ』
バキッ! ドガッ! ゴシャーーーーーーーーーーーーーーーーン!
クマちゃんアッパーで右のトラが宙に舞い、その一瞬の隙を突いて左の虎が噛みつきにきたが、クマちゃんフックで弾き飛ばされ大木に叩きつけられる。
「うわあ・・・、ローグザライア強すぎじゃない!?」
「クマちゃん半端ねーっス!!」
たぶんあのトラも相当強いと思うんだけど、攻撃力も機敏さもクマちゃんの方が数倍上回ってる感じ。おそらく防御力も相当高いんじゃないかな?
魔力全開のメルドアと戦ったらどちらが勝つかわかんないけど、クマちゃんが勝っても全然不思議じゃないと思う。
この強さならば、安心してクーヤちゃん親衛隊の隊長を任せられますな!
『ンゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
2体のトラを退治した白くまが、勝利の雄叫びをあげた。
ワー パチパチパチパチ
「クマちゃんお見事です!」
「私達を守ってくれてありがとーーーーー!」
「でもそのトラはまだ持ってないから召喚獣にするね」
『ンゴ!?』
食べる気マンマンだったらしく、『そんなあああ~~~~~!』とガッカリされてしまった。
「じゃあ次出てきた魔物は食べていいから!」
「ああ、食べたかったんだね~。そういえば召喚獣もお腹が空くの?」
「えーとねえ、魔力が十分ならお腹は空かないみたい。でも生前の記憶のせいかわかんないけど、食べたいって欲求はあるみたいだよ?」
「なるほど!クーヤちゃんの変態魔力を食べてるなら絶対満腹だよ!」
「変態魔力言うなし!」
ガサガサッ
―――――バッファローみたいな魔物が現れた。
「うわ、また大きいのが出たよ!」
「くっ!アレも持ってないけど、次の魔物は食べていいって言っちゃったしな~」
『ンゴ!』
「ぐぬぬぬぬ・・・、約束だからアレはクマちゃんにあげます!」
「あははははは!めっちゃ悔しそう!!」
ダダッ ダダッ ダダッ ダダッ ダダッ
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーン!
見た目は強そうだったけど、やはりリナルナ最強生物の足もとにも及ばず、数発のクマちゃんパンチで簡単にノックアウトされた。
そしてクマちゃん待望のお食事タイム。
「グロ注意」
「でも美味しそうに食べるねえ~」
「そりゃあ牛肉ですもの。美味しいに決まってます!」
あーーーーーっ!そうだよ、普通に牛肉じゃん!
次また見つけても召喚獣にはしないで、食用としてお持ち帰りしよう!
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