第290話 祝福の儀

 リリカちゃんの誕生日は7月2日らしい。


 でも祝福の儀ってのはいつでも受けられるわけではなく、毎月10日に教会で受けることが出来るんだってさ。


 毎日やるのが面倒臭いから、月1回ってことにしたんだなきっと。


 すなわち6月11日生まれから7月10日生まれまでの子供達が教会に集められ、一緒に祝福の儀を受けることになるんだと思う。


 誕生日のすぐ後だから、リリカちゃんはラッキーなのかもしれない。

 クーヤちゃんの誕生日なんて10月10日だから、ラッキーの極みですけどね!


 あ、でも生まれた時間も関係あるのか。10日の午後生まれだと次の月に回されるのかも・・・。まあすでに召喚士のボクには関係ないけど。


 学園で一緒だった同い年の子は100人くらいいたんだけど、みんな誕生日がバラバラなわけだし、えーと・・・8人くらい集まるのかな?


 貴族の子供が庶民と一緒だとは思えないから、北区は除外して考えてます。

 貧民街スラムにはそもそも学園が無いし。


 とにかくリリカちゃんの職業が何になるのか、自分のことじゃないのにメチャクチャ緊張します!!


 あとすでに召喚士を授かっているボクも、家族の一員となるために召喚の儀を受ける必要があるみたいだから、当日は何としても誤魔化さなければなりません。


 リリカちゃんの召喚の儀を偵察して、しっかり作戦を練っておかねば・・・。






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 そしてとうとうその日がやって来ました。

 今日リリカちゃんは祝福の儀を受け、職業を授かるのです!


 グルミーダの革集めはまだ継続中だったけど、リリカちゃんには素晴らしい職業をゲットして欲しいということで、2日前に家族全員でドラゴンに乗ってリリカ島まで行って来ました。


 その行動に意味があるのかどうかは正直わからないけど、祝福の儀までに経験したことのすべてが職業を取得するのに重要な意味を持つという話なので、やれることは全部やっておこうってなったわけです。


 ただ、ボクの召喚獣に触れすぎているのがちょっと気掛かりではありますね。

 冷静に考えると、召喚士になる可能性が1番高いような気がする・・・。


 まあそうなったらボクの全力サポートで、何としても強い召喚獣をゲットさせてあげなきゃだな~。彼女をマッチョ化させるわけにはいかないし。



 ガチャッ



 教会のドアを開けて中に入る。


 ちなみに今いる場所は中央区なんだけど、教会はココと貴族街の二ヶ所にしか無いらしい。いや、貴族街にあるのは神殿だって言ってたか。


 やっぱり庶民は貴族とは扱いが違うみたいだな。

 まあ揉め事の原因にしかならんだろうから、むしろ別々で良かったけどね。



 中にはすでに結構な人が集まっていた。



 といっても子供の晴れ舞台を見るためについて来た身内が多いだけで、祝福の儀を受ける子供の数は・・・、今のところ5人くらいかな?


 実は身内が1番多いのはウチなんですけどね!


 お母さん、クリスお姉ちゃん、レオナねえ、ティアナ姉ちゃん、ボク、タマねえ、プリンお姉ちゃん、アイリスお姉ちゃん、ナナお姉ちゃん、ライガーさん。



 ―――――そして社畜。



 さすがに娘の晴れ舞台ということで、久しぶりにお父さんが家に帰って来たのだ!

 もっとも明日には出勤するという相変わらずの社畜っぷりですが・・・。


 ガチャッ


 入り口のドアが開いたので、どんな人が来たのか気になって顔を向ける。



「ぶっ!悪そうなお兄さんじゃん!」

「はあ!?もしかして、ガイアって子供がいたのか!?」


「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」


「ちげえよ!!お前の妹が儀式を受けるってんで見に来ただけだ」


 ツカツカとこっちに歩いて来て、ボク達と合流した。


「リリカとの接点なんか無いようなもんなのに、変に義理堅いな」

「少し前にお前らの家に邪魔しただろ。それと、そこにいるハチャメチャな黄色いガキと絡んだ子供がどんな職業クラスを授かるのか、すごく気になってな」

「あははははははは!確かにリリカちゃんは、普通の子供とは育ちが違うよね!」

「何が起きても不思議じゃないと思う!」

「絶対凄い職業クラスを授かるに決まってる!」

「そうだといいんだけどね~」

「こ、この怖い人は知り合いなのですか!?」

「そういや親父とは初対面か。見た目はヤバいが悪いヤツじゃないぞ?」

「悪そうな顔してるけど、すごく良い人なのよ~♪」


 タマねえ、絶対とか言ってハードル上げちゃダメですよ!

 もし木こりとかだったらどうすんのさ!?


 ちなみにリリカちゃんは、ピンクのうさぎを抱えながらプルプルしています。

 ずっと緊張しているらしく、朝から一言もしゃべりません。



 そうこうしている間に10人ほどの子供が集まった。祝福の儀を受ける子供の兄弟とかも来てるから、正確な人数はちょっとわかんないけど。



 バタン



 奥のドアから、司祭と思われるおっさんが登場した。

 その後ろから二人のシスターがついて来ている。



「今日は結構な人数が集まりましたね。親御様方、祝福の儀を受けるには少々手続きが必要です。まずは其方のシスターの方へ」



 これはアレや!手続きとか言ってるけど、献金という名のお布施や!

 お金を払って名前を記入した子供だけが参加を許されるんだと思う。


 レオナねえが言うには、祝福の儀を受けるのに30万ピリン毟り取られるらしい。


 でもここでしか職業を授かれないのだから、払うしかないよな~。

 文句が出るほど業突く張りでもなく、頑張れば払える金額なのがニクイね。


 それでも貧民街スラムの住人達には、ちょっと無理なんだろうけど。



「それでは祝福の儀を受けるお子様方、名前を呼ばれたら前へ出て来て下さい」



 きた!祝福の儀が始まるぞ!!

 

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