第234話 パンダ工房にも例のアレが採用される
レミお姉ちゃんを連れてパンダ工房に到着したボク達は、受付のラン姉ちゃんにライガーさんの居場所を聞き、真っ直ぐ社長室へと移動した。
「・・・え?本当にこの人が時計屋さんなのか!?」
まさかのお色気ムンムンなお姉さんの登場に、ライガーさんは驚愕した。
「初めまして!レミセリスです」
「あ、ああ、初めまして!俺はライガーといいます」
ライガーさんがレミお姉ちゃんに名刺を渡した。
「まあ!噂のパンダ工房の副社長さんだったのですね!・・・クーヤちゃん、そんなに偉い人だなんて私全然聞いてなかったんですけど?」
「すごいマッチョだって何度も説明したじゃないですか!」
「おいクーヤ、その説明だと筋肉が凄いだけとしか思われないだろ!」
「えーと、此処って社長室でしたわよね?社長さんはどこに?」
ライガーさんがパンダ社長を指差した。
『ブモ?』
ちなみにベイダーさんは用事があって外出中だそうだ。
「その大きな動物が何か?」
「だからそれが、ウチのトップに君臨する『パンダ社長』だ!」
「・・・はい!?」
レミお姉ちゃんはパンダ社長をジーっと見つめていたが、ふと何かに気付いた。
「そうか、ハムちゃんと一緒ね!?この子も召喚獣なんだわ!!」
「正解だ!ちなみにコイツを社長にしようって言い出したのはクーヤだ!」
「あはははははははははははは!」
とまあ、社長の謎解きという一発ギャグにより一瞬で打ち解けた二人は、この前料理を食べたテーブルに移って、そのまま特許の話をスタートさせた。
「時計の中って、こんな複雑な構造になっていたのか!」
「クーヤちゃんが持っていた時計を真似しただけだから、普通の時計とは全然違うと思いますわよ?」
それを聞いたライガーさんも、今の言葉にピンときた様子。
「例のアイテム召喚で呼び寄せたヤツか!」
「ピンポーーーーーン!大正解!!」
「しかしこんなの真似しようったって、普通は出来ないぞ?」
「だから言ったじゃないですか!レミお姉ちゃんは天才だって!」
「別にそんなことないわよん?」
「天才かそうじゃないかの議論を長々とやっても仕方ないから話を次に進めさせてもらうが、こうも複雑だと特許の申請が長引く可能性があるな・・・」
あ、そうか!構造が理解出来るまでオッケーとはならんよな。しかし役所の偉い人がまったく理解不能な場合ってどうすればいいんだろ?
いや、それは役所の人をナメ過ぎか。
「やっぱり面倒臭そうね。別に特許は取らなくてもいいわ」
「いや、そうもいかん!知的財産権、すなわち、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権の全てを守っておかなければ、これを真似した者が先に特許を取ってしまい、特許権侵害で損害賠償を請求されてしまう恐れがある」
「ええええええええ!!泥棒にお金を請求されるの!?」
「そうだ。バカみたいな話だが、それほど重要なことなんだ」
「酷い話ね~」
うっわ、めんどくせーーーーーーーーー!
これだから商売は嫌いなんですよ!!
しかしライガーさんってさ、マッチョにしておくのがもったいないくらい頭が良いと思いません?彼もまた、レミお姉ちゃんとは違ったベクトルの天才なのだろう。
いきなりこんな有能な人と知り合えたのって、やっぱボクの幸運値が良い感じに作用してくれたんかな?本当にありがたいことです。
話を聞いているだけで頭が痛くなってきたので、話し合いは天才二人に任せて、パンダ工房の見回りをすることにした。
◇
フロントに行くと、今日はお客さんが来ないのか、暇そうなラン姉ちゃんがアホ面で座っていた。
「暇そうですな」
「ん?」
ラン姉ちゃんがこっちを見た。
「まあ、暇ではあるわね」
「それなら一緒に外でハムちゃん体操しようよ」
「何よそれ?」
「ハムちゃん体操を知らないとか、ランねえ時代遅れ」
「時代遅れですって!?私をおばさんみたいに言わないでよ!」
「じゃあ行くよ!お客さんが来ても大丈夫なように工房の前でやるから」
「工房の前でならいいわよ」
ガチャッ
外に出ると、ぺち子姉ちゃんが見張りをしている姿が見えた。関心感心!
ってことでハムちゃんを20体召喚した。
「ブッ!何よこれ!?ハムちゃんまみれじゃない!!」
「今日は特別に、ラン姉ちゃんにセンターを任せましょう」
ペカチョウが前に出てみんなと向き合った所で、『一体何事か!』とぺち子姉ちゃんと従業員のおっさん三人が駆け寄って来た。
「にゃんにゃんにゃこれは!?」
「オイオイオイ!工房の前がハムちゃんまみれじゃねえか!」
「一体何が始まるんだ!?」
「ハムちゃん体操をするだけだよ?ああ、せっかくだから四人ともラン姉ちゃんの横に並んでください!」
全員がスタンバったところで、正面にいるペカチョウの動きを真似するだけだということを説明した。
「なんだ簡単じゃない!」
「しかし俺達とは体形が違うから難しそうだぞ?」
「まあ適当でいいだろ」
「ダメです!全力でペカチョウの動きをトレースするのがハムちゃん体操なのです。手抜きは許されませんぞ!」
「わかったわかった!真面目にやるって!」
ピーーーーーーーーーーーーッ!
タマねえのホイッスルがハムちゃん体操の始まりの合図だ。
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
最近、ペカチョウの動きに合わせてタマねえがホイッスルの音を合わせるようになったので、とてもキレのいいハムちゃん体操に進化したのだ!
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
みんなでハムちゃん体操をしていると、外出中だったベイダーさんが馬車で帰って来たのが見えた。
当然ながら『一体何事か!?』と、専属ハムちゃんと共に駆け寄って来た。
「何だこりゃ?」
「みんなでハムちゃん体操してるの!ベイダーさんも入って入って!」
「クーヤちゃんが変なことしてるわね」
「オイオイオイ!なんで工房の前がハムちゃんまみれになってんだ!!」
特許の話が終わったのか、レミお姉ちゃんとライガーさんもボク達の方に歩いて来たので、みんなをラン姉ちゃんの横に整列させた。
そしてペカチョウの動きを真似するだけだと説明し、ハムちゃん体操を再開する。
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
すると、大勢でハムちゃん体操をしている姿を見つけた従業員達が続々と参加して、最終的には50人規模の集団となってしまった。
ただペカチョウの姿が見えにくくなってしまったので、従業員のおっちゃんに台を持って来てもらって、ペカチョウをその上に乗せた。
「これは素晴らしいぞ!身体を
「ウム!俺もそう思っていたところだ。しかしこれを毎日やるには、あの黄色いハムちゃんが必要なのではないか?」
「ああ、それなら大丈夫だよ!たぶんどのハムちゃんでも同じ動きが出来るから。ためしにベイダーさんのオレンジハムちゃんにやらせてみる?」
「本当か!よし、ちょっとやらせてみよう!」
「クーヤ、彼女が吹いていた小さな笛はもう無いのか?」
「実はもう一個あります!」
ライガーさんにホイッスルを渡した。
「じゃああの黄色いのと場所を変わって、最初からやってみてもらえるか?」
『チュウ!』
そして今度はペカチョウの代わりにオレンジハムちゃんがみんなと向かい合い、ライガーさんのホイッスルに合わせてハムちゃん体操が始まった。
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
うん。
なぜどのハムちゃんもあの体操が出来るのか不思議だけど、ボク達がいなくても全然大丈夫そうですね!
ということで、パンダ工房でも毎朝ハムちゃん体操をすることが決定しました!
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