第300話 【Mission】冒険者達を笑わせろ!

 ドアを開けて冒険者ギルドに入ると、一斉に視線が集まったのがわかった。

 なぜかギルドの中にいると、どんな人が入って来たか気になるんですよね~。


 バタン


 一人だけ狩りに参加しなかったせいかボクが一番後方になったので、きちんとドアを閉めてからお姉ちゃん達の後ろを歩いて行く。


 今回は全員オシャレ装備を着用してるのが効果覿面こうかてきめんなようで、冒険者達の大半がお姉ちゃん達を見て目を大きくしていますな!


 しかし最後尾の黄色いのを視認した瞬間、テーブルに着いている5人くらいのチームがサッと目を逸らした。



「むむっ」



 どういうこと??

 冒険者に目を逸らされるようなことをした記憶が無いんですけど?


 なんだかすごく気に入らないので、ハゲヅラと鼻メガネを装着してからテーブルに向かって歩いて行く。



「なんだ?」

「やたらと小さいおっさんだな・・・」

「こっちに向かって来るぞ」

「つーか、あの美女軍団に同行してなかったか?羨ましいおっさんだ!」



 向こうにいる冒険者らが騒ぎ始めたけど、用があるのはキミ達じゃなくてそこのテーブルなのです!



「ウォッホン!」



 男達は一切会話もせず、露骨に顔を背けている。


 ・・・気に入らんのう。


 テーブルの上にハトを召喚した。



「!?」



 それでも耐えているので、ハトの後ろにスズメちゃんを縦に6体並べて『ポッポちゃん大名行列』にし、テーブルの上を練り歩かせてみる。



『クルックー』


『チュイッ』

『チュイッ』

『チュイッ』

『チュイッ』

『チュイッ』

『チュイッ』



「くッ・・・」



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」



 鳴き声までONにしたのに、よく耐えよるわ。

 仕方あるまい、こうなったら最後の手段だ。


 高速点滅させてから気持ち強めにハゲを光らせた。



「!?」

「なっ!!」


 バフッ!


「「ぶわーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」



 よし、勝った。

 満足したので、ポッポちゃん大名行列を引き連れ、お姉ちゃん達を追った。




「アハハハハッ!なにそれ可愛い!!」

「また一人でワケの分らんことやってんな~」

「いつの間にかハゲてる」

「ちょっと冒険者達を懲らしめて来たところです」

「その恰好で!?」

「流石は天使様。意味不明ですね!」



 お姉ちゃん達はすでに獲物を査定に出した後らしく、暇潰しにポッポちゃんらと遊び始めた。


 さっきテーブルの上でやったように、大名行列にしてピーピー鳴かせながらお姉ちゃん達の周りをクルクル回らせると、みんなすごく喜んでくれました!



「また香辛料を買いたいから、この前の店に寄ってもいい?」

「別に構わんけど、前回買ったのが腐るほど余ってるだろ」

「メッチャ余ってるけど、ジャーキーの秘伝のタレを作るのに必要な香辛料だけ買い占めたいのですよ。ジャーキー工房に横流しするのです」

「なるほど!確かにそれは重要な任務だな」

「すごく重要!!」

「鳥の丸焼きも買って行こうよ!お土産じゃなく、私達が旅の間に食べる用にさ」

「いいね!買い占めてもいいくらいだよ!」

「私もリナルナの鳥の丸焼きは大好物なので賛成です!」



 ライガーさんが安く購入するルートを探すって話は出てるんだけど、まだ全然忙しくてリナルナに来られないのだ。


 ボク達も旅の途中だし、とりあえずは店頭価格で購入するしかないよね。

 大量購入するから、値切り交渉をしてみるつもりだけど。


 とまあ、そんな会話をしながらまったりしている間に獲物の査定が終わったので、お姉ちゃん達は結構な旅の資金をゲットすることが出来ました!


 討伐依頼を受けていないから、これだと冒険者ランクが上がらないけどさ。


 ボクだけ狩りに参加しなかったけど、前回の旅行で一番儲けてるし、何もしなくても特許料がガンガン振り込まれているので、金の心配は無用なのです。



 全員ホクホク顔で冒険者ギルドを出て、この前のチェーン店に向かった。




 ◇




「いらっしゃいませ~!香辛料はいかがですか?」


「全部買おう」


「・・・・・・・・・・・・」



 ショタの成金全開なセリフで、店員のお姉さんが前回香辛料を爆買いした上客のことを思い出したらしく、ハッとした顔になった。



「あの時のお客さんですね!!」


「あ、全部は言い過ぎでした!えーとですね~、コレとコレとコレを、あるだけ全部欲しいのです。まけてくれたら次回も爆買いを期待できるみたいなので、ここは店長と相談するべきです!」


「・・・・・・・・・・・・」



 いきなりの値下げ交渉に、店員のお姉さんが狼狽ろうばいしている。



「て、店長と相談して来ます!!」



 スタタタタタタタタタタ!



 そして風のように走り去った。



「いきなり店員を走らせるとは、さすがクーヤ」

「この店で安く買えるなら、ライガーさんが香辛料を求めてリナルナを駆け回る必要が無くなるのです!」

「ん~、それでもやっぱり農家と直接交渉した方が安く手に入りそう」

「まあね~。とりあえず店長がガメつくなければ、あと数回はこの店で買うことになりそうかなってところです。ミミリア王国に一番近い街だし」

「店長の腕の見せ所だ!」



 タマねえとそんな会話をしていると、さっきのお姉さんが揉み手をした店長を連れて来たので、直接交渉した結果、結構値切ることに成功しました!


 これなら次回もこの店で購入していいでしょう。

 胡散臭い揉み手店長だったけど、なかなかのやり手かもしれませんな!



 ボクの用事は終わったので、食材購入チームと合流した。



「わははははは!鳥の丸焼きを買い占めてやったぜ!」

「ハムちゃんに預けておけばしばらく腐らないから、旅の間に食べ切らなくてもいいかなって奮発したんだよ!」

「これなら家族のお土産にしてもいいからね~」

「大好物ですので、毎食、死ぬまでずっと鳥の丸焼きでもいいくらいです!」

「一生はたぶん地獄」

「残念ながら1週間で限界が来ると思います!」



 プリンお姉ちゃんの気持ちはメッチャわかるけど、例えそれがカレーライスでも、3日くらいで『もう無理ーーーーー!』ってなるのですよ!


 さてと・・・。


 グリフォンも集めたし、旅の資金も調達したし、香辛料も買ったし、これでイルプシアの街でやることはもう無くなったかな?


 よし、次の国目指して出発だーーーーーーーーーー!




  ◇◇◇




 祝・300話!


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