第287話 パンダ工房に粉砕機を依頼しに行く

 本日の成果はグルミーダ10体とバッファロー0体だったので、解体をチャッチャと終わらせ、冒険者ギルドに寄ってから、そのままパンダ工房へと向かった。



「ベイダーさん!フードプロセッサー式粉砕機を作って欲しいのです!」



 突然ワケのわからんことを言われたベイダーさんが、頭に『?』を浮かべた。



「何だそれは?」

「前回来た時、フードプロセッサーを作るって話があったでしょ?でね、ついでに木の枝を粉砕出来る強力なヤツも作ってほしいの!」

「木の枝を?そんなもんを粉々にしてどうする?」

「ベイダーさんも一度ジャーキー職人をやれば話が早いんだけど、作る工程の一番最後で乾燥させた肉を燻製にしなきゃならないの」

「はあ!?ジャーキーって、そこまで手が込んでいるのか!」


 それを聞いたぺち子姉ちゃんが、思わず口を開いた。


「ジャーキー職人をその辺の雑魚料理人と一緒にしてもらっちゃ困るにゃ!あの最強の味まで到達するのは本当に大変にゃんにゃ!」


 ニャンコのあまりの迫力に、ベイダーさんが一歩下がった。


「お、おう。大変なのはよく分かった。・・・そうか、燻製を作るのに木っ端が必要というわけだな?」

「うん!」



 フードプロセッサーを召喚し、どういう物を作って欲しいのか説明した。



「なるほど・・・、硬い木の枝を入れるなんて想定外だから、これだと刃の部分が壊れてしまうわけだ。そこを強化するくらいなら出来そうだな・・・。いや、どうせなら大きいのを作るか!木の枝を小さく折って投入するのも手間だろう?」

「それだーーーーー!絶対大きい方がいいです!でも大きいと人身事故が怖いから、誰でも安全に使えるように作ってね!」

「勿論だとも!人が落下しないようにするのも重要だが、木片を取り出す時に動き出しても大事故になるから、出来上がった木片は下に落とすようにするか・・・」



 なんかメッチャ大きいの作ろうとしてません!?


 いやまあ、安全設計ならそれでもいいんだけどさ。

 ただ気軽に持ち運び出来ない感じなんじゃないかしら?


 あっ!どうせボクはもうすぐジャーキー職人を卒業するし、パンダ工房に置いといてもいいのか。


 っていうか、隣にジャーキー工房とか作るのかな?

 食品を扱うわけだから、ごちゃ混ぜ状態は衛生上良くないと思うし。



 気になったのでベイダーさんに聞いてみた。



「あーーーーー!そこまで考えてなかった!確かに食品を扱うなら清潔にせんといかんな。なるほど、ジャーキー工房か・・・」


 全然考えてなかったらしい。


「あとね、悪そうなお兄さんからも一つ注文があるの」

「ん?まだあるのか」


 後ろで黙って話を聞いていた悪そうなお兄さんが前に出て来た。


「昨日バッファローの生息地を発見した。それで大量に狩ることが可能となったわけだが、俺の部下達はハムちゃんなんて便利なのを持っていない。それでバッファローを5体くらい運べるデカい馬車が欲しい」


 そういえばまだベイダーさんに報告してなかったね。


「おお!バッファローの生息地か!!そこに行けば大量にいるのか?」

「デカい草原にバッファローの大群がいた。他の冒険者の姿も無かったし、欲張らなければ狩り尽くすなんてこともあるまい」

「素晴らしいじゃないか!よし、馬車のことは任せておけ!」

「クーヤが依頼した道具もジャーキー作りには必要不可欠だ。両方とも重要だから、優先順位は同じくらいだと思ってくれ」

「わかった。ジャーキー工房も建てなければならんようだし、かなり忙しくなりそうだな・・・」

「このガキが絡んだ時点で地獄行きなのは覚悟の上だろ?」

「ワッハッハッハッハッハ!まあな!!だが見返りも大きい。商売人なら仕事があるうちが華よ!」

「だな!」


 悪そうなお兄さんも最近は商売に目覚めたようで、ベイダーさんと分かり合っているようです。これで更に貧民街スラム計画までもが発動されたら、街全体が活性化されそうな予感がしますよ!



 ガチャ


 社長室のドアが開き、ライガーさんが部屋に入って来た。



「随分と社長室が混んでるな。大勢でどうした?」


「ライガー、いい所に来た!」



 ベイダーさんが、ライガーさんに、ボク達から受けた依頼の内容を説明した。



「ふむ。その二つは最優先で作るとして、問題はジャーキー工房か」

「少し考えが甘かったようだ。食品を取り扱うわけだから、特に衛生面で気を使わなければならないのは当然だよな。クーヤに言われて反省したぞ!」

「今までそういう仕事をしたことが無かったからな。確かにジャーキー専用の建物が必要だろう。清掃員も雇う必要があるな」

「掃除くらいならば、孤児院の子供達を雇えばいいのではないか?」

「床の掃除くらいならそれでもいいが、まあどちらにしてもジャーキー職人を育成しなければならないし、力仕事が出来る人材も募集する必要があるだろう」



 悪そうなお兄さんの黒眼鏡がキラリと光る。



「待った!雇うのは貧民街スラムの住人でも構わないか?」



 それを聞いた全員がほっこりした。



「「良い奴だ!」」



「だから違うっつってんだろ!!俺には少しでも街を良くする責任がだな・・・」



 何度も言いますが、アナタは間違いなく良い人なんですって!

 

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