第126話 今回は視点がぐるぐるします

 

 ―――――東門を守る悪そうなお兄さん視点―――――




 ドゴーーーーーーーーーン!



 ガキが置いて行ったカロリーゼロの拳で2体の魔物が吹き飛んで行った。



「うおおおおおおおお!カロリーゼロ滅茶苦茶つえーーーーーーーーー!!」

「凄いな・・・。確かにこいつぁ守護神だ!」

「アレが後ろに3体も居るってのがこれほど頼もしいとはな!」

「よしッッ!俺らも負けてらんねえぞ!!」


「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」



 ・・・マジでこれなら東門を守り切れるかもしれねえ。



 カロリーゼロが強いってのは知っていたが、重要なのはその圧倒的存在感だ!


 もし後ろを守るのが普通に3人の巨漢だった場合、ハッキリ言ってそこまで頼りには出来ないが、カロリーゼロはデカくて強いだけじゃなく、頑強で疲れ知らずだ。


 たとえ10体の魔物に襲われようとも、悲鳴一つあげずに黙々と殴り倒していくことだろう。あの防壁のような身体が破壊されるその時まで。


 冒険者数人で攻撃し続けても長期戦必至なあのカロリーゼロが3体だぞ!?

 そんなのがバックに付いてりゃ、味方の士気だって爆上がりだ。


 正直、こうも優位な状態で戦えるとは想像出来なかった。


 まだスタンピードが始まって一日経過したに過ぎないが、おそらく俺らはココを守り切れるだろう。あのとんでもねえガキがこの街にいたってことに感謝だな!



「多少の魔物に抜けられても後ろにはカロリーゼロが3体いる、故に東門が突破されることは無い!焦らず目の前の魔物を一体ずつ確実に倒せ!!」


「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」






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 ―――――南門を守る冒険者B視点―――――




「なんか思ったより楽勝じゃね?」

「そりゃ南門だからな。魔物のスタンピードは北から来てんだから、こっちに魔物が流れて来るのはもう少し先なんじゃないか?」

「結局ギルマスの読みは正解だったな。上位ランクの冒険者がほとんど西門に行っちまったから、正直ちょっとブルってたんだけどさ」

「まあな。しかし東門が心配だ・・・」

「いや、貧民街スラムの連中にも強いのは結構いるぞ?アイツら組織の縄張り争いで毎日殺し合いとかしてんだから、弱かったらやってられんだろ」

「敵対組織同士じゃ団結なんて無理だと思うが?」

「そりゃまあな~。でも街が壊滅したら敵も味方も無くなるんだから、そこは協力してもらわないとよ・・・」



 平和ですな~。


 昨日はボチボチ戦闘もあったんだけど、その時の負傷者も治療して復帰したから、南門は最初の状態と変わっとらん。


 ここまで余裕だと他の場所に行った方がいいような気がしてきますよ。



「うわっ!魔物がごっそり来やがった!!」



 なんですとー!?

 え~と、1,2,3,4・・・。



「1,2,3、4,」

「いや、お前数えるの遅すぎだろ!!どう見ても100体以上いるじゃねえか!」



 ・・・・・・しゃべらんで良かった。



「反対側からも来たぞ!全員気合入れろ!!」

「嘘だろ!?」

「馬鹿野郎!これくらいでビビッてどうする!?他んとこはこの数倍の魔物と戦ってんだ!!」

「そ、そうだ!俺達は強い!!」

「オラ、この戦いに生き残ったらハナちゃんと結婚するだよ」

「もうすぐ子供が生まれるんだ。その子の為にも頑張らねえとな!」

「絶対一緒に生きて帰ろうぜ!そして酒でも酌み交わそう!」



 なんかみんなの会話を聞いてたらやれる気がしてきたぞ!今日は体調も良いしな。

 よ~し、がんばるぞ~!






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 ―――――北門を守る兵士A視点―――――




 魔物によるスタンピードが始まって丸一日が経過した。


 初日は士気も高くて、味方の被害も最小限で魔物の大群を食い止めることが出来たんだけど、魔物は暗くなったからといって攻撃の手を緩めたりはしない。


 止まぬ襲撃に怪我人の治療も追いつかず、翌日の戦闘に備えて眠っていた兵士までもが駆り出される事態に陥り、夜が明ける頃には400の兵を失っていた。



『お前らしっかりせんか!どいつもこいつも腑抜けた戦闘をしおって。伯爵閣下の顔に泥を塗るつもりか!?もっと意地を見せてみろ!!』



 魔道具で声が増幅された『ペペルコプ子爵』のバカデカい声が前線に響き渡った。



 ガギン!


「うっぜえええーーーーーー!俺らの士気が低いのは、一日中あの声を聞いていたせいでもあるんだぞ!!」


 ゴシュッ!


「誰かあの馬鹿子爵を黙らせろ!疲れてるのに気が狂いそうになる!!」


「一人だけ安全な場所に居て、ただ後ろで喚いてるだけじゃねえか!俺らのカロリーゼロを返しやがれ!!」


 バキッ!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


「くっ、待ってろ!今助ける!!」



 ギンッ!


 そうだよ!守護神さえ健在ならば、こんなに苦戦することなんて無かった!

 アイツが来たせいで全てが台無しだ!!


 ゴギン!


 伯爵様は何故あんなゴミ野郎に最前線なんか任せたんだよ!?

 子爵だか何だか知らねえが、ドサクサに紛れてぶっ殺してやる!!



『ボヤボヤしてないでもっと本気で戦え!!お前らが死ねば家族も全員死ぬんだぞ!ほら、気合だ!根性だ!らっせーらっせーオオオオオオオーーーー!!』



「「うるっせえええええええええええええええ!!」」



 ぶっ殺す!!

 

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