第127話 緊急事態
魔物のスタンピードが発生して丸一日経った。
魔物の攻撃は夜中であろうとも止むことは無く、むしろ夜の方が活性化されて攻撃が激しくなり、朝日が昇るまで持ち堪えるのが本当に大変だった。
暗くなってからは、光魔法で照らされてはいたけど視界が悪くて本当に苦労した。
そして朝になると魔物の襲撃が緩んだので、タマねえと入れ替わりで少し寝ることにして、たった今目覚めた所です。
「おはよ~」
パチンコ玉をヒュンヒュン投げていたタマねえがこっちを向いた。
「おはよー、でももうお昼だよ。たぶん3時間くらい寝てた感じ」
「3時間か~、見た感じ西門はまだ大丈夫そうだね」
「うん。クーヤが寝てたから節約して使ってたけど、もう玉が無くなりそう。ドル箱交換して」
「はいはーい」
残り50玉くらいにまで減っていたドル箱を一旦消して、1500玉に復活させた。
「これでタマはあと10年戦える」
「いや、そんなにスタンピードが続いたら街が持たないから!」
しかしそうか、ボクが寝ているとタマねえも止まってしまうんだな。スタンピードが何日続くのか知らんけど、睡眠は小刻みにした方が良いのかもしれない。
「じゃあ今日も頑張りますかね~。今日は暗くなる前に少し仮眠しておこう!」
「オーーーーー!」
アイテム召喚で出した小さなふわふわカーペットのお陰で身体は痛くないけど、子供に3時間睡眠はちょっとキツいな。
でも街がこんな状態なんだから、ここは踏ん張りどころだ。
全てが終わってからいっぱい休めばいい。
そして今日も防壁の上から冒険者達を援護し続けた。
************************************************************
パチッ
浅い眠りから目覚めて周囲を見渡すと、寝る前と全く変わってなかったので、とりあえず一安心。
「おはよ~」
タマねえが振り向く。
「おはよー。ドル箱交換して」
「あいあいさ~」
ドル箱を交換しながら状況を確認すると、ボクは2時間眠っていたらしいけど何も異変は無かったと伝えられた。ちなみに現在は昼前らしい。
「じゃあ今日も頑張り、ん?ちょっと待って!スズメちゃんが・・・」
「ん?」
スズメちゃんのカタコト報告で、とんでもない事実を伝えられる。
「・・・・・・北門が総崩れだと!?」
「えええええええええええ!?」
深夜の猛攻は何とか耐えたみたいだけど、朝の段階で怪我人ばかりが戦ってるような惨状だったらしく、そしてとうとう限界が来たらしい。
「北区の貴族街に魔物が雪崩れ込んでるって・・・」
「大変だ!!」
どうする!?この情報を掴んでいるのはおそらくボクだけだ。
北区はかなり広いから、ここまで報告が届くのに結構時間がかかりそう。
一刻も早く冒険者達に知らせないと手遅れになるかもしれない・・・。
「タマねえ!レオナねえが戦ってる魔物に攻撃しまくってくれる?そしたらこっちに気付くと思うから、身振り手振りで近くに来るよう伝えて欲しいんだ」
「わかった!」
タマねえがパチンコ玉を投げまくると、レオナねえと戦っていたデカい魔物が倒れるのが見えた。しかし近くには他にも魔物は数体いるので、ボクもカブトムシを飛ばしてそれらを倒していく。
援護射撃に気付いたのだろう。レオナねえがこちらを振り返る。
「こっちに気付いた!」
「レオナねえ!こっちに来てーーーーー!!」
迫り来る魔物を何体も倒しながら、タマねえと二人でこっちに来いってジェスチャーを頑張っていると、さすがに変に思ったのかレオナねえがこっちに走って来た。
「おいクーヤ!!そんな所で何やってんだよ!此処は危ないから帰れって!」
「レオナねえ、大変なの!!北門が突破されて街に魔物が雪崩れ込んで来た!!」
「はあ!?なんだってーーーーーーーーーー!?」
「これは間違いない情報だから信じて!!ボク達はパンダ工房に向かうから、どう動くか急いで冒険者達と話し合って決めてほしいの!」
「・・・わかった!母さん達のことは任せたぞ!!」
「まかせて!!」
西門も守らなきゃならないから、必要最低限の人数を残して街中へ散って行くような感じかな?まあその辺は百戦錬磨であるギルマスの判断に期待しよう。
「タマねえ!急いでパンダ工房に向かうよ!!」
「うん!」
ひょいっ
一瞬でタマねえの脇腹に抱えられ、防壁上をダッシュ。
そのまま速度を落とすことなく、防壁の隅にある階段を駆け下りて行く。
「にょわ~~~~~~~~~~~~~~~~!!怖い!これ怖いって!!」
「しゃべってたら舌噛むよ?」
そしてジェットタマねえは、脇目もふらずパンダ工房へと駆け抜ける。
「にょわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
◇
瀕死状態でパンダ工房へ到着すると、入り口でぺち子姉ちゃんが見張りをしているのを発見。
「ししょーにゃ!」
「ぺち子姉ちゃん緊急事態だ!北門が突破されて魔物が街に攻め込んで来た!!」
「にゃ、にゃんだってーーーーー!?」
「ここを守る為にゴーレムを出すから、みんなに聞かれたら『パンダ工房の守護神だ』って伝えてほしいの!ボクが出したってのは内緒だよ?」
「おお~~~~!カロリーゼロが守ってくれるにゃか!わかったにゃ!!」
「それだと絶対クーヤの仕業だってバレるよ?『街の守護神』にした方がいい」
「たしかにパンダ工房だけ守るんじゃ関係者って言ってるようなもんか。じゃあ『街の守護神』で!」
「わかったにゃ!」
北門の守護神だったのに馬鹿貴族のせいで倒されてしまったゴーレムを3体召喚し、パンダ工房を守るように配置していった。
ショタの召喚獣だってことが正直もう隠しきれないような気もしてきたけど、家族にバレたらどうなるかわからないんだ。ボクはギリギリまで粘りますよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます