第125話 スタンピードの始まり

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!



「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」



 魔法使い達による複合の大魔法を皮切りに、雄叫びを上げながら冒険者が魔物の群れに飛び込んで行く。



「くそッ!レオナねえがどこにいるのかわかんないぞ!」

「大丈夫、タマには見えてる。中央よりこっち側で暴れてる」

「おお、こっち側にいるのか!」



 冒険者が突撃したので、防壁上の中高生達も魔法を撃ち始めた。

 魔法が味方に当たらない様に、その奥や周囲の魔物を狙ってるみたいだな。



「そろそろ移動する?」

「もうちょっとだけ待って。生徒の後ろにいる教師達が全然余裕な感じだから、子供がフラフラしてたら防壁の下に連れて行かれそう」



 急いで援護に参加したい気持ちはあるんだけど、まだ全員余裕がある状態だから、ボクとタマねえが参加していなくとも誤差の範囲だしね。


 隠れているので防衛戦に参加すら出来ず、それから1時間ほど隅っこで傍観した。



「先生達も必死になって来たよ」

「よし、そろそろ動くよ!」



 隠れ蓑にしていたシートから這い出て、必死に援護射撃を続ける生徒たちの後ろを駆け抜けて行った。



「はあ?なんで子供が走ってるんだ?」

「なんだって!?ここは遊び場じゃねえぞ!!」

「右から魔物が来てるぞ!子供に構ってないでアレを食い止めるぞ!」


「「はいッ!!」」



 防壁の下に連れ戻されるピンチを乗り越えながらレオナねえ達の近くまで移動し、防壁上の空いているスペースに陣取った。



「よし!すごく良い場所だぞ!」

「クーヤ、早くアレ出して!」

「あいよーーー!ドル箱召喚!!」



 タマねえの足下にドル箱を出した。



 ちなみにドル箱ってのは当然アイテム召喚で手に入れたヤツなんだけど、これはパチンコ屋さんで玉を入れるのに使うあのドル箱なのです!


 ドル箱の中にはパチンコ玉がギッシリ詰まっており、たぶん1500玉くらい入ってるんじゃないかな?


 当然ながらアイテム召喚でこれが出て来た時は、『ココじゃ換金とか出来ないですから!!』と怒涛のツッコミを入れましたとも!


 しかし冷静に考えると、パチンコ玉って実はかなり凶悪な武器になるんですよ。

 11ミリという大きさで、しかもそれなりに重量があるのがヤバい。


 タマねえほどのパワフルな人が全力でコレを投げれば、威力はスナイパーライフル級なのです!まさかの凶悪スナイパー爆誕ですよ。


 この日の為にタマねえはパチンコ玉を投げる特訓をしていたんだけど、今や百発百中といった命中率になっており、近距離攻撃も遠距離攻撃もこなすデンジャー少女になってしまいました!


 普通なら玉を使い切ってしまえばそこで終了なんだけど、恐ろしいのは無限ドル箱になったこと。すなわち、玉が無くなっても一瞬で補充出来るのだ!


 どこかのパチンコ屋で、ハゲ散らかしたおっさんがフィーバーさせて玉がいっぱいになったドル箱が床の上に置いてあって、それがアイテム召喚で呼び出されたと思うんだけど、コレは本当にハゲ散らかしたおっさんに悪いことをしたな。


 間違いなくおっさんぶちキレて、店員と揉めてるよ・・・。



 ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン



『ゴギャアアアアアアアアアア!!』



 レオナねえ達の邪魔をしないように、タマねえは少し離れた魔物にパチンコ玉を投げつけているんだけど、命中した魔物が酷いダメージを受けているのがわかる。


 マジで凄腕スナイパーです!!ちょっとヤバ過ぎませんかね?


 とか言いつつクーヤちゃんもカブトムシを飛ばして、似たようなことをやってるんですけどね~。



 ブブブブブブブ



『グガアアアアアアアアアアアアアア!!』



 スナイパーコンビの活躍は目覚ましく、生徒達の通報によって、こんな危険な場所に子供達がいるのを注意しに来た教師ですら完全に黙らせた。


 周りの会話を聞いた感じ、クーヤちゃんがガジェムを飛ばしてることには気付いてないみたいだな。


 タマねえと一緒に鉄の玉を投げてるように見せかけたりしてるから、生徒達にもそう認識されてるっぽい。


 切り札は隠しておきたかったので作戦大成功です!まあそれはそれでクレイジーショタなんですけどね・・・。



 そんな感じで次から次へと襲い掛かって来る魔物を倒していると、レオナねえ達が戦っている姿が見えた。



「レオナねえ達、やっぱすげーーーーーーーーーーーーーー!!」



 この前のライガーさんによるポレフィータ討伐の時に、レオナねえ達が危険な魔物を何体も倒していたのを見て強いのは知っていたんだけど、実際に戦ってる姿を見ていなかったのもあって、ボクはまだ彼女達の強さをわかってなかったみたい。


 レオナねえはバリバリの前衛のようで、大剣を手に魔物の群れに斬り込んで行く。

 それをアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんが援護する形だ。


 ナナお姉ちゃんは賢者なので魔法で援護しているんだけど、アイリスお姉ちゃんが弓を使うのは予想外だったかも。


 しかも敵によっては弓を槍に持ち替え前衛をもこなす、ユーティリティープレイヤーなのだ。スポーツじゃないけどさ。


 周りの冒険者と比較しても一体一体の魔物を倒す速度が圧倒的なので、ギルドでも上位のランクに位置するチームなんだと思う。


 これなら彼女達の心配はいらないのかもしれないな。でもサポートは続けるよ!



 ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン



 ただ一番凄いのは、隣でパチンコ玉を投げまくっているこの娘なんですよね。


 ボクのカブトムシの方が威力は上なんだけど、一回一回の加速に時間がかかるので、魔物を倒す速度はタマねえの方が遥かに上回っているのです!



 ドル箱少女やべーーーーーーーーーー!!

 

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