第120話 ゴスロリメイド服
制服に着替えるため、隣の部屋に行っていたみんなが社長室に戻って来た。
「おおおおおおおおおおーーーーーー!みんなすっっっごく可愛い!!」
ゴスロリメイド服を身に纏った少女達は、着替える前と雰囲気が一変していた。
可愛い服に着替えただけで女性ってこんなに変わるんだね!!
前にリリカちゃんがショタからマウントを取った時に、ティアナ姉ちゃんが6歳になったばかりって言ってたけど、基本的にこの世界の女性達は誰も自分の年齢を教えてくれない。
でも面接の時に孤児院の院長先生が最年長でも13歳とか言っていたので、目の前にいる女の子達は10歳から13歳までの年齢ということになる。
ラン姉ちゃんは学校に通ってないからおそらく19歳前後だと思うんだけど、同じ制服を着ると『つるぺた』だから同世代の女の子にしか見えないのです!
「今一瞬ムカッとしたんだけど、何か変なこと考えなかった!?」
「『つるぺた』だから周りと同世代の女の子に見えるなんて全然考えてません!」
「やっぱりそんな事を考えてたのね!!」
ピコン!
「にょあっ!!」
最近無限アイテムとなったピコピコハンマーで、頭をピコン!と叩かれた。
なんかすごく気に入ったらしく、ラン姉ちゃんに強奪されてしまったのです!
能力をツッコミに全振りしてるような人なので、似合い過ぎててヤバイです。
非常に危険なアイテムを渡してしまった気がしますよ!?
「けど本当にみんな見違えたよ!!これで馬車を売ったら、ハゲ散らかしたおっさん達もみんな買わずにいられないんじゃない?」
「なんでハゲたお客さんが前提なのよ!!」
「「あははははははははははははは!!」」
ゴスロリメイド服を着飾った女の子達の笑顔が眩し過ぎます!
あのままスラムの適当なお店とかに就職していた場合、こんな綺麗な服を着ることなんて一生無かったかもしれないわけで、それこそ運が良かったの一言だと思う。
ベイダーさんが職人を多数募集していて、しかも口が堅い人材を求めていた。
そこで関係者であるボクが目を付けたのが孤児院だった。
先に就職をした子供達がしっかりと貢献すれば、孤児院に残された子供達にも道が開けるのだ。そういう背景があるので、彼らはベイダーさんを裏切らない。
それは目の前で笑っている女の子達も同様で、彼女らにも『頑張らなきゃ!』って想いが強くあったハズ。
ここで実力をつけて、孤児院に残された女の子達に道を示して欲しいものだ。
手に入れた幸運を自分らだけで終わらせちゃダメだ。皆で分かち合うのです!
気が付くと、いつの間にかみんな社長室に置かれている姿見の前に移動していた。
後ろを向いて振り返ったりと、クルクル回っていて実に微笑ましい光景です。
「何人もの女の子達が着ると、本当に可愛いなんて生易しいレベルじゃないわね」
「こうなったらもう、ウチの会社の従業員も可愛い制服で揃えるしかないよ!羨ましくて血の涙が出て来そうだし!」
「こんなの見たら制服の注文が殺到するんじゃない?その前に揃えとかなきゃ!」
笑顔の女の子達を見て、クリスお姉ちゃん達にも色々と思う所があるようだ。
「男性用の制服は作らないの?」
シェミール三人衆が後ろを振り向いた。
「この可愛い制服を男性用にするってこと?」
「たしかにクーヤちゃんが着れば絶対可愛いと思うけど!」
「何それ!見てみたいんですけど!!」
「『男の娘』になるつもりは一切ないっスーーー!!そうじゃなくて・・・」
「オトコノコ?」
「あ~、えーとですねえ・・・」
うっかり日本語をしゃべってしまった。この癖は直さないとなぁ。
この世界の言葉で伝えるのにちょっと苦労したけど、誤魔化せる流れじゃなかったので、『男の娘』の説明を頑張った。
「女装趣味の男性がいるとは思わなかったわ!!」
「いや、でもわかるかも!!だってこんなに可愛い服なんだよ!?」
「可愛い顔をした華奢な男の子に着せてみるのも面白そうね・・・」
イカン!
この流れは腐女子が誕生する前兆だ!!
「それは置いといて!ボクが言いたかったのは服の話です!例えば貴族に仕える執事さんが同じ制服で揃えたりしないのかなって」
「ああ、それならたぶんどの貴族屋敷でもやってるわよ」
「でも貴族は贔屓にしてる店でしか注文しないから全然ダメね」
「男性服ってホント売れないよね~~~」
そうだったのか・・・。
この世界の男性って、良い服を着てモテたいって思わないのかな?
「もったいないな~。飲食店の従業員を格好良い男性ばかりにしてさ、みんな白いシャツに黒いズボンで揃えて、全員が爽やかな笑顔で丁寧な口調だったら、絶対女性客で埋まると思うんだけどな~」
「そんな店があったら、わたし毎日そこでしか食べないよ!」
「常連になるに決まってるし!!」
シェミールの店員二人はすごい食いつきだけど、クリスお姉ちゃんはそんなに興味が無いらしい。
「やっぱり難しいわね。そもそも男性って接客業をしないもの。男性用の素晴らしい制服を作った所で、それを欲しいと考える人が少ないのよ」
なるほど。
興味が無いんじゃなくて、有り得ないって考えてたのね。
ガチャッ
「おっと、お客さんが来ていたのか。ん?クリスティーネじゃないか。どうしてこんな所にいる?」
社長室に入って来たのはライガーさんだった。
「制服が完成したから届けに来ました!」
「なるほど、クーヤが注文したとか言ってたヤツか・・・。って、今ラン達が着ている服のことか!!ほーーーーーーーー!えらい可愛らしい服だな!!」
マッチョなライガーさんの目にも可愛らしく映るってことは、誰が見ても衝撃を受けること間違い無しだろう。
ライガーさんが社長席まで移動し、椅子の上にパンダを出した。
「エ?・・・ちょ、ちょっと!そこに何かいるんですけど!!」
「何アレ!?でっか!こんな動物初めて見た!!」
ライガーさんが振り返った。
「何ってウチの社長だぞ?クリスティーネから聞いてないのか?」
「「社長ですってーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
シェミール店員二人の声が社長室に響き渡った。
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