第114話 ライガーvsポレフィータ

 

「アイリス達とは西門で合流だからな」

「わかった。じゃあ行って来るぞ!」

「リリカちゃんとクーヤちゃんは良い子でお留守番してるのよ~?」


「あい!」

「はーーーーーい!」



 とうとうライガーさんがポレフィータ討伐に出撃した。

 そして予想通り、クーヤちゃんはリリカちゃんと一緒にお留守番だ。


 まあ子供を危険な場所に連れて行くわけがないし、こればっかりはしょうがない。


 しかし完全に予想外だったのが一つ。

 お母さんまで一緒について行くことになってしまったのだ!


 戦闘には参加しないんだけど、ポレフィータとの闘いで傷ついたライガーさんを治療する役目らしい。


 冒険者ギルドからクレリックを一人連れて来るって話もあったんだけど、パンダちゃんの情報が漏洩する可能性があるからそれは却下されたみたいだ。


 ってことで、情報が洩れる心配のないお母さんが抜擢されたわけです。



 ・・・うーむ、これは困ったぞ。



 こっそり尾行する予定だったのに、リリカちゃんを見てなきゃダメってことになってしまいましたよ!?


 家に幼子を一人残して勝手なことをすれば、信用問題に関わるからなあ・・・。


 討伐メンバー全員の安否はめっちゃ心配だけど、こうなったらもうレオナねえ達を信じるしかない。


 でも念の為に、庭へ出て召喚獣のスズメちゃんを空に放った。

 ライガーさん達を空から尾行し、危機に陥ったら知らせてもらうのだ。


 とりあえず今出来るのはこれくらいだ。

 大丈夫!みんな強いんだ。信じて吉報を待つしかない!



 戦場に息子を送り出す母親の気持ちってこんな感じなんだろな・・・。


 実際はプロレスラーみたいなおっさんを送り出す5歳児だけど。




 ◇




 現在クーヤちゃんが所持しているファミファミのゲームは全部で33本。


 でもリリカちゃんは好きなゲームを繰り返し遊ぶのが好きなので、実はまだほとんど手付かずだったりする。


 しかしそれは悪いことじゃない。


 一つ一つを骨の髄までしゃぶり尽くすやり方ならば、限りあるゲーム達を長く遊べるからだ。


 でも今日はショタが退屈だったのもあり、『ボンバーママン』というゲームで遊ぶことになった。


 これもなぜか主役は一家のママさんで、敵を爆弾で倒していくゲームだ。

 実にクレイジーなママさんである。


 画面には壁が散らばっており、その壁を爆弾で壊せばそこを通り抜けられるようになるんだけど、たまに扉とかパワーアップアイテムが出て来る時がある。


 そして敵を全部倒してから扉に入ると1面クリアだ。


 アイテムを手に入れれば主人公も強くなるので、敵を倒すだけじゃなく、壁もある程度破壊しなければならない。


 しかしこのゲームの憎いところは、扉を攻撃したりタイムオーバーになったりすると、敵がわらわら出現して大変なことになるのだ。


 でもやる前から言っても絶対伝わらないので、リリカちゃんには細かい説明なしでゲームを始めてもらった。



 ドカーーーーーン



「おーーーーーーーーーー!なんかでたよ!?」

「それを取れば、黒い球が2個置けるようになるよ!」


 このゲームをやらせたボクが言うのもなんだけど、爆弾の説明をするのはなんかすごく嫌だったので、単に黒い球って説明したのだ。


 ちょっと教育に悪いゲームだったな~。

 でも魔法がある世界だし、深く考えることもないか・・・。



 そんなこんなでゲームを楽しんでいると、玄関の方からタマねえの声が聞こえた。



『ただいまー』



 ガチャッ



「あ、二人ともいた!」



 タマねえが子供達の方へ駆け寄って来た。



「おかえりーーー!」

「おかえりタマねえ!」

「何これ、新しいゲーム?」

「ボンバーママンだよ!」

「面白そう!」


 あ、そうか!

 リリカちゃんのことをタマねえに任せれば、ライガーさん達の所に行けるぞ!


「ねえねえタマねえ、ちょっとこっちに来て!」

「ん?」



 リリカちゃんに聞こえないよう自分の部屋に移動し、タマねえにライガーさんが出撃したことを説明した。



「タマも見に行きたいけど、リリカを一人にはできないからクーヤに任せる」

「ありがとうタマねえ!じゃあボクはすぐにでも出発するから、リリカちゃんのことお願いね!」

「クーヤも気を付けて!」

「あい!」



 急いで家の外に出て、西門に向かって走り出した。

 召喚獣に乗るまでもなく、ここは西区だから西門まではそんなに遠くないのだ。


 走ってる最中、スズメちゃんに西門まで戻ってくるよう指示を出す。

 召喚獣と離れていても、召喚士の特性で会話することが可能なのです。


 スズメちゃんは知能が低いのか言葉がカタコトなんだけど、刻んで質問することで状況が把握できた。ライガーさんは無事で、ポレフィータと戦ってる最中らしい。



 そして西門に辿り着き、あひるポンチョを脱いでいたおかげで衛兵にバレることなく、通行人に紛れて門の外に出ることに成功。


 人気のない場所まで移動してからメルドアを召喚し、ちょうど戻って来たスズメちゃんの案内でライガーさんの所へと向かった。






 ************************************************************






 現場に辿り着いたショタの目に映ったのは、ポレフィータと殴り合っている筋骨隆々の男の姿だった。


 初めてみる鎧姿で、手にはガントレットらしきモノを装着している。

 しかし剣は持っておらず、拳のみで魔物と闘っていた。



「ライガーさんすげーーーーーーーーーー!!」



 怒れるポレフィータの攻撃を弾き、鉄の拳を顔面に叩き込む。


 戦闘職のようなスマートな戦い方ではないけども、だからこそ見る者のハートを熱くさせる。手の指先が勝手に震えて来る。


 レオナねえ達も相当頑張ったらしく、辺りには魔物の死体が8体ほど倒れていた。

 お母さんも怪我はしていないようで、ライガーさんの戦いを見守っている。


 ・・・ショタが来る必要なんて無かったな。


 実際に戦ってる姿を見たわけじゃないけど、絶対みんな強いよこれ!倒れてる魔物の中にライオンと黒豹がいるもの。ウチの主力ですよ!?


 これ以上近付くと気付かれるから、遠目でしか見られないのが本当に残念だ。



 ―――その戦いは長時間に及び、決着がついたのは、ショタの到着から1時間も後のことだった。



 ライガーさん渾身の一撃が側頭部に命中し、ポレフィータがゆっくりと倒れる。


 そしてピクリとも動かなくなった。




「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



「「っしゃああああああああああああああああああああああ!!」」




 ライガーさんの勝利だ!!


 そして彼は思い出したように魔物に近付き、一言呟いた。



 ―――――力尽き倒れているポレフィータの身体が消える。



 よしッ!アレは間違いなくストック成功だ!

 やったねライガーさん!!



 さてと・・・、みんなにバレないうちにこっそり家に帰ろっと! 

 

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