第44話 トースター
目覚めると一人だった。
どうやらアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんは仕事に行ってしまったみたいだ。
・・・ということは、パーティーを組んでいるレオナねえも一緒だろう。
まだ冒険者ギルドの話は一切聞いていないので、朝早くからどこへ何しに行ったのかはわからないけど、やっぱ魔物を倒しに行ったんだろな~。
正直めっちゃ憧れる職業だ。
俺も異世界に来たからには、普通の就職より冒険をしてみたい。
でもこの世界では召喚士って不遇職みたいだから、メンバーを募集してる冒険者パーティーがあってもお断りされる可能性があるな。
アイリスお姉ちゃん達のパーティーに入れてもらうにしても、役に立たなかったら申し訳ないから、やっぱそれまでに強くならんとダメだよな・・・。
―――リビングに行くと、今日もみんな朝からバタバタしていた。
「クーヤちゃんおはよ~!」
「おはよーーーーー!!」
お母さんに挨拶を返してから洗面所で顔を洗った。
食卓に着いて朝食のパンを手にした時にふと思い出した。
たしかトースター持ってるじゃん!
「ねえお母さん!お店のパンって、この丸いのしか売ってないの?」
「ん~?大きいのもあるわよ~?」
お母さんがパタパタと歩いて行き、大きなパンの塊を持って来た。
「あっ、コレコレ!!」
「小さなパンじゃ足りなかったかしら~?」
「えーと、そうじゃなくてー、これを薄く切って焼きたいの!」
「・・・え?焼く??」
「トースター召喚!」
シュッ!
テーブルの上にトースターを召喚し、お母さんに使い方を説明した。
「なるほど~!それはお母さんも食べてみたいわ~!この穴に入る大きさに切ればいいのよね~?」
「うん!!」
お母さんがパンの塊を持ってキッチンに行き、トースターに入る大きさに切って来てくれた。
「ココに2枚入れてからレバーを下げると、勝手に焼いてくれるんだ!」
「この穴に入れればいいのよね~?」
お母さんがパンを入れたので、次からは自分一人でも使えるようにとレバーも下げてもらった。
二人でトースターを見つめていると、パンの焼ける良い匂いがしてきた。
「あら~!良い匂いがしてきたわ~!」
ガコッ!
良い具合に焼けたパンが飛び出した。
「まあ!!焼けたら勝手に飛び出すのね~!」
「うん!簡単でしょ?」
お皿に一枚ずつ入れて、バターとジャムを塗っていく。
「こっちはお母さんの!」
「あら~!お母さんの分も作ってくれるなんて、クーヤちゃんは優しいわね~!」
テーブルで二人向かい合い、パンを口に入れる。
焼いたパンを口に入れたお母さんの目が輝き出した。
「美味しい!!」
「うまーーーーーーーー!!」
魔法の世界だから、これくらいやろうと思えばすぐ出来そうな気もするけど、元々焼いてあるパンをまた焼くって発想が無かったのかもしれない。
お母さんと二人でパンをうまうましていると、洗面所にいたティアナ姉ちゃんがやって来て、食事をするためにテーブルに着いた。
「お母さんがもう食べてるなんて珍し・・・ん?なんかまた謎の道具が!!」
トースターを発見されてしまった。
「クーヤちゃんがね~、パンを焼いてくれたのよ~!」
「パンを・・・、焼いて??」
お母さんが、お風呂から上がったクリスお姉ちゃんの分とティアナ姉ちゃんの分のパンをトースターで焼いて皿に乗せた。
どうやらバターとジャムを塗るのはショタの役目らしいので、冷めないうちに急いで二人分塗りたくった。
「美味しい!!パンって元々焼いてあるのに、更に焼いて焦げ目をつけるともっと美味しくなるんだね!」
「サクサクして香ばしいわね!溶けたバターにジャムの甘さが素晴らしいわ!」
「レオナちゃん達にもご馳走してあげたかったわね~」
それはスマンかったっス!ショタが寝坊したばかりに・・・。
そしてクリスお姉ちゃんは仕事へ行き、ティアナ姉ちゃんが学校へ行った所でリリカちゃんが起きて来たので、みんなと同じようにパンを焼いてあげたらすごく喜んでいた。
◇
♪テレレッテテレレレン
あの屋敷では生きるのに必死だったから、常にやることがいっぱいで時間が足りないくらいだったのに、この家に来てからは基本やることが無い。
そうなると、自然にリリカちゃんとゲームをして遊ぶ流れになるのです。
「あーーーっ!やられたーーーーー!!」
「ねえリリカちゃん、別のゲームもあるからやってみない?」
「べつのげーむ?」
リリカちゃんはゲームを知ったばかりだからマリモだけで何日も遊べる感じなのだろうけど、残念ながら俺には何日もマリモだけってのは辛いのです。
マリモブラザーズを本体から抜いて、ママッピーを挿し込んだ。
なぜか一家のママが主人公で、屋敷から盗まれたアイテムを動物達から取り返していくゲームだ。
♪ズンテンテケテケテーテー
いきなり新しいゲームなんて無理だから、最初は俺がコントローラーを握り、リリカちゃんに遊び方を教えながらのプレイだ。
「ドアを使って泥棒をやっつけることも出来るんだよ!ほらこの光ってるドア!」
光るドアを開けると、謎の渦巻きが出て動物たちを吹き飛ばした。
「あはははははは!なにこれおもしろい!!」
ママッピーは、小さなキャラクターがいっぱい動くのとコミカルな音楽の効果もあって、他人のプレイでも目が離せなくなる良ゲーなのだ!
「あー、やられちゃった。次はリリカちゃんの番だよ」
「わわわーーー!ぴょーんってとんだーーーーー!!どうするのこれーーー!?」
「そこで左を押したら左にぴょんって飛び乗るんだよ」
「あーーーーー!!おちたーーーーーーー!!」
「ああ、えーとそれはね~」
最初は教えることが多くて大変だ!
それにしても朝から幼女とゲームして遊ぶとか、平和だな~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます