第140話 パンダ工房に帰る
明らかに大怪我をしているレオナねえも一緒に召喚獣に乗ってもらいたかったんだけど、アイリスお姉ちゃん・ナナお姉ちゃんだけ歩きじゃ可哀相だ。
なのでレオナねえ達三人を、冒険者達から見えない場所まで連れて来た。
「トナカイ3号4号5号召喚!」
ドラゴンを討伐した帰り道で拾ったトナカイ達を召喚した。
乗り物と言えば馬の方が一般的なんだけど、このトナカイは首の後ろの方まで角が伸びているから、5歳児が簡単に乗れるほど楽ちんなのです。角に掴まっていれば落ちないからね。
「はあ!?」
「嘘!?『シャンクル』が5体も・・・」
「もしかして私達も乗っていいってこと?」
「うん!タマねえとレオナねえが怪我をしてるから、早く帰ってお母さんに治療してもらわなきゃ!でね、裸馬に乗るのは大変だと思ってこっちにしたの。角に掴まるといいよ!」
三人が何か言いたそうにしていたけど、急いで怪我人の治療をしたいって考えてるのは一緒なので、冒険者らしい運動神経で全員シャンクルに飛び乗った。
クーヤちゃんの場合は、召喚獣に伏せてもらわなきゃ乗れませんけどね!
幾度かの戦闘で荒れ果てた貴族街を、南に向かって歩いて行く。
「さて、クーヤに聞きたいことは山ほどあるわけだが・・・」
その一言に、身体がビクッと飛び跳ねる。
「北門、いや、全ての門に『カロリーゼロ』を置いたのはクーヤだな?」
「記憶にございません」
「クーヤだな?」
「あい!」
政治家風に逃げようとしても無駄だったので、開き直った。
「怒ってるわけじゃねえぞ?そのおかげで街を守り切ることが出来たのは間違いねえんだから」
怒ってるんじゃなかったのか・・・。じゃあ何が言いたいんだろ?
「最初西門を防衛していた時、北門が抜かれたことをアタシ達に伝えただろ?」
「うん」
「おそらく召喚獣に偵察をさせていたから、その情報を知ることが出来たんだ。そしてタマと二人で魔物を倒しながら北門へと向かった。ここまではあってるか?」
「タマねえ大変だ!全部バレてます!!」
「だからさっきそう言った」
名探偵はここにいたッ!?
「そして北門に大量の『ウォーレヴィア』と『カロリーゼロ』を置き、二人は押し寄せる魔物の大群を突破して
うはっ。レオナねえ鋭すぎるだろ!!
ここまで完璧に読まれているんじゃ、もう隠し通すなんて無理だぞ。
「で、召喚獣からどんなヤバイ情報を仕入れた?」
ショタを見るレオナねえの目は真剣だ。
怒りとかそういう感情ではなく、街の未来を案じての質問。
ボクが何をやらかしたなどはどうでもよく、脅威となる存在を知りたがっている。
「・・・レオナねえが心配する脅威はもう存在しないよ」
「どういうことだ?」
「タマねえと二人で倒して来たの」
レオナねえ達の視線が突き刺さる。
その目は、『一体何を倒したんだ?』と言っている。
キョロキョロと周囲を見渡す。
「でもここじゃ言えない。万が一にも貴族に知られるわけにはいかないから」
「なぜそこで貴族が出てくる??」
「クーヤ、見せた方が早いかも」
は!?
タマねえは何を言って・・・ああ、そういうことか!
「タマねえの言う通りかも!見せながら説明した方が納得するよね」
「うん。森に行けば誰もいない」
「森じゃ無理かも。その奥の岩場がいいかな?しばらく誰も来ないだろうし」
魔物のスタンピード直後に狩りへ行く馬鹿はおらんだろ。
アホの子筆頭のぺち子姉ちゃんでも、さすがにそんな行動はとらない。
「ってことで答え合わせは明日!・・・いや、魔力がスッカラカンだから3日後くらいにしよう!」
「3日後?・・・それはわかったけど、本当に街はもう大丈夫なんだな?」
「今攻めて来ている魔物は全部倒さなきゃダメだよ?でも魔物が南下する理由がもう無くなったから、すぐ元の生活に戻れるよ!」
「そうか!」
レオナねえが、ふーーーっと息を吐いた。
アイリスお姉ちゃん、ナナお姉ちゃんも、ようやく笑顔になった。
「でも3日後に見せるって約束したことは、みんなには内緒だよ?」
「なぜだ?」
「知ってる人は少ない方がいいの。誰に打ち明けるかは3日後に決めよう!アイリスお姉ちゃんもナナお姉ちゃんも、このことは秘密だからね?」
「まだ何も見てないからさっぱりわからないけど、内緒ってのはわかったわ」
「うん。絶対誰にも言わないよ!何が出てくるのかすごく不安だけど!」
レオナねえ達に白状することになってしまったけど、家族全員に真相を隠したままってのも後味が悪かったので、これで良かったのかもしれない。
少なくともカロリーゼロを使役していることはもう隠しきれん。
どうやって倒したのか聞かれたら、なんて説明しよう?
カブトムシって、見せても大丈夫なのかなあ?
お化け屋敷で鉄板に刺さってたのを入手したのは事実だし、そこまで言わなきゃカロリーゼロを倒した方法の説明が出来ないよな。
とりあえず報告するのはそこまでにしとこう。
有り得んほど召喚獣を所持しているってことまでは、自分からは言うまい。
そんなことを考えているうちに、ボク達はパンダ工房に到着した。
「あーーーーーーーーー!ししょーにゃ!!レオにゃん達もおかえりにゃ!!」
「「ただいまーーーーーーーーーー!!」」
「今度は『シャンクル』に乗って登場するとは、流石ししょーにゃ!」
「母さんは工房の中だな?」
「さっきリカにゃんを抱えて工房に戻って行ったにゃ」
「わかった」
リリカちゃんを抱えて?
暇すぎて外に出て来てしまっていたのかな?
汚れたまま怪我の治療は出来ない。
ナナお姉ちゃんの魔法で、怪我人達が工房の前で体中の汚れと血を洗い流した。
そしてボク達は、ようやくパンダ工房へと帰還したのだった。
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