第153話 ハムちゃんの身体検査

 次の日、ハムちゃんハーレムの極楽っぷりに全員寝坊するというハプニングはあったものの、予定通りにメメトンゼロ狩りを頑張った。


 成果は丸々と太ったメメトンゼロ2体。昨日のと合わせると3体だ。


 ナナお姉ちゃんは『欲張り予告』をしていたのでもう1体狙おうと提案したけど、1日中森の中を歩いて疲れていたし、夜の森は危険だという理由から、まだ夕方前だったけど狩りは終了。テントに戻って来た。



「これより、ハムちゃん達の身体検査をします!」



 ワー パチパチパチパチ!



「召喚獣の身長と体重を測って、何か意味あるの?」


 タマねえが首を傾げているけど、そういう普通の身体検査じゃないですから!


「調べるのは身長とか体重じゃなくて、収納できる量と得意魔法だよ!」

「あ~~~、それなら重要!」

「だから解体せずにテントまで戻って来たのか!」

「でもサッと血抜きしただけだから、あまり時間はかけられないよ?」

「魔法を調べるのって時間がかかりそうじゃない?」

「えーと・・・、解体ってナナお姉ちゃんの水魔法の水じゃダメなの?」

「魔法の水って飲んでも美味しくないんだ。でね、お肉が魔法の水に包まれるとお肉の味も落ちちゃうから、解体では水魔法を使わない方がいいの」


 だから家でも洗濯くらいにしか水魔法を使わなかったのか!

 肉が血生臭くなったら色々と台無しだから、魔法の検査してる時間は無いな~。


「じゃあ急がなきゃですね!魔法は後にして、今は容量の違いだけ調べます!ハムちゃん全員召喚!」



 テントの周りに33体のハムちゃんが勢揃いした。



「「可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」



 お姉ちゃん達がフラフラとハムちゃんに近寄って行く。



「ハイ!もふってる時間は無いです!」


 その言葉でみんな我に返った。


「じゃあ一列に並んでください!」


 33体のハムちゃん達が一列に並んでる姿を見て、あまりの可愛さに鼻血が出そうになった。


「くっ、なんて破壊力なんだ・・・。お姉ちゃん達も暴走しないように!」


 お姉ちゃん達を見ると、案の定、顔を赤くさせながら鼻息を荒くしていた。

 とっとと始めないと長くはもたんぞ・・・。



「じゃあまずは赤いキミからね!メメトンゼロを収納してみてください!」


『チュウ!』



 こうしてハムちゃん達の身体検査がスタートした。




 ◇




 そして検査も無事終わり、急いでメメトンゼロの解体をしてテントに戻って来た。


 しかしメメトンゼロ2体ともなると結構時間が掛かってしまい、夕食もまだなのに辺りはもう真っ暗。


 でも全員腹ペコなので、ナナ姉ちゃんの光魔法に照らされながら、メメトンゼロの焼肉を堪能しました。


 無限化してあった焼き肉のタレで食べたんだけど、シチュエーション効果もあって異常なほど美味しかったです!






 ************************************************************






 一夜明けて今日は街に帰る日なんだけど、レオナねえ達に貸し出すハムちゃんを選ぶには使える魔法も重要ということで、今日は朝から魔法検査です。


 ちなみにハムちゃん達の容量なんだけど、ナナお姉ちゃんに紙を渡して表を書いてもらいました。今日は容量の右側のマスに使用魔法を追加記入してもらいます。



「え~と、キミは赤いから火魔法が使えるのかな?」


『チュウ!』


 正解らしい。


「じゃあそっち側に魔法を撃ってみて下さい!」



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!



「おおーーーーー火炎放射器ですか!結構威力がありますね」


『チュウ!!』


 今日は絶好調だと言っております。


「いやいやいやいや!ウチらと戦った時より威力が上がってねえか!?」

「あの時は確かファイヤーボールだったよね?ほとんど見えなかったけど」

「うん、こんなんじゃなかったと思う。っていうか無詠唱でこの威力・・・」


 はて?ボクの魔力を使ってるからパワーアップしたのかな?


「まあいいや。次のハムちゃんどうぞ~」


『チュウ』


「おーーーーーい!『まあいいや』の一言で終わりかよ!!」

「あの子はなぜ無関心なのですか!?」

「クーヤちゃんってテキトーよね~」

「ドラゴン戦で炎に慣れたのかも」



 赤=火

 青=水

 緑=風

 茶=土


 とりあえずハムちゃんの色は、こんな感じで魔法に対応していた。

 調べた結果、どうやら原色に近い方が魔法の威力が高いようだ。


 でも魔法が強い子は、収納できる容量が少ないということも判明。


 さっきの赤いハムちゃんの場合はメメトンゼロ1体分くらいの容量だったけど、ピンクはメメトンゼロ2体分の容量があるといった感じだ。


 そしてとうとう、昨日からずっと気になってたヤツが登場。



『チュウ!』


「ふむ、鳴き声は普通ですね。じゃあ魔法を撃ってみて!」



 バリバリバリバリバリ!



「おおーーーーー!思った通り、黄色は雷だったーーーーー!!」



 召喚獣リストの『ハムちゃん(黄色)』って文字を、別の名前に書き変えたくなる衝動に駆られたけど、強靭な精神力で我慢する。


 突然主人公が入れ替わり、今まで築き上げた地位を全て乗っ取られる可能性があるからな・・・。


 それに全身黄色だから頻繁に連れて歩くのは良くないだろう。クーヤちゃんと丸被りしていて非常に紛らわしいのだ。


 いや待てよ?似ているからこそ影武者として使えるかも・・・。

 なるほど、この子の使い方が見えた!!



 次に現れた子はハムちゃん(白)。

 そのすぐ後ろにも、真っ白ボディーで耳の先だけ黒い子が並んでいる。


『チュウ』

『チュウ』


 聞くと二人とも同じ魔法を使うようだ。

 身振り手振りしながら、『痛いのが治るのよ?』とおっしゃってます。


 みんなのように攻撃魔法じゃないのがコンプレックスみたいで、一所懸命アピールしているのがめっちゃ可愛いんですけど!


 いやいや、治癒魔法とか超有能ですから!!

 怪我はしてないけど、ボクに治癒魔法を掛けてもらうことにした。



 ホワワワ~ン



「ふおおおおおおぉぉぉぉぉ!何だかとても癒されますぞ~~~~~!!」


 よくわからんけど、とにかく気持ちいい!治癒魔法ってこんな感じなのね。


「クーヤ、もしかしてそれって治癒魔法なのか!?」

「そうだよ!」

「やっぱりそうなの!?凄い!凄すぎる!大当たりだよこれ!!」

「これだ!!この子を借りれば怪我をしても安心だよ!!」

「アルペジーラってやべえな・・・。アタシ達のチームに足りなかった回復要員の問題が一瞬で解決しやがった!しかも荷運びまで出来るんだぞ!?」



 ・・・冷静に考えると、とんでもないことになってません?


 レオナチームの強化もなんだけどさ、これって召喚しか出来なかったクーヤちゃんが、とうとう魔法までマスターしたようなもんだよね?

 しかも賢者やウィッチが使えない治癒魔法まで・・・。


 召喚士の秘められた潜在能力ポテンシャルってヤバすぎだろ!!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る