第8話 違う!欲しいのはそれじゃない

 

 ギーーーッ



「来たーーーっ!寝室だ!!」



 でも安心するのはまだ早いぞ!?


 壁を入念にチェックする。



 前は・・・、たぶんオッケー。左は・・・、よし!オッケーだ!!

 ということは必然的に右も後ろも大丈夫なハズ。


 ・・・よっしゃーーー!安全ゾーン来ましたーーーーーー!!



 やっと見つけたよ・・・、狙撃ポイントから外れてる寝室。


 あれから住めそうな部屋を6部屋くらい探したんだけど、空っぽの部屋で寝るのはちょっと厳しいし、ベッドがあっても壁に穴があったらアウトだし、なかなか条件に合う部屋が無かったんだ。


 まあ壁に穴さえ開いてない部屋ならば、別の部屋から毛布とかを持ってって寝るって手段もあったんだけど、寝室が見つかったんだから住むのはここに決定だ!


 ただ埃が凄まじいから、まずは部屋の掃除をしなきゃな。




 ◇




 別の部屋にあった掃除道具を持って来て、顔に布を巻いたにもかかわらずケホケホしながらも、何とか住める状態にはできた。


 布団を窓に掛けてバンバン叩いたんだけど、自分が窓から落ちそうになって結構危なかった。まあ1階の部屋なんだけどさ!

 しかしショタのコンパクトボディーは力仕事に向いてないね。


 この部屋を安全ゾーンとは言ったけど、正直心の底では安全だなんて思ってない。


 でも他に行くとこなんて無いんだから、昔のゲーセンでおっさん達に撃たれまくってたインベーダー役を頑張るしかねえんだよ!


 まあ死んだらそれまでの話だ。前世と違って俺はラッキーマンに生まれ変わったって話だからたぶん大丈夫だろ。当たらなければどうということはないのだ!



 しかし腹減ったなあ・・・。


 けどもう日が暮れてきたから、今から食い物を探しに行くのは自殺行為だ。

 今日はもう早く寝て、朝になったら食料探しの旅に出よう。


 あ、そうだ!

 この部屋にはランプがあったんだよな。


 ベッドの隣にあるテーブルの上に置いてあるランプを調べてみる。

 ランプっていうかランタンなのかなこれ?ぶっちゃけ違いがわからん。


 うーむ・・・・・・。


 ランプなんて使ったことないから、どうやったら点くのか知らんぞ?

 確か燃料を入れたりする場所があったような・・・。


 なんか見た感じ、そういうのが無いような気がするんだよなあ。

 ボタンが一つあるだけだ。


 わからん!とりあえずボタンを押してみっか。

 例えそれが自爆スイッチでも、そこにボタンがあるなら押さねばならぬのだ!


 ポチッ


 ホワ~~~ン


「おおおおおおっ!」


 なんかわからんけど、ランプが点いたぞ!!


 ってか、これはランプなのか?炎が揺れてるわけでもないし、電気スタンドみたいな刺すような明るさでもない。説明しにくいけど、優しい光って感じ?


 ・・・あっ!コレもしかして魔道具ってヤツじゃね!?


 フオーーーーーッ!異世界アイテム来ましたーーーーーーーーーーーー!!


 魔道具ってのは金持ちしか持ってないイメージなんだけどな。

 あ、そうか!この屋敷って金持ちが住んでたっぽいもんな。魔道具があっても不思議じゃないのか。


 待てよ?これを売ったらそれなりの金額になるのでは!?



 ・・・・・・言葉が通じねえよ!!



 ダメだ。


 言葉も話せないショタが魔道具を売りに行っても、たぶん騙し取られるだけだ。

 売買の交渉すら出来ないんだから、まったくもって話にならん。


『あら?なあに?私にくれるの?』


 こんな勘違いをされても魔道具を失うだけだもんな。

 相手に『これを買い取って欲しい』って伝えるのは、言葉ナシじゃ難しすぎる。


 はあ~、とりあえず魔道具を売るのは、言葉がしゃべれるようになってからだ。

 問題はそれまで生きていられるかなんだよなあ・・・。



 ランプを消して布団の中に潜り込んだ。



「おやすみなさ~い」






 ************************************************************






 目が覚めた。



 なんてこった・・・、まだ真っ暗じゃん。


 手探りでランプのボタンを押した。



 ホワ~~~ン



 くそう、早く寝すぎたか!

 こんな深夜に目覚めてどうすんだよ・・・。


 しかし喉が渇いたな、水飲みたい。

 そういや昨日から水も飲んでねえ。この屋敷に水道とかあるのかな?


 うーむ・・・。厨房に行けばあるかもしれんけど、たぶんあの大広間の奥にあるような気がするぞ。

 俺は水を飲むだけで、命を懸けたインベーダーをしなきゃならんの?


 何なんだよもう!!




 ◇




 起きてから1時間くらい経ったけど、二度寝ができないばかりか腹も減って来た。



 ホワ~~~ン


 寝るのは諦めてランプを点けた。



 喉は乾くし腹はグーグー鳴るしで、悲しみがどんどん怒りに変わって来る・・・。


 あのファンキー野郎は、なんで連絡寄越さねえんだよ!

 5歳の子供を言葉も通じない世界に一人で置き去りにするって、どう考えても有り得ねえだろ!!


 これのどこが大当たりなんだよ!?

 召喚士を満喫して来いだあ?楽しむ前に飢え死にするっつーの!!


 そもそもどうやって召喚すりゃいいんだよ?召喚獣なんてどうやって手に入れたらいいんだよ?少しくらい説明しやがれってんだ!


 つーか召喚獣なんていらんから食料くれよ!!



 ―――生前よく食べていたジャンクフードやラーメンなどが、次々と思い浮かぶ。



「何でもいいから食い物を召喚だ!俺は召喚士なんだろ?なんか出ろや!!」



 ・・・え!?



 突然目の前の空間が歪み、眩い光と共に四角い何かが出現した。



 ヴォン!



 そして光が消失し、そこには俺が良く知るアイツが鎮座していた。





「・・・・・・電子レンジじゃねえか!!」


 

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