第30話 リリカちゃん

 

「鉄板出ろ!・・・うおっ!!」


 ゴイーーーン!


 召喚した鉄板がこちら側に倒れて来たので何とか躱した。



「あ、別に逃げなくても消せばよかったのか!」


 とにかく今のは失敗だ。

 地面に埋まるように召喚しなきゃダメだ。



「鉄板出ろ!・・・・・・おしい!!」


 今度は少し地面に埋まって出現したが、もっと埋まってなきゃダメだ。


 そして何度も微調整しながら、ようやく良い感じに召喚することに成功した。

 屋敷に出現した時のように、半分近くが地面に埋まった状態だ。



「よし、バッチリだ!この感覚を覚えておかんとな」



 なぜこんなことをやってるのかというと、コイツは盾としてしか使い道が思い浮かばなかったからだ。


 召喚した時に地面にしっかり埋まってないと、勝手に倒れるようじゃ盾にならないのですよ。魔物が突進して来たケースを考えると、やっぱり地面に固定されてないと盾として役に立たないと思うんだよね。


 まあとにかく、これで守備力が20は上がったな!(クエクエ基準)

 上手いタイミングで出せば、コイツで敵を倒すことだって出来るかもしれない。


 なんせ厚さ3センチもある鉄板だ。走って来た所で目の前にこんなのが出現したら、どんな魔物でも無事では済まないだろう。



 あ、ちなみに鉄板の召喚は屋敷の庭でやってるぞ。

 部屋でやったら床が穴だらけになってしまうからな!




 ◇




「クーヤくーーーん!」



 いつものように広場へ行くと、どこからかティアナお姉ちゃんの声が聞こえた。


 見ると、彼女がいつものようにベンチに座ってこちらに手を振っていた。

 しかしなぜ今日に限って、まだ遠くを歩いている俺に声をかけたのだろう?ベンチにいる時は大抵静かに読書しているのに。



 とてててててててて



 おや?


 近くまで走って行ってみると、今日はティアナお姉ちゃんの隣に、可愛らしい白のワンピースを着た金髪ツインテールの小さな女の子が座っていた。


「こんにちわ!ティアナお姉ちゃん!」

「こんにちはクーヤくん!」


 隣の女の子が俺の頭をジーーーっと見ている。

 ああ!頭じゃなくて、あひるポンチョの顔を見てるのか!


「えっと・・・、こっちの女の子は?」

「へっへ~~~ん!この子は妹のリリカよ。ほら挨拶して!」


 でも女の子は相変わらず、眠たそうなあひるの顔をジーーーっと見つめている。


「その雛鳥の顔に夢中みたいね・・・」


 雛鳥じゃなくて『あひる』なんだが。あれ?そういや鳥じゃん!あってるじゃん!


「リリカちゃんこんにちわ!クーヤです。よろしくね!」


 目の前のショタの元気な声で、ようやくリリカちゃんが我に返った。


「あ・・・、こ、こんにちは!!え~と・・・、クーヤちゃん、くん?」


 『クーヤちゃんくん』は新しいな。なかなかのセンスの持ち主だ。


「男の子だからクーヤくんよ!」

「へーーーーー!あっ!!いくつ?」


 いくつ?・・・ああ、年齢を聞いてるのか?


「5歳!」


 それを聞いたリリカちゃんが、なぜか勝ち誇った顔をした。


「あたしのほうがおねえさんね!!」


 なにィ!?いきなりマウントを取って来ただと!?


「リリカは3日前に6歳になったばかりじゃないの。あっ!クーヤくんの誕生日はいつなのかしら?」


 誕生日だと!?俺は10月生まれだが、この世界の暦とか知らねえぞ!

 そもそも今って何月なんだよ??


「んーと、んーと、もう少し経ったら?」

「あら!じゃあリリカと同学年じゃない!ちょっとだけリリカの方が早く生まれたみたいだけど」

「じゃあやっぱりあたしがおねえさんね!クーヤ!!」


 エーーーーーーーー!!この子は数ヶ月差で勝ち誇るタイプなのか!

 こいつは理不尽を強いて来る危険な人種だ。気を付けないと喰われるぞ!!

 しかもすでに呼び捨てになってるし。さらばクーヤちゃんくん。


「あ、まずは何か食べ物を買ってこようか!何がいい?」

「そーせーじ!!」

「はやっ!え、えーと、クーヤくんもそれでいいかな?」

「うん!!」

「じゃあ二人ともここに座って待っててね!」



 なんかもうティアナお姉ちゃんには、俺がこの時間お腹を空かせているのを完全に把握されていて、まず最初にご馳走してくれる流れが出来上がってるのです。


 なのでアイテム召喚で女性が喜びそうな物が出たら、ティアナお姉ちゃんに定期的に献上してたりします。


 持ちつ持たれつの関係ってヤツですな!



「ん?」


 ベンチの端に座ってティアナお姉ちゃんの帰りを待ってると、リリカちゃんがすぐ隣まで移動して来た。



 クンクンクン


 いや、あの・・・、匂いを嗅ぐのは勘弁して下さい。

 毎日服も身体も洗ってるけど、もし臭いって言われたら立ち直れないから!


 ペロッ


「にゅおあっ!?」


 なんだ!?なぜ俺はリリカちゃんに顔をペロペロされてるんだ!?


「え?なに?どういうこと!?」


「うん、まあまあね!」


 何がまあまあなんだよ!?

 やべえ、幼女の考えがまるで理解できねえ!!

 え?俺はマジで喰われてしまうのか!?



 そうこうしているうちに、ティアナお姉ちゃんがベンチに戻って来た。



「はい!ソーセージ買って来たよ~」


「わ~~~!ありがとーーー!!」

「こっちは?」

「こっちはお野菜よ!」

「おやさいなんていらない!!」

「ダーーーメ!!お野菜も食べなきゃ大きくなれないんだから」


 うおおおおおおおお!サラダ付きじゃあああああああああああ!

 あ、サラダってことはマヨネーズの出番じゃないか!


「野菜にコレをかけて食べると美味しいんだよ!」


 手提げ鞄から、伝家の宝刀・マイマヨネーズを取り出す。


「え?何これ?」

「なにそれ!!」


 お手本として、自分のサラダに無限マヨをたっぷりかけて見せた。

 そして渡されたフォークを使って、サラダを口に入れる。



「うまあああああああああああああああああ!!」


 久々のサラダとか最高すぎる!なんの野菜なのかは知らんけど、とにかくマヨにかかれば全ての野菜が最強となるのだ!!



「ね、ねえクーヤくん!それ、お姉ちゃんのお野菜にもかけてみていい?」

「うん!美味しいよ!リリカちゃんの野菜にもかけてあげて!」


 ティアナお姉ちゃんが、自分のサラダとリリカちゃんのサラダにマヨネーズをかけていく。


 そしてサラダを口に入れた途端、二人の目が大きく開かれた。



「「おいしい!!」」



 はい!マヨラーが二人誕生しました!!

 

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