第208話 女騎士は屈しない

 商人オススメの宿屋に到着したので、乗ってたトナカイを消した。



「はっ!?変な馬が消えた!!」

「変な馬じゃなくて『トナカイ』です!ボクの召喚獣だから、出したり消したり出来るんだよ」

「天使様は召喚士だったのですか!・・・それにしては筋肉がありませんね?」


 プリンお姉ちゃんが左手でショタを撫でまわした。


「召喚士がすべてマッチョだと思ったら大間違いなのです!」

「けど単独で魔物を倒さなきゃいけないって・・・」

「その話は後でいいだろ?まずは宿を取るぞ。部屋はいくつ必要だ?」

「えーと、人気の宿だからそんなにいっぱい部屋空いてないよね?レオナねえ達三人は尊いから同じ部屋でいいと思うけど、弱ってるプリンお姉ちゃんに黒眼鏡が襲い掛かるといけないので、悪そうなお兄さんは個室かな?」

「襲わねえよ!だがその振り分けが良さそうだな」



 部屋が沢山空いていれば個室をいくつか取りたかったんだけど、やはり人気宿なのでそれはさすがに無理だった。


 それでも3人部屋を二つと黒眼鏡用の個室をとることが出来たので、夕食まで自室で寛ぐってことになり、悪そうなお兄さんとはそこで別れた。


 夕食は10時~12時の間に食堂で頂くことになっている。

 日本時間でいうと、18時過ぎってところだね。


 レオナねえ達が宿に到着しても、女将さんに名前を言えば部屋に案内してもらえることになっているので、とりあえずそこは気にしないでも大丈夫みたい。



 ガチャッ



 女将さんに案内された部屋はとても清潔で美しく、どうして人気宿なのか一目瞭然だった。まあ宿泊費も高かったんですけどね。


 宿には銭湯みたいに他のお客さんと一緒に入る大浴場があるらしい。

 しかしそれとは別に、3人部屋には浴室もついているのだ!



「すごく綺麗!!」

「当たりだ!」

「良い部屋ですね~」


「お客様に喜んでもらえて良かったです!」



 女将さんがしゃがみ込み笑顔で両手を広げたので、思考時間0.1秒で胸に飛び込むと、ギューッと抱きしめられてクンカクンカされた。


 よっぽど無理な状況でもなければ、お姉さん達の期待に応え続けるのがショタの生き様ですから!というか、女将さんへのサービスは見返りも期待出来るのだ。


 プリンお姉ちゃんが『今すぐ内風呂を使いたい』と言うと、とても機嫌の良い女将さんが浴槽にお湯を張ってくれた。


 やっぱり大浴場がオススメらしいので、落ち着いたらタマねえと一緒に女湯に突撃するしかないでしょうね!


 もし女湯がショタお断りだった場合でも、悪そうなお兄さんと一緒に男の園に行くくらいなら、ボクは迷わず内風呂を選びます。



 仕事に戻るため、女将さんが口惜しそうな顔をしながらしぶしぶ部屋を出て行くと、プリンお姉ちゃんが早速お風呂に入ってみることになった。


 盗賊との戦闘で血濡れになったから、とても気持ち悪いんだってさ。

 まあ、そりゃそうだよね。


 ただ彼女は怪我人なので、ボクとタマねえもお手伝いすることにした。

 大浴場という桃源郷を見逃す手はないので、当然そっちにも入るけど!



 プリンお姉ちゃんの職業クラスは『騎士ナイト』らしく、なかなかの重装備だったので、鎧一式を外すのが大変だった。


 そう、女騎士なのですよ!彼女は決して屈しないのだ!!


 レオナねえは普通の服の上に鉄のビキニを装着しただけのエロい格好をしているのだけど、プリンお姉ちゃんにも、もう少し女らしい装備品をデザインしてあげた方がいいかもしれないね。帰ったらクリスお姉ちゃんに相談してみよう。


 しかし重装備してた割には、脱がしてみると筋肉質な体つきじゃなかった。


 レオナねえと同じく、少し鍛えている女の人って感じかな?

 推定Dカップのおっぱいも柔らかそうです!


 汚れているからと遠慮するプリンお姉ちゃんを説得しながら、風呂場に移動した。



「お風呂くらい大丈夫です。一人で洗えますので!」

「ダメです!怪我人らしく大人しく洗われていてください!」

「安心していい。タマとクーヤは丸洗いのプロ」

「お風呂嫌いのダメ猫を、ちょっぴりお風呂好きにした実績があるのですよ!」

「なんか微妙な実績ですね。っていうか丸洗いって・・・」



 身体を洗い始めると、盗賊や自分の血で汚れたお湯が流れて行き、プリンお姉ちゃんは恥ずかしそうな顔をしていた。


 こうなることが分かっていたから遠慮してたんだろうね。

 でもこの汚れは戦士の勲章のようなもんなので、ボク達は一切気にしませんよ。



 ―――――しかし子供達の猛攻はここからだった。



 怪我人に無理させるわけにはいかないという、献身的な想いを込めた高級丸洗いにより、女騎士は身体の隅々までピカピカにされ、ショタが終了を告げる頃にはもう、人様には絶対お見せ出来ない顔になっていた。



「も、もうゆるしてくりゃしゃい・・・」



 女騎士は、どう見ても完膚なきまで屈していた。




 ◇




「本当はボクんのお風呂に入るのが一番なんだけど、それまではハムみずに浸したタオルで、怪我した右腕を常に濡らしておく作戦にするね」


「あんな所まで洗われて醜態を晒してしまったからには、もうこの身体は天使様のモノです。好きなようにお使い下さい」


「いや、屈し過ぎでしょ!女騎士の誇りを取り戻して!!」



 間違いない。オークに負けたら屈服して従順なエロ嫁になるヤツや!


 やはり女騎士という職業は危険と隣り合わせなんだ。屈した相手が子供達で良かった。盗賊なんかに屈してたら一生を棒に振ってたところだよ・・・。


 ハム水に浸して濡らしたタオルで、プリンお姉ちゃんの右腕を湿らせるのを何度も繰り返すというちょっと不思議な治療をしていると、レオナねえ達が宿に到着したという報告を受けた。


 ちょうど夕食の時間になってたので、悪そうなお兄さんと一緒に食堂へ移動し、そこでレオナねえ達三人と合流した。



「うんめーーーーーーーーーーーーーーー!コレって、イルプシアで食った料理より美味くねえか?」

「うん、この宿屋の勝ちだね!」

「お肉は互角だけど、それ以外は全てこっちの方が美味しいと思う!」

「マジで美味えな・・・。香辛料を買い漁ったのは正解だった!」

「この宿に泊まるのは初めてなのですが、本当に美味しい料理ですね!宿泊代が高いだけのことはあります」

「香辛料いっぱい買いまくったけど、この味が出せるかなあ?」

「タマも家に帰ったら色々挑戦してみる!」



 今日は色々あってお腹が空いていたのもあり、みんなの思い出に残る最高の夕食になりました!


 明日はリナルナの首都を観光し、午後にはミミリア王国に向かって出発します。

 酔っ払いや盗賊が出たりもしたけど、もう一度来たいと思える良い国だったね!


 まだお金はいっぱい残ってるし、面白い物があったら爆買いしよっと。

 

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