第354話 ママさんは本気らしい

 レミお姉ちゃんの家にお土産を持って来ただけなのに、アイテム召喚で『おねショタDVD』を出してしまい、そのせいで話題の中心はアニメとなった。


 その後、モコねえの『アニメがしたいです!』という一言が発端となり、レミお姉ちゃんのママがアニメ制作会社を作ると言い出し、本気なのか冗談なのかわからないけど話がどんどん大きくなっていく。



「えーと・・・、これからボクんちの隣の土地にアパートを建てる予定なので、ちゃんと確認しておきたいのですが、『スタジオ・モコティー』を建てる話って本気なんでしょうか?結構お金が掛かると思うのですが!」



 これを確認しておかないと、アパートを建てる場所に影響してしまうのです。

 ただの冗談だったら、無駄に悩むことになっちゃうからな~。



「すごく面白そうだし、もう本気で会社を作るつもりになってるわよ!土地代と建設費用を払えばいいのよね?」

「にょあ!本気だったのですか!?」

「ウチのママ、こう見えて結構お金持ちなのよね~。ただ、命運を懸けて起業するわけじゃなく趣味にお金を使う感覚だと思うから、しばらく会社が赤字でも問題ないんじゃないかしら?」

「レミ、わかってるじゃな~い♪」


 なるほど!金持ちの道楽って感じか~。

 赤字を気にせず夢を追う会社とか、メッチャそそるんですけど!


「なるほど、レミお姉ちゃんのママさんが本気だってのはわかりました!じゃあ家に帰ったら出資者全員に話してみるのです。みんなが賛成したらママさんを呼びに来ますので、その時に話し合うってことでいいですか?」

「それでいいわよん♪」

「うっひょーーーーーーーーーー!すごくワクワクしてきたですよ!すぐにでもティアナと話し合わなきゃです!」

「いや、ティアナ姉ちゃんは学校・・・、あーーーーーっ!モコねえもそろそろ学校に行かないとマズくないですか?」

「もうすでに限界を超えていますが、ティアナと話し合うために行くですぞ!」

「勉強はどうでもいいのですね!?」

「わかる」


 タマねえも共感するんじゃありません!


「じゃあボク達もそろそろ帰ろっ・・・、あーーーーーーーーーー!ここに来た本来の目的を忘れてました。ボクとタマねえはお土産を渡しに来たのです!」

「そんなの完全に忘れてた」

「ほうほう、お土産ですか~」


 モコねえはスイーツ爆弾の被害にあったばかりなのですが、初めて知ったって感じで知らんぷりしてますね。顔はニヤケてますけど。


「この前お土産を貰ったばかりなのに、あまり貰い過ぎると申し訳ない気持ちになっちゃうわ」

「すごくいっぱいお土産をくれたのよね~!本当にありがとーーーーー♪」

「違うわママ。前回のお土産の話じゃなくて、今日もまたお土産を持って来てくれたみたいなのよ!」

「・・・え?またお土産!?」

「そうなのです!クーヤ様とお仲間さん達は、お土産に命を懸けてるのですよ!」

「ですです。『お土産は全力で!』がボク達のポリシーですので、遠慮せずに受け取って欲しいのです!」

「ボク達とか言ってるけど全部クーヤが発端。知り合いは全員巻き込まれる運命」

「じゃあお土産を出しますよーーーーー!」



 お土産ハムちゃんを召喚し、窓際からお土産の放出が始まった。


 その間にレミお姉ちゃんとママさんにケーキの箱を手渡し、ボクとタマねえとモコねえはさりげなく入り口のドアの前に移動する。


 爆乳親子が気付いた時には、すでにスイーツに包囲されていて、一歩も動けない状態になっていた。



「ねえクーヤちゃん?これってもしかして全部スイーツじゃ・・・」

「大変よレミ!甘いお菓子に囲まれちゃったわよ!?」


「じゃあボク達はそろそろ帰るのです!」

「会社のことは、ちゃんとティアナに話しておくであります!」

「あ、そうそう!絶対食べきれないと思うので、知り合いや近所の人にお裾分けしていいですからね~!」

「またねー」


「嘘でしょ!?ちょっと待って~~~~~~!」

「レミ、これは罠よ!あの三人、ちゃっかりドアの前に移動しているわ!」

「あーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



 最後にレミお姉ちゃんの絶叫が聞こえてきたが、ボク達は無情にもドアを閉めて外に出た。スイーツ爆弾とはそういうものなのだ。


 時計を見るとすでにお昼を過ぎてたけど、それでもモコねえは学校に行くみたいなので、『がんばってねー』と手を振ってお別れした。


 たぶん授業なんかはどうでもよく、ティアナ姉ちゃんに就職先が見つかったことを告げに行ったんだと思う。



「モコねえはもうやる気マンマンって感じだったけど、ティアナ姉ちゃんはどうするんだろな~」

「他に就職したい所とかあるの?」

「わかんない。そういう話をしてるとこ見たことないかも」

「じゃあ決まったようなもん」

「モコねえと同じ趣味してるもんね!給料が出るのかすらわからない会社だけど、面白いのは確実だしな~」



 そんな会話をしながら、タマねえと一緒に我が家へと帰っていった。

 そういえば、レオナねえ達はホニャ毛と会えたのかな?




 ◇




 今日は久々にゆっくりできる状態になったので、タマねえと一緒に、リリカちゃんとお母さんがクエクエの世界で冒険している姿を見ながらほっこりしていると、お姉ちゃん達が続々と帰って来た。


 グルミーダの森に行っていたレオナねえ一行だったけど、アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんも女神の湯に入りに来たので、旅のメンバーが全員揃ってるうちに今日の出来事を伝えることにした。




「「な、なんですってーーーーーーーーーー!?」」



 これにはレオナねえだけじゃなく、家族全員が驚きの声をあげた。



「そうそう!遅刻して来たモコピが、アニメ制作会社の話をしてたんだ!やっぱり本当だったんだね~!」

「ってことは、ティアナ姉ちゃんも就職するつもりなの?」

「絶対するよ!だって会社が家の隣にあるんだよ!?歩いて1分だよ!!」


 言われてみるとたしかに、就職先が実家の隣とか最強すぎるな!

 問題なのは、まだその会社が無いってことだけ。


「でも給料の話とかまったくしなかったので、ちゃんと話し合って決めた方がいいですよ?そもそもまだ会社が無いわけですし」

「それはもちろんするけど・・・、アニメが完成するまでの間って、お給料出るのかなあ?」

「何か他の仕事で稼がないと厳しいと思うであります!」

「だよねーーーーーーーーーー!」



 ティアナ姉ちゃんと二人で盛り上がってると、ようやく出資者たちが騒ぎ始めた。



「おいクーヤ!その人は大奥の隣に会社を建てたいってことだよな?」

「うん。冗談だったら困るからちゃんと聞いてみたんだけど、レミお姉ちゃんのママさんは本気で言ってることが判明しました!お金持ちみたいだから、こっちの話が纏まったらすぐにでも土地代を支払ってくれると思います!」

「マジで言ってるんだな・・・」

「でもその会社って本当に大丈夫なの?」

「すぐ潰れちゃったりしたら面倒なことになりそうだよね~」

「確かそのアニメというのは、男の人しか出てこないやつですよね?」



 なぜかティアナ姉ちゃんの方から、キュピンという音が聞こえた。



「ハイ!ハイ!ハイ!実はですね、二つ目のアニメを入手することに成功しました!最初のアニメはBLだったけど、今回のは、お姉さんが小さな男の子とエッチな関係になるやつです!」


「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ティアナ姉ちゃんが、鞄の中からDVDプレイヤーを取り出した。



「今からみんなに見せるけど、コレを見たら私達がどんなアニメを作りたいかがわかるよ!もう大興奮間違いなし!」


「え?ちょ、また見るの!?」



 ボクの声など女性陣には一切届かず、全員が所定の位置についたところで、ティアナ姉ちゃんがDVDプレイヤーを起動させた。



 あのさあ、もう今日だけで3回目の上映なんですけど!!



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 ガチャッ



 一人でお風呂に入るために脱衣所のドアを開けた。

 なぜって?こんなアニメを見た後のお風呂は非常に危険だからです!!

 

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