第336話 スイーツ爆弾投下

 隣の家が売地となっていて驚いたけど、長旅から帰って来たところだし、売地を買うかどうかはとりあえず明日もう一度話し合うことにして、ウチの前まで歩いたところで解散することになった。


 それぞれ自分ちの家族を驚かせるのを楽しみにしているので、今日のところはとっとと家に帰りたいのだ。


 マグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんは、タマねえの家に一泊させてもらうことに決まったので、プリンお姉ちゃんと一緒にタマねえの家に入って行った。


 アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんも、トナカイに乗って自分ちに帰って行ったので、レオナねえと二人だけで我が家の玄関のドアを開ける。



「「ただいまーーーーーーーーーー!」」



 レオナねえと二人で靴を脱いでいると、スリッパをパタパタさせながらお母さんがリビングのドアから出て来た。



「お帰りなさ~い!旅行は楽しかった?」

「まあ楽しかったといえば楽しかったけど、すごく疲れたな~」

「ボクも疲れたのです。クリスお姉ちゃんとティアナ姉ちゃんは帰って来た?」

「もうみんな帰ってるわよ~♪」



 ガチャッ



「あっ!レオナとクーヤくんが帰って来たわ!おかえりなさい」

「おかえり!今回もセルパト連邦に行ってたんだっけ?」

「おかえりーーーーーーーーーー!」


「「ただいま~~~!」」


 よし、社畜以外みんな揃ってるな!


「今回もセルパト連邦だけど、リナルナの隣にあるハイドリムドって国な」

「みんなにお土産買って来たよ~!」



 お土産と聞いて、全員がフリーズした。



「お土産・・・、まさか前回みたいなことにはならないわよね?」

「絶対なると思う!」

「おみやげだーーーーーーーーーー!!」

「ハイドリムドって、一体どんな国なのかしらね~?」



 期待が高まっているようなので、我が家専用のお土産ハムちゃんを呼び出した。



「じゃあハムちゃん、お土産を全部出してください!」


『チュウ!』



 ハムちゃんがリビングの窓際の方までトコトコ歩いていき、床にスイーツを並べ始めた。もうみんなお土産耐性がついているので、『なぜそんな部屋の隅に置くの?』なんて質問はしません。


 スイーツは一つ一つ紙の上に乗っているので、床が汚れる心配はないです。



「ちょっと!今回のお土産ってもしかして・・・」

「これ全部甘いお菓子なんじゃ!?」

「わああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~!!」

「部屋の半分がスイーツで埋まっちゃったわね~」

「半分で済むわけがないわ!」

「ハムちゃんの放出が止まる気配はありません!」



 当然のことながらお土産ハムちゃんは、窓側の逆方向にあるのキッチンの方までスイーツで埋め尽くした。



『チュウ・・・』


「悲しそうな顔でなんか言ってるぞ?」

「全部出し切れなかったと嘆いております!」



 最後に、ハムちゃんにケーキの箱を四つ出してもらって、お母さん、クリスお姉ちゃん、ティアナねえ、リリカちゃんに一つずつ手渡した。



「・・・えーと、これは?」

「もちろんケーキなのです!」

「みんな甘い物大好きだろ?好きなだけ食ってくれ!」

「普通は家族全員で1箱だよ!一人1箱渡すなんて間違ってるよ!」

「ケーキだーーーーーーーーーー!!」

「お母さんね~、一人でこんなに食べられないのよ~!」

「甘い物は大好きだけど、こんなの絶対ブクブク太るじゃない!」


「「にゃーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!」



 無事スイーツ爆弾が投下されたので作戦は終了。

 前回のように、家族それぞれの専属ハムちゃんにスイーツを回収してもらった。


 ボク達もだけどクリスお姉ちゃんやティアナ姉ちゃんも帰宅直後だったので、『早速スイーツを食べてみよう!』とはならず、一先ず夕食を頂くことになった。



「そうそう!隣の家が売地になってたんだが、何かあったのか?」

「あ~それね、普通に引っ越したみたいよ?」

「どこに引っ越したのかは知らな~い」

「お母さんも聞いてないからわからないわね~」

「あの老夫婦って、挨拶しても面倒臭そうに返事するだけだもんな」

「さすがにあの態度じゃ、仲良くしたいなんて思わないわよ」

「次の住人はまともな人だといいな~」


 レオナねえの目が光った。


「隣の土地はアタシが買うぞ!」


「「はい!?」」


「アタシっつーか、アタシとクーヤとアイリスとナナとタマとプリンアラートの6人で金を出し合って買う予定だ!」

「レオナねえ、話し合いは明日だからまだ決まってないよ!」

「もう決まったようなもんだろ!」

「ちょっと待った!お金はどうするつもりなのよ?」

「うわははははははははは!あるんだなーこれが!!」

「どういうこと!?」

「ハイドリムドで王家の依頼を受けて、6人で6000万稼いだぜ!」


「「はあああああああああああああ!?」」


 当然ながら、王家の依頼と聞いてみんなおったまげた。


「あとね、ハム水が入った樽も3000万で売れたんだよ~!」

「ぶっ!!何なのよ、そのボッタクリ価格は!?」

「クーヤが、ハイドリムドの王妃様に3000万で売りやがったんだよ!すぐ近くで聞いてたアタシも心臓がバクバクしたぞ!」

「全然ボッタクリ価格じゃないよ!みんなハム水に慣れ過ぎただけなのです。お肌がツヤツヤになって、飲めば健康になる奇跡の水ですよ?」

「あ~、言われてみると確かにそれくらいの価値があるのかも・・・」

「うん、よく考えたらそれ以上の価値があるかも!」

「まあな。とにかく旅行メンバーで金を出し合えば、隣の土地が買えるんだよ!」

「お隣さんって結構広い土地よね?あの古い家を壊して家を建てるのなら、3000万とか4000万とかいっちゃうんじゃない?」


 異世界の土地の値段なんてさっぱりわからないけど、結構高いっスね~。


「デカい建物を建てるつもりだから5000万いくかもな~」

「そんな大きな建物、何に使うのよ?」

「もちろん『大奥』を造るぞ!女性以外立ち入り禁止だ!」

「エエエエエーーーーー!ボクの部屋は!?」

「クーヤは男性枠に入らんから住んでもいいぞ!」

「ボクの立ち位置が意味不明すぎる件」

「クーヤくん、隣の家に引っ越しちゃうの!?」

「ううん、今まで通りこっちの家に住むよ。でもボクもお金を出すから、部屋だけ作っておこうかな~って。何かに使えそうだし」

「っていうか、その『おおおく』って何よ?」

「美女だけをいっぱい集めたお屋敷のことです。全員王様のお嫁さんみたいな?」



 ―――――室内に冷たい空気が流れた。



「レオナの欲求を満たすための建物じゃないの!!」

「なんか必死だと思ったら、やっぱり変なこと企んでたよ!!」

「レオナねえは第14代将軍だから、誰も逆らえないのです・・・」

「ぬわーーーーーっはっはっはっはっはっはっは!!」



 まだ買うと決まったわけじゃないですが、隣のデカい土地を買うってのは悪くない話だと思うんですよね~。


 っていうか家を建てるなんてワクワクするし、『大奥』が完成したら絶対面白そうだし、お金なんて使ってなんぼですから。


 プリンお姉ちゃんの読み通り、一瞬でお金が無くなりそうです!

 

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