第345話 黒眼鏡軍団にスイーツをお届け

 黒眼鏡軍団にスイーツを食べさせたい一心で、遠路遥々貧民街スラムまでやって来たわけだけど、簡単に見つかるハズだった悪そうなお兄さんのアジトになかなか辿り着くことが出来ず、一縷の望みをかけてボク達は場末のスナックへ。


 そこで見つけた紫モヒカン風の男にアジトの場所を聞こうとするも、そこへ案内する条件はなんと、彼を『真のモヒカン』として転生させてあげることだった。


 かなり難易度の高い条件ではあったものの、師匠の教えを思い出しながら、男を世紀末の雑魚キャラとして転生させることに成功する。


 彼の身を案じて涙を流すスナックのママに別れを告げ、ボク達は店の外へ出た。


 そして、紫モヒカンモドキから真の紫モヒカンとなった『紫モヒカンのお兄さん』に案内してもらいながら、ボク達は悪そうなお兄さんのアジトへと向かった。



 悪そうなお兄さんが教えてくれなかったので知らないままだったけど、紫モヒカンが言うには、彼の所属している組織は『ラグナスレイン』という名前らしい。


 勝手にアジトとか言ってるけど、ラグナスレインの本拠地であるお屋敷は別に隠されているわけでもなく、貧民街スラムの住人ならほとんどの人が知ってるようだ。


 それなのに、ボク達にだけ教えてくれないとは納得いきませんね!


 トナカイに乗ってアジトに近付くにつれて人の姿も少なくなっていってるので、やはり貧民街スラム最大の組織だけあって恐れられているっぽい。



「そのデケェ建物が『ラグナスレイン』の屋敷だ!」


「「おおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 ボクとタマねえで貧民街スラムの組織を二つ潰してるけど、明らかにその二つよりも大きなお屋敷ですね。儲けてやがりますな~。


 トナカイに乗ったままお屋敷に近づくと、門の前に立っていた2人の黒眼鏡がボク達の方に近寄って来た。



「お前ら何者だ?」

「此処がどこだか分かってるのか?」


「ねえねえ!悪そうなお兄さんって、今日はお屋敷の中にいるの?」


「はあ?悪そうなお兄さんってのは一体誰のことだ?」

「・・・何だこの小っさいハゲじじいは?」



 ああ、正装で来ないと失礼だと思い、ハゲヅラと鼻メガネを着けてきたのです。

 もちろん馬少女と虎マスクもいますが、まだ気付いてないっぽい。


 ・・・と思ったら、紫モヒカンがトナカイから降りて黒眼鏡の前に立った。



「コイツらがガイアと会いたいっつーから、俺が此処まで連れて来たんだ」

「うおッ!何だお前は!?スゲー気合入った頭してんな・・・」

「この髪型は半端ねえな!こういうのも意外とアリかもしれねえぞ!」

「なにッ!?モヒカンってそんなにスゲーのか!!」

「モヒカン?何だそりゃ?」

「ああ、さっきそこの黄色いのに『モヒカン』って髪型にしてもらったんだ」

「黄色って、そのハゲじじいにか!?」

「・・・ん?よく見たらお前ロビンじゃねえか!」

「いや、顔見りゃすぐわかるだろ!気付けよ!!」

「気付かねえよ!お前がいきなりそんな頭で現れたせいだろうが!!」



 この紫モヒカンは『ロビン』って名前なのか~。あっ、偽名かな?

 似合ってるかどうかはさて置き、とにかく覚えやすいかもです!



「うわッ!オ、オイ!!そこにいる馬頭は何なんだよ!?」

「ああ、そいつの中身は普通の人間だぞ。なんか知らんけど馬のマスクをかぶってやがるんだ。そのハゲだってヅラをかぶってるだけだしな」

「よく見ると黄色いマスクもいるじゃねえか!何なんだこの怪しい集団は!!」

「女どもは俺も知らんけど、黄色いのがガイアと知り合いだっつーから連れて来たんだよ。つーか何でまたハゲてんだよ!ホント意味わかんねーガキだな!」

「ガキ?中身はじじいじゃねえのか?」

「この辺じゃかなりの有名人のハズだぜ?悪い意味でな」

「有名人だと!?どっちにしろ怪しい奴を入れるわけにゃいかねえし、変装を解いてもらわんと困るぞ!」

「・・・だそうだ。いい加減元に戻れ!」


「「エエエエエーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 タマねえとレオナねえと一緒にブーイングしまくったけど、このままじゃお屋敷に入れてもらえそうもないので、三人とも文句を言いながら変装を解いた。



「ぶはッ!」

「オ、オイ!こいつらって『黄色と黒』じゃねえか!!」

「有名人だって言ったろ?この黄色がガイアと話してる所を見たことあるし、アイツと知り合いだってのは間違い無いハズだが・・・」

「そのガイアの兄貴から『黄色と黒禁止令』が発動されてるんだよ!」

「街で見かけても、絶対に関わり合いになるんじゃねえぞってな!!」

「嘘だろ!?知り合いだと思って連れて来ちまったぞ!!」


 いやいやいやいや!その『黄色と黒禁止令』って何なのさ!?


「クーヤとタマに禁止令だと!?あの野郎ふざけた命令出しやがって!」

「後で問い詰めてやる必要がありますね!でももう来てしまったので、召喚獣をフル動員してでも黒眼鏡の鉄壁の守りを突破しますよ!」

「そのためにジグスレイドを血祭りに上げて準備を整えてきた。あの戦いは無駄じゃなかった!」


 タマねえ、アレは別にウォーミングアップとかそういうのじゃないです。


「・・・ジグスレイド?どこかで聞いたことある名前だな」

「セルパト連邦のどこだかにある、一番デカくてヤベエ組織じゃねえか!」

「へーーーーー!そんなスゲー組織があるのか!」



 とりあえず全員トナカイから降りた。


 なぜか戦闘が始まるような流れになってますが、今回は組織を潰しに来たわけじゃないので、トナカイを全部消した。



「っていうか戦いに来たわけじゃないのです!最近セルパト連邦まで遊びに行ったので、そこで買ったお土産を渡しに来ただけなのですよ~」

「お土産!?」

「なんだ、用事ってそれだけだったのか!」

「黒眼鏡のお兄さん達の分もあるから、悪そうなお兄さんのいる場所まで案内してください!」

「それはすごく有り難いが、たまたま此処にいた俺達だけが土産を貰うってのはどうなんだ?」

「いや、ガイアだけじゃなく最初から黒眼鏡軍団に渡すつもりだったから大量に買って来たぞ!構成員が2000人とかいるなら全員には渡せないが」

「さすがにそこまで規模のデカい組織ではない!」

「とにかく一緒にいればお土産が当たると思うから、見張りはバイトにでも任せて、悪そうなお兄さんの所に案内して!」

「店じゃねえんだからバイトなんかいねえよ!」

「まあどっちにしろ俺達が案内する必要があるか。じゃあ若いのを2人連れて来るから、ちょっと此処で待ってろ!」



 そう言った黒眼鏡が、お屋敷の中に入って行った。


 しかし悪そうなお兄さんが『黄色と黒禁止令』なんか出すから、無駄に時間が掛かっちゃったじゃないですか。あとで覚えてなさいよ!!

 

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