第346話 ラグナスレインのお屋敷

 お屋敷の門で警備をしていた2人の黒眼鏡に、悪そうなお兄さんの居場所まで案内してもらうため・・・というかスイーツを食べさせるため、若いの2人に持ち場を交代してもらった。


 今日は何度も解除されて落ち着かないが、再びハゲヅラと鼻メガネを装着。

 タマねえとレオナねえもマスクを着けて、黒眼鏡の後ろをついて歩く。



「デケー屋敷だな~」

「どうやって稼いでるのか知らないけど、すごく儲かってそうだよね~」

「これは陥落させるのが大変そう」

「いやタマちゃん、陥落させに来たわけじゃないから!」

「今日はお土産を渡しに来ただけなのです!」

「そういえばタマちゃんと天使様で組織を二つ潰したとか言ってませんでした?」

「お前らの噂なら聞いてるぜ?黄色と黒が『イーデミトラス』と『グロスメビロス』を潰したってな。ここで暴れるのはマジでヤメてくれよ?連れて来た俺が共犯にされちまう!」

「街中でそんな噂が?・・・あっ!だから通行人に話し掛けた時、一目散に逃げられたのか!やっぱりお前らメチャメチャやらかしてるじゃねえか!!」



 紫モヒカンのお兄さんは、あのスナックで噂を聞いたのかな?

 これはイカンですよ?貧民街スラム全体に変な噂が流れてるのかも!!


 なぜか頻繁に悪者に狙われるので、悪の組織とは殺るか殺られるかの関係になってしまうのです。しかも最近、潰した組織リストにもう一つ追加されたし・・・。



 お屋敷はとても広く、立ち止まって変な顔でボク達を見る何人もの黒眼鏡とすれ違いながら渡り廊下を歩いていき、金回りが良くなって増築されたと思われる建物へと入って行った。


 渡り廊下を歩いている時に、窓からもう一つ大きな建物が見えたんだけど、もしかしたらそこがサングラスを作る工場なのかもしれない。


 あ、そろそろ特許の申請が通っていてもおかしくない頃かな?


 ボクも当事者なんだけど、いつも保護者風の人と一緒に特許の申請に行ってるので、子供のボクじゃなくて保護者風の人に連絡が行ってしまい、結局いつも何も知らないまま話が進んでるんですよね~。


 まあ商売なんて面倒臭いし、入金だけされていればそれでいいんだけどさ!



『ポン!』


『待て、その前にロンだ!』


『『な、なんだってーーーーーーーーーー!?』』



 ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ



 もう明らかに麻雀を打ってる音が聞こえて来たので、そのドアの向こうに悪そうなお兄さんがいるのがわかった。


 そうか、とうとう麻雀セットが完成したのか~!



 ガチャッ



「失礼します!ガイアの兄貴に会いに来た人達をお連れしました!」



 カチャッ カチャッ カチャッ カチャッ



 麻雀牌で山を積んでいた悪そうなお兄さんが、ボク達の方へ視線を向けた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




 ―――――そして完全にフリーズした。




「・・・待て。なぜそいつらを連れて来た!?絶対に侵入を阻止しろと、あれ程強く言ってあっただろうが!!」



 その剣幕に、今度は黒眼鏡が慌てふためいた。



「いや、あの、そ、そう!ロビンが連れて来たので、俺達は止む無く・・・」


 っていうか、侵入を阻止しろって命令を出すのやめてくれませんかね?


「ロビン?」



 悪そうなお兄さんがハゲと馬と虎を見て頬を引き攣らせた後、その左後方に紫モヒカンが立っているのを発見した。



「うおッッ!な、何だ、その凄まじい髪型は!!」

「よう!」

「少し見ない間に、恐ろしい程気合入った頭にしたんだな!なるほど・・・、そいつは目から鱗だ。ただ立っているだけで存在感が半端ねえ!」

「マジか!?モヒカンってそんなにスゲーのか?」

「あ、そうだ!お前ちょっと革ジャンを着てみろ!」



 悪そうなお兄さんが、30畳くらいあるやたらと広い部屋の奥まで歩いて行き、紙袋を手に取り戻って来た。


 そして中から革ジャンを取り出した。



「へーーーーー!それが革ジャン?ってヤツなのか」

「コイツは本来ラグナスレインのみ着用が許される服なんだが、今回だけ特別だ。背中を見てみろ」

「背中?・・・おおおおおーーーーー骸骨じゃん!カッケーーーーー!!」

「とりあえずそいつを着てみろ」

「お、おう!」



 黒シャツ一枚だった紫モヒカンのお兄さんが、その上から革ジャンを着た。



「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 うん。黒眼鏡達が驚くほどに、マジで死ぬほど似合ってらっしゃる。


 モヒカンと革ジャンの相性はバツグンですからね~!

 ついでにトゲトゲの肩当てを装備させて、真の雑魚キャラにしてあげたいかも。



「その凄まじい髪型と死ぬほど似合ってんなオイ!」

「クソッ!後ろ姿がスゲー気になる!」

「今のお前なら、ウチの組織に入れてやってもいいぞ!」

「え?マジで!?なあなあ!今どんな姿なのか見たいんだけど鏡ねえか?」

「そっちに等身大の鏡があるだろ。確認してみ」



 雑魚キャラに生まれ変わったのが功を奏して、悪そうなお兄さんの組織にスカウトされるとは驚いたのです!


 まさかモヒカンにしただけで人生まで変わるとは・・・。

 クーヤちゃんの功績も非常に大きいですよ?


 紫モヒカンのお兄さんが、等身大の鏡の前に立った。



「なんじゃーーーーーーーーーーーーーーー!?このとんでもない頭は!!」



 ―――――広い室内に、紫モヒカンの悲鳴が轟いた。



「いや、何で自分でやった髪型に驚いてるんだよ!?」


「違う!此処に来る前に『本物のモヒカンにしてやる』って言われて、そこにいる黄色いのに髪を切ってもらったんだよ!!」



 ―――――広い室内に、冷たい風が吹いた。



 悪そうなお兄さんが、黙って成り行きを見守っていたハゲを指差した。



「犯人はお前かーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 いや、犯人って呼ぶのやめてもらえませんかね?


 それに『本物のモヒカンにしてやる』じゃなくて、『本物のモヒカンにしてあげてもいいですよ?』って言ったんです!


 決めたのは紫モヒカンのお兄さんなんだから、勘違いしないでよね!

 

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