第73話 悪そうなお兄さんをゴーレムに乗せる

 秘密基地に到着した。


 この場所まで来ると誘拐犯が出たりするせいか、貧民街スラムの住民ですら1人もいないのだ。まあ単純に治安が悪過ぎるんだろね。



「こんな場所で遊んでんのかよ!お前ら、此処が誰も寄り付かないような危険地帯だってこと知ってんのか?・・・ああ、イーデミトラスの奴らが消えたから前ほど治安は悪くねえのか・・・」


 やっぱりそうだったのか。

 でも秘密基地なくらいだから、タマねえは一人で遊んでたみたいですけどね!


「誰もいないから秘密基地にした」

「人がいないってことは、それだけやべえ場所なんだよ!つーか気付けよ!」

「でも誘拐犯は退治したよ?今はここが一番平和な場所だね!」

「その代わりお前らが居付いてるじゃねえか!よく考えたら前より治安が悪くなってんなオイ!!」


 すごく心外ですね!!子供達の遊び場ってのは平和の象徴でしょうに。


「よーーーし!じゃあそろそろゴーレムを呼び出すよ!」

「ここなら広いから大丈夫」

「ゴーレム?何だそりゃ??」



「えーと、こっちの方が広いか。ゴーレム出て来い!」



 シュッ


 秘密基地の前に、身長4メートルの大巨人が出現した。



「はあああああああああああああああ!?嘘だろ?オイ!!」



 悪そうなお兄さんが、顎が抜けるほど口を開けて驚愕している。


 いや~、コレが見たくてわざわざ連れてきたんですよね!



「ゴーレムだ!乗っていい?」

「もちろん!乗るために出したんだから!」

「ちょ、ちょっと待てや!!コレって、カロリーゼロ・・・だよな?」


 そういえば、元々は酷い名前でしたね。


「うん。気の抜ける名前だったから変えたの」

「気の抜ける名前?いや、普通に強そうな良い名前だと思うが・・・」

「エーー、そうなの!?タマねえもカロリーゼロって強そうな名前だと思う?」

「わかんない」


 タマねえはタマねえで変な子ちゃんだからな~。まったく参考にならん。


「しかし、カロリーゼロが召喚獣!?・・・こんなのどうやって倒しやがった?魔法は一切効かないし、物理攻撃にしても鉄の剣がへし折れるような魔物だぞ!!」


 え!?ゴーレムって魔法効かないの?身体が頑丈なのは知ってたけど・・・。


「友情パワーでやっつけたよ!ドーーーーーン!!って」

「みんな頑張った」

「ドーーーーーン!!じゃ、さっぱりわかんねえよ!!」


 悪いけどカブトムシのことは秘密なのです。実際にガジェムで攻撃された誘拐犯達が気付いてたりしたら、そこからバレるかもだけどね。


「じゃあゴーレム、また肩に乗せてね!ボクとタマねえが左肩で、悪そうなお兄さんが右肩ね」

「ちょっと待て!!俺も乗るのかよ!?」

「乗ってみたくない?高くておもしろいよ!」

「いや、ま、まあ、確かに気にはなるが・・・」


 俺のイメージ通りにゴーレムが右手を差し出したので、子供組が左肩に乗った。

 そして次は悪そうなお兄さんの前に左手を差し出す。


「その手の上に乗ってね!ゴーレムが肩まで運んでくれるから!」


「わ、わかった!」



 そして、悪そうなお兄さんもゴーレムの肩に乗ることが出来た。



「下から見た時よりも高く感じるな。こりゃすげえ・・・・・・」


「身体の出っ張りに捕まるといいよ!安定するから」


「出っ張り?・・・ああ、これか!」


「じゃあゴーレム、あっちに向かって歩いて!」



 ―――操縦者の命令に従い、大巨人が動き出す。



 ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ!



「うおおおおおおおおおおおおお!!こいつぁすげーーーーーーーーーー!!」


「めっちゃ格好良いっしょ!?」


「俺も昔、カロリーゼロに乗ってみたいと思ったことはあった!だが魔物の肩の上に乗るなんて普通は不可能だ。そしてコイツを生身で倒せる召喚士なんかが存在するわけもなかった。まさか子供の頃の夢が今になって叶うとは思わなかったぜ!」


 やっぱり巨大ロボは男の子全員の夢だよね!!



 ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ!



「な、なあ!そっちの建物を殴ってみてくれないか?どうせ倒壊寸前なんだから問題は無い筈だ!」


 悪そうなお兄さんが指差してる方向は、秘密基地じゃない建物だ。

 確かに倒壊寸前だし、アレなら壊しても問題無い気がする。


「タマねえ、ゴーレムパンチであの建物ぶっ壊してもいい?」

「許可する」


「なんか偉そうだなオイ!つーか、その子の許可が必要なのかよ!!」


 安心して下さい。俺も同じこと思いました!


「あ、悪そうなお兄さん!右手でパンチするから、落ちないようにガッチリ掴まっててね!」


「あっそうか!殴る時は肩が持ち上がるよな。よ、よし!いいぞ、やってくれ!」


「じゃあゴーレム、あの建物の壁を右手でパンチだ!!」



 ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ!



 建物に近付いたゴーレムが右腕を振り上げた。



 ドゴーーーーーーーーーーーン!!



「うおッッッッッッッッッッッッ!!」


「おおおおおおおお!!ゴーレムパンチすげーーーーーーーーーーーー!!」

「強い!!」


 やっぱりパンチをすると肩が激しく上下してしまうようだ。しかし出っ張りをガッチリ掴んでたおかげで、悪そうなお兄さんは何とか落下せずに済んだ。



「こりゃダメだ。殴るのは危険過ぎる!人が乗っている時はやらん方がいいぞ!」



 やっぱ中に乗るようなロボットじゃないと、近接戦闘はアカンか。

 ゴーレムを戦わせる時は肩から降りないとダメだな。


 悪そうなお兄さん、人柱になってくれてありがとねーーー!!

 

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