第78話 1体だけで満足するわけないでしょう

 

 ズズーーーーーーン!


 幾度目かのカブトムシアタックで、とうとう大巨人が力尽き、背中から倒れた。



「っしゃーーーーーー!3体目ゲットじゃあああああああああああ!!」

「これって悪そうなお兄さんの分?」

「いやそういうわけじゃないんだけど、でも3体で行進するのも楽しそうだね!」



 今日はタマねえが休日だったので、森にゴリラくんを放すついでに、前回魔物を倒しまくった岩場まで来たのだ。


 主な目的は召喚獣の増量なんだけど、ゴーレム軍団を作ろうと閃いたのです!!

 魔物のスタンピードが発生した時に街を守らなきゃいけないからね。


 ゴーレム軍団で守備を固めて、他の召喚獣で魔物を殲滅。

 もはや完璧な作戦としか言いようがありません!


 この聳え立つ壁を越えるのは魔物の大群といえど難しいハズ!


 しかもスタンピードが発生した場合、野生のゴーレム達も街に攻め込んで来るかもしれないので、敵の戦力を削る狙いもあるのですよ。


 あの有名なバスケットボール漫画でも言ってたし!


『リバウンドを制する者は試合ゲームを制す!』


 相手の攻撃を途切れさせることで味方の得点に繋がり、『-2点』が『+2点』になるから4点分の価値があるとかそういう意味のある名言だ。


 まあ、シュートが外れなきゃリバウンドにすらならないんですけどね。


 っていうか、例えがちょっとズレてるか。

 敵将と内通していくさの時に寝返らせたって方が近いな。


 まあとにかく敵戦力魔物を味方に引き入れるってのは、召喚士にしか出来ない大技なのです!



「よし、レンクル!次のゴーレムを探して来て!」


『クアッ!』


 レンクルミアトン(顔はイヌワシだけど模様は鷹のような鳥)が大空に舞い上がり、次の獲物を探しに羽ばたいて行った。



「やっぱレンクルは優秀だな~」

「空から探す方が簡単なの?」

「もちろんだよ!適当に探し回ってたらその辺の魔物全員と戦うことになるでしょ?でも空からなら狙った獲物を安全に探せるからね~」

「なるほど」



 そしてレンクルが次のゴーレムを見つけて帰って来たのでその方向に向かったが、やはりこの辺は魔物が多いようで、すぐ戦闘になってしまう。



「メルドア・黒豹・サソリは正面!蜘蛛とハイエナ達は右!狼とキツネ達は左に突撃だ!」



 近距離攻撃は召喚獣達に任せ、ショタはゴーレムの上からカブトくん達で援護射撃を開始する。


 タマねえは本当に危険が迫った時だけ守ってくれればそれでいいので、いつもの様にチョコを齧っているだけなんだけど、小学生に命懸けの戦闘をしてもらう気なんて最初から無かったからこれでいいのだ。


 まあ単純に話し相手だね。



「あ、パンダじゃないパンダがいる」

「何それ?」


 タマねえの指差す方向を見ると、汚い真っ黒な魔物がハイエナ達と戦っていた。


「あーーー、野生のパンダちゃんはめっちゃ汚いって言ってたもんね!確かにアレはすごく臭そうだ・・・」


 アレとくんずほぐれつのタイマンを張らなきゃならないライガーさんのことを想うと、自然と涙が出てきますよ・・・。



 あれ?この汚い始祖パンダちゃんを仲間にすれば、もうライガーさんが戦わなくてもいいのでは?


 ・・・いや、俺がいなくても自由にパンダちゃんを連れ回せるメリットは計り知れないんだから、ライガーさんも所持しておいて損は無いハズ。


 危なくなったら召喚獣で助けるつもりだし、そもそもレオナねえが横についてるのに、致命傷を負うような事態にはならんか。


 うん、パンダちゃん2号のことはライガーさんに報告しないでおこう。


 どうやって2体目をゲットしたかの説明もしなきゃならんから、また嘘をつかなきゃならないのも心苦しいし。



 そうこうしている間にショタを囲んでた魔物らを殲滅し、その全てを召喚獣にすることが出来た。


 そして4体目のゴーレムとの戦闘が始まる。




 ◇




「っしゃーーーーーーーー!5体目のゴーレム、ゲットだぜーーーーー!!」

「全然足りない。あと5体は必要」

「倒した直後なんだから、まずは喜ぼうよ!!」


 さっき調子に乗ってゴーレム軍団を作るとか言っちゃったもんだから、タマねえの頭の中ではすでに画面右から左に向かってゴーレム群が流れて、『リーチ!』って状態なんでしょうね!『激熱』とかの文字も出てるのかもしれない。



 5体目のゴーレムをストックした。



「もう今日はこれくらいにして帰らなきゃ、夕食に遅れちゃう」

「ハンバーグ?」

「いや、ハンバーグは昨日食べまくったんだから、今日は違うと思うよ」

「ハンバーグ大好き!リリカも大好きだって言ってた」

「ボクも大好き!でもそればっかり食べてると飽きちゃうよ」

「もう死ぬまでずっとハンバーグでいい」

「いやいやいやいや、考え直した方がいいって!他にも美味しい料理なんていっぱいあるんだから」



 その気持ちはすごくわかるけどね!



『カレーだったら死ぬまで食い続けることが可能』


 そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。


 しかしですね、1週間連続カレーが限界でした。

 むしろカレーが嫌いになりかけたほどです。


 ただ不思議と、[ご飯・塩鮭・味噌汁・沢庵]の組み合わせを1ヶ月とかなら余裕な気がするんですよね。単純に一品だけってのがキツイのかも?



 とりあえず今日の所は、ゴーレム5体+魔物いっぱいという成果を上げ、メルドアに乗って気分良く家に帰りました。



 ちなみに夕食はハンバーグだった・・・。いや、美味しかったけどね!

 

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