第22話 結構会話が出来るようになった

 更に3週間が経過した。

 この間にも色々あったけど、まあ今までの行動パターンとほぼ一緒。


 とにかく言葉を覚えることに集中してたから、あれ以来裏の森には一度も行ってない。その甲斐あって、ようやくお姉さん達と話が出来るようになった!


 まだ会話にわからない単語が出て来ることはあるんだけど、その都度オウム返しで質問しているから知識がどんどん蓄えられて行く。


 おそらく子供の吸収力と大人の頭脳の相乗効果で、これほど早く言葉を覚えられたんだと思う。自分でも物覚えが良い自覚あるしな~。



 ―――すなわち、そろそろこの世界を知るために動く時が来たのだ。




 ◇




職業クラスがいっぱいあるって聞いたんだ!」

「おお~~~!クーヤくんもとうとうクラスに興味を持つようになったか!」



 やはり聞くなら専属教師でもある文学少女が適任だろうと、お昼を御馳走になってからミッションを開始した。


 ちなみに彼女の名前はティアナ。


 仲良くなったお姉さん方には、みんな『お姉ちゃん』を付けて呼んでいるので、彼女を呼ぶ時は『ティアナお姉ちゃん』となる。


 まあショタが年上の名前を呼び捨てにするのもおかしな話だし、『さん』付けだと少し距離がある感じなので、これが一番良い選択なのですよ。


 ただ『お姉ちゃん』呼びだと、どうも萌え死にさせてしまうほどの破壊力があるらしく、『ティアナお姉ちゃん』と呼んでからは、膝の上に抱きかかえられるポジションがデフォになってしまった。


 すぐ頭をくんかくんかされてしまうので、毎日の入浴も欠かせない。怖くて屋敷のお風呂が使えないから外で行水だけど。



「ティアナお姉ちゃんも、何か職業クラスについてるの?」

「お姉ちゃんは『ウィッチ』だよ!」

「ウィッチ?」


 それってゲームでは魔法使い系の何かだよな!?魔女のことだっけか?

 魔法とかめっちゃ羨ましいんですけど!!俺も魔法使い系だけど何か違うのよ!


「えーとね、女性の魔術師のことをウィッチ、男性の魔術師のことをウィザードと呼ぶんだよ」


 へーーー!!魔法使いって男と女で呼び方が変わるのか。

 ホモ勇者の国では職業ルーレットが大雑把に纏められてたんで項目が少なかった。


 それを考えると、こっちの世界の方が色々と細かくて複雑な仕様みたいだな。


 そういや長髪オタくん元気でやってっかな?


 ・・・・・・いや、彼のことを考えるのはやめよう。

 筋肉祭りに巻き込まれてるヤバイ想像しかできねえ。深入りしてはダメな世界だ。


 あれ?そういや初めて聞いた単語なのにちゃんと『ウィッチ』って聞き取れたぞ?

 職業に関してはこの世界でも呼び方が一緒なのか。


「おおーーーーーーー!!ティアナお姉ちゃんも魔法が使えるの!?」

「使えるよ!まだ学生だから、それほど強力な魔法は使えないけどね~」


 そういや『魔法』はマジックだし、『魔術師』はマジシャンって呼び方だった。


 今出て来た『ウィザード』ってのは英語では魔法使いのハズだけど、魔術師と魔法使いの単語の違いはそこにあるんだな。

 男の魔術師マジシャンは『ウィザード』、女の魔術師マジシャンは『ウィッチ』か。よし覚えた!


 しかしなぜ地球と呼び方が一緒なのか気になったけど、どうやらたまたま一緒だったわけじゃ無さそうだ。剣と魔法の世界では共通されてるのかもしれない。


 ルーレットに職業クラスがいっぱいあったから、一つ一つ憶えるのが大変だなーとか思ってたんだよね。呼び方が一緒なのはホント助かる。


「見たい見たい!!」


「え~~~~~!?そうだなあ・・・、こんな場所で派手な魔法を使ったらお姉ちゃん兵士に連れて行かれちゃうから、危なくないヤツね?」



 ティアナお姉ちゃんが、右手のてのひらを上に向けた。


 でも左手は相変わらずショタを抱きかかえているので、魔法って思ったよりお手軽に使えるみたいだな。



『&レウ#ソリュ>ェグ¥デ%』



 うわ・・・、呪文なんだろうけど何言ってんのかまったくわからん。

 召喚士でも簡単な魔法は使えるとかだったら、今の呪文を覚える必要があるのか。


 ティアナお姉ちゃんの掌の上に光の球が出現した。


「にゅあっ!すごく眩しい!!」

「あはははは!光の魔法なら危なくないでしょ?」

「すごいすごい!ボクにも魔法って使える?」

「クラス次第ね。魔術師系のクラスじゃなきゃ魔法は使えないの」

「えーと、えーと、どうやったら職業クラスにつけるの?」

「8歳になると教会で『$ェ>トン%』を受けられるの」


 うわ、新しい単語が来やがった。


「$ェ>トン%?」

「ああ、えーとね、神様が子供達にクラスを授けてくれるン%ミ#よ」


 ぐぬぬぬぬ・・・、祝福の儀式って感じかな?

 『ン%ミ#』も聞き返したいとこだけど、しつこく聞き過ぎるのもな~。


 会話が面倒になったら離れて行ってしまうかもだから、引き際も大事なのだ。

 この単語だけ覚えておいて、他の人に聞くのがベストだろう。


「じゃあ8歳までダメなんだね・・・」

「クーヤくんって5歳だったよね?クラスが貰えるのは3年後だね~」


 すでにルーレットで召喚士が当たってますけどね。

 こりゃあ人前で召喚魔法は使えませんなあ・・・。


「ん-ーーと、何の職業クラスが貰えると良いの?」

「それはなかなか難しい質問ね!!どれになっても良い所と悪い所があるから、自分に合ったクラスに当たるのが一番だね~」

「悪い所もあるの!?」

「ああ、悪い所って言い方は良くないか。例えばクーヤくんは魔法が使いたいでしょ?でもグラディエーターとかになっちゃうと魔法が使えないの」


 ああ、そういう意味ね。グラディエーターとか、むっちゃ名前が格好良いから当たりっぽいけどな!


「そっかー!でもやっぱり人気がある職業クラスってあるよね?」

「そうねえ・・・、パラディンなんかは剣と回復魔法が使えるから大人気ね!魔法系ならやっぱりセージかな~」


 セージ??

 なんだその職業は!英語?sage?


 あ、賢者のことか!!

 その言葉だと強そうに感じないんで、賢者はマジで日本語で頼む!


「そういえばクーヤくんはクラスに興味があったみたいだけど、なりたいクラスとかあるのかな?」


「・・・召喚士」


 なりたいんじゃなくて、すでになってるんですけどね!


「ショーカンシ?んんん?そんなクラスあったかしら・・・」


 ・・・え?


 って、日本語じゃん!召喚士って英語でなんだっけ?えーと・・・。

 召喚・・・、獣・・・、ケモナー・・・、あっ!サモナーか!!


「ちがった!サモナーだった!!」

「・・・・・・え?」


 なんスか?その反応は。

 どうも嫌な予感がするんですけど!



「サモナーか~。ぐぬぬぬ、クーヤくんが筋肉男になるのは嫌だなあ・・・」



 はい?なんでサモナー目指すと筋肉男になるんだ!?

 ホモ勇者と一緒に筋肉祭りに参加するつもりなんか無いぞ!!

 

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