第221話 マッチョが空を飛ぶ!(ダメ猫付き)
お土産で埋め尽くされた食堂だったけど、売り上げが登り龍となったパンダ工房は従業員の数もどんどん増えているので、ベイダーさんが『これだけあれば足りないってことはないだろ。全員好きなのを持ってっていいぞ!』と言うと、若干争奪戦はあったものの、お土産はキレイさっぱり無くなった。
「とんでもない量だったから、貰い損ねたヤツはいなさそうだな」
「タマが注意しながら見てたから大丈夫」
「食堂にいるならちょうどいいや!さっきのお土産とは別のお土産も出すね!」
「まだあるのかよ!」
テーブルの上に、リナルナ名物の香辛料を並べていった。
「これ全部香辛料なんだよ?」
「なんだと!?」
「リナルナの香辛料を買って来るとは気が利くじゃないか!」
「あ、そういえばライガーさんは、外国に行ったことがあるって言ってたもんね」
「仕事でリナルナの首都まで行ったんだ!あの時宿で食った夕食が、とんでもなく美味かったのを覚えているぞ!」
「それって、鳥の丸焼きじゃねえか!?」
「そうそう!ただその時は忙しくてな、買い物をしている余裕が無かったんだ。しかしこれだけの種類の香辛料があれば、あの味が再現出来るかもしれん!」
あの味を知ってるなら、ココに並べられた香辛料の価値がわかるハズだよね?
やっぱり大人買いして正解だった!
ボク達もお腹が空いていたので、リナルナの話をしながら、ライガーさん達と一緒に昼食を食べた。
◇
今日ココに来た理由として、お土産を渡す以外にグリフォンの鞍の製作依頼の件もあったので、とりあえずライガーさん・ベイダーさんと一緒に社長室に移動した。
「そういや、セルパト連邦まで遊びに行った時のお土産と聞いて納得してしまっていたが、1週間の旅行とか言ってたよな?」
「うん」
「俺が仕事で隣国まで行った時は、往復で1ヶ月かかったんだが?」
ライガーさんのツッコミに、室内の温度が1度下がった。
「ライガーのおっちゃん鋭いな!さっき製作依頼したいって言っただろ?その内容が今の質問の答えだ!」
おお!レオナねえ、いい切り返し!
「おいライガー、何だか嫌な予感がするぞ!」
「奇遇だな、俺も嫌な予感がした。この感じは十中八九クーヤ案件だ!」
愛くるしいショタに、むさ苦しいおっさん二人の視線が突き刺さった。
「そんなに嫌な依頼じゃないよ!鞍を作ってもらいたいだけだし!」
「鞍?・・・ああ、あの豪快な角を生やしたシャンクルの鞍か?」
「ううん、トナカイじゃなくてもっと違うヤツ。じゃあ見せるね!」
「やっぱり嫌な予感がするぞ!」
社長室にグリフォンを1体召喚した。
「「ブホッッッッッッッッッッ!!」」
流石は、広くなった社長室だけのことはありますね!
グリフォンって結構大きいのに、テーブルを倒さなかった。
・・・ああ、召喚獣って障害物を避けるように呼び出されるんだっけ。
「何だこの馬鹿デカい鳥は!?」
「こんなにデカいんだったら、せめて外で呼び出しやがれ!」
「だって、二人がどうしても見たいって言うから・・・」
「見たいなんて言ったか?」
「嫌な予感がするとしか言ってねえぞ!」
細かいことを気にするマッチョ共ですね!!
「これがさっきの答えだ。アタシらは空を飛んでセルパト連邦まで行ったんだ」
「「空を飛んだだと!?」」
「命綱は付けてたんだけど、やっぱ鞍が無いと危なくてな~。次からはもっと安全に旅がしたいんで頑丈な鞍を頼むぜ!」
「いやちょっと待て!コイツがいくらデカくても、何人も乗せて飛ぶのはさすがに無理があるだろ!」
「クーヤなめんなよ?召喚獣はちゃんと人数分揃えてある!」
「はあ!?空飛ぶ召喚獣を何体も手に入れたのか!!」
全部見せた方がいいなこりゃ。
どうせ鞍をいっぱい注文したらバレバレだし。
「じゃあ乗ってるとこ見せる?っていうか、ライガーさんも飛んでみる?」
「俺が!?・・・いや、重くて無理じゃないか?」
「ねえグリフォン!この人を乗せて空を飛んだり出来そう?」
『クルル?』
「どうだろう?とのことです」
「やってみなくちゃわからんっつーことか。まあとりあえず飛んでみて、ダメそうだったらすぐ降りてもらえばいいんじゃね?」
「だね!じゃあライガーさんとベイダーさんは心の準備をしとくように!」
「なにッ!?俺も飛ぶのか!!」
「死ぬ時は一緒だ!!」
工房の外に出た。
「おい!なんであんな所にカロリーゼロがいるんだよ!?」
「ぺち子姉ちゃんにもお土産を渡したかったから交代してもらったの」
「いやアレはマズい。怖くてお客さんが入って来られないだろ」
「あっ、そうか!」
ゴーレムを消した。
「カロリーゼロが消えたにゃ!」
「あ、そうだ。ぺち子姉ちゃんも一緒に空飛ばない?」
「飛ぶにゃ!」
入口の見張りをしていたぺち子姉ちゃんが駆け寄って来た。
「どうやって飛ぶんにゃ?」
「一緒について来たらわかるよ」
「一生ついて行くにゃ!」
「いや、『一生』じゃなくて『一緒に』です。そんなについて来なくていいです」
「じゃあ3日ついて行くにゃ」
「なんか前にも同じような会話をしましたよね!?」
パンダ工房の裏に移動した。
いっぱい物が置いてあるので、広い場所を探す。
「この辺でいいんじゃね?」
「全部出すと資材の上にも乗っちゃうけど大丈夫?」
「シートの下は木材だから問題ないぞ」
「じゃあとりあえずみんな呼ぶね。グリフォン全員召喚!」
シュシュシュシュシュシュシュシュッ!
資材置き場がグリフォンまみれになった。
「にゃんか鳥がいっぱい出たにゃーーーーーーーーーーーーー!!」
「やっぱり大量に出やがったか!」
「予想してたから驚かないぞ!しかし10体か・・・」
「すなわち、アタシ達が注文したい鞍の数は10個ってことだ」
「飛ぶのに邪魔になるから、一旦数を減らすね~」
グリフォンを3体まで減らした。
すかさず、レオナねえ・アイリスお姉ちゃん・タマねえの三人がグリフォンの背中に乗って、飛ぶためのセッティングを開始する。
「今ね、背中の長い毛を使って輪っかを作ってるの。落ちないようにその輪っかに掴まりながら空を飛ぶんだよ!」
「なるほど・・・」
「確かにそれでは少し危険だな。しかし鳥に鞍なんか乗せられるのか?」
「そこを何とかするのが職人さんの仕事なのです!」
ビニール紐を渡して補強もバッチリ。
ダメ猫と二人のマッチョが空を飛ぶ時が来たのだ。
「いきなりじゃ心配だろうから、アタシが手本を見せるか!」
バサッ バサッ バサッ バサッ
グリフォンの上に乗ったままだったレオナねえが、そのまま空に舞い上がった。
「「飛んだ!!」」
「うっひょーーーーーーーー!レオにゃんが飛んだにゃーーーーーーーー!!」
バサバサバサッ!
そしてその辺をクルっと一周して、すぐ戻って来た。
「こんな感じだ。んじゃ三人共グリフォンに乗って命綱を付けてくれ」
「俺の命もここまでか・・・」
「本当に大丈夫なんだろうな!?」
「大丈夫だよ!無理そうだったらグリフォンにすぐ降りて来てもらうから」
「こんにゃの絶対面白いに決まってるにゃ!!」
ダメ猫と二人のマッチョは、レオナねえ達に乗り方を教わった。
体型が近い方が先生に向いているので、ボクとタマねえは指導に口出ししません。
「まあ軽い気持ちで空の散歩を楽しんできな!」
「考えていても仕方あるまい。じゃあ行くぞ!!」
バサッ バサッ バサッ バサッ
猫とマッチョが空へ舞い上がった。
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
「飛んだにゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
マッチョ共は涙目だけど、やっぱりあのニャンコだけは楽しんでますな~。
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