第15話 これは邪魔くさい

 今日もいつものようにガールハントをしに街へと繰り出す。


 だって、毎日やらなきゃ死んじゃうからね☆



 ・・・クソが!!

 これもすべてあのファンキー野郎のせいだ!


 連絡するって話はどうなったんだよ!?もうここまで音沙汰無しだと、完全に忘れられてる説が濃厚だろう。見た目通りのクズ野郎だったってわけだ。


 これから転生ルーレットに挑む諸君。

 あのファンキー野郎の言うことなど絶対に信用するな!


 身体を貰ったら、そこからは自力で這い上がるんだぞ?奴を頼ろうと待ち構えていても無駄だ。じり貧になるから己の手で道を切り開け!



「ただいま~」



 屋敷に帰って来た。



 今日も成果は上々で、30歳くらいの優しそうな女性に串肉を奢ってもらうことが出来た。その後少しの時間だけだったけど、言葉を教えてもらうことも出来た。


 なんか居た堪れない気持ちになるけど。言葉を覚えるまでの辛抱だ。

 会話が出来るようにさえなれば、違う道も切り開けるのだから。


 今や1日のルーティンの一部と化した、リコーダーの練習をしてから布団に入る。



「おやすみなさ~い」






 ************************************************************






 特に変り映えのしない日常生活になってきたけど、俺には一つだけ他人と違う行動パターンがある。


 そう、召喚だ!


 今のところ『こいつぁすげえぜ!』ってほどの恩恵を受けてる感じはしないけど、もしかしたら生活を一変させるアイテムが出現する可能性だってあるのだから、これだけは忘れずに毎日続けなきゃならん。


 いつもの場所に移動し、精神を集中する。


 もう電化製品のことは頭から綺麗に排除し、完全に無の心で挑もうと思う。

 この行動に意味があるのかは知らんけど、原因の一つには十分成り得るからな。



「召喚!」



 ヴォン!



 召喚の際に発生する光が雲散すると、そこには何も無かった。



「は??」


 どういうことだ!?召喚に失敗したとか?


 でもなんかおかしいぞ・・・。上手く説明出来ないけどすごい違和感を感じる。


 あれ?ベッドどこいった!?

 ってか、なんか部屋が暗くね?さっきまで明るかったハズなのに。


 右を見ると明るかった。

 そして左も明るかった。


 ここだけ暗いとか意味わからんぞ!!


 ゴンッ


「あがっ!!」


 立ち上がって前に進むと、思いっきりおでこをぶつけた。


「いってえええええええ!何なんだよもう!!」


 手を伸ばすと、そこには壁があった。まったくもって意味がわからない。


 右の明るい方へ脱出すると、部屋の奥にちゃんとベッドがあるのが見えた。

 そして頭をぶつけた壁の正体が判明する。



「はあ!?鉄板??」



 どうやら召喚には成功していたらしい。

 幅1メートル50センチ、厚さ3センチくらいの鉄板が、床に突き刺さって立っていた。


 高さも1メートル以上あるけど床にガッツリ突き刺さっているので、おそらく全長2メートル以上の鉄板が出て来たのだろう。


 目の前にこんな鉄板があったらそりゃ暗いわな。


「うわぁ~、邪魔くせえええええええええええ!!」


 せめて横倒しで出ろや!これじゃあ聳え立つ壁じゃん!部屋が狭くなったじゃん!

 一体なんなんだよもう!!


 ・・・今回の召喚は完全に大失敗だ。


 用途不明の分厚い鉄板とか、何の目的で作られたんだか。

 どこかの工場とかで作られた物なのだろうけど、正直これはひどい。


 まあ、部屋の隅っこの方で召喚してたのが救いか。

 ど真ん中にこんな壁があったら、引っ越しも考えねばならんとこだった。


 あ、やべっ!気絶の時間だ。


 気付いた瞬間、布団の上にダイブした。




 ◇




 今朝の悲しい出来事のことは忘れて、いつも通りに街でガールハントに勤しみ、お勉強で少し賢くなって帰宅した。


 そして裏の小川で水浴びし、素っ裸のまま洗濯物を抱えて屋敷まで歩き、部屋のハンガーに掛けてからリコーダーの練習。そして疲れたらそのまま就寝。


 来た当初と比べたらかなり安定した生活にはなったけど、もちろん今の生活をずっと維持しようとは思ってない。


 今の自分に出来ること。それが言葉の勉強であり、そして召喚魔法だ!



 ヴォン! ギィン!



 ビクッ


「うわっ!・・・な、なんだ!?」



 何か細長い物が出現したと思ったら、ゆっくりこちら側に倒れて来たので、避けたら背中側にあった鉄板に当たって甲高い音が響いた。


 見ると鉄板にもたれかかってたのは鉄の棒だった。

 いや、違う!これは・・・。



「バールのような物だ!!」



 と思ったけど、『ような』じゃなくて普通にバールだな。

 銀色に光り輝いているので、どうやら新品が出て来たもよう。


 うーむ・・・、どうしようこれ。


 生前の姿ならば武器として使うことも出来ただろうけど、ショタの身体ではこんなの引き摺って歩くことすら困難だろう。


 あえて言おう、ハズレであると!


 電化製品が出ても使えないからそれ以外で頼むって思ってたけど、今度は鉄ラッシュかよ!いやまあ、俺が戦士を目指してマッチョになればもしかしたら役立つのかもしれんけどさ、すでに召喚士が確定してるんスわ。


 バールを振り回す召喚士がいても面白いかもしれんけど、どっちにしても10年後とかの話だと思うんだよね。現時点ではまったくもって役に立たん。


 なんかもっとさあ、服とか食い物とかが出てもいいのよ?


 俺ってたしか運が良くなったって話なのに、言うほど運良いかなあ?あひるポンチョには助けられてるけど、それ以外のアイテムは全部微妙じゃん。


 あーでもゴミとかが出たわけじゃないから、広い視野で見ると運が良い方なのか。

 このバールにしても、どこかに高い値段で売れる可能性があるもんな。


 そうだな・・・。

 今は使えなくても、きっと何かに役立つだろうって前向きに考えよう。



 さーて、気絶の時間だ。


 全身の力が抜けて来た所でベッドにダイブした。






[次回予告](脳内でテキトーな音楽を再生して下さい)


「黒い五連星だと!?」

突如クーヤちゃんに迫り来る黒い奴!事態は急展開を迎える!!


↑(言うほど切羽詰まってないし、まったりしてます)

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る