第243話 ボクは時計を渡しに来たのです
悪そうなお兄さんに時計を渡すため、我が家のある西区とは真逆の東区にある
「このコートなんだが、隠しポケットを10個ほど作って欲しいんだわ。俺の職業は知ってるだろ?服に暗器を仕込む必要があるんだ」
「あ、そうか!ガイアは
そんなのすっかり忘れてた!
確かにその職業だと、隠しポケットは重要だよね。
「えーと、ボクの考えでポケットの位置を決めたら使いにくいかもだから、悪そうなお兄さんが絵を描いて補足して!」
「絵はあまり得意じゃないんだが、こればっかりは人任せにできんか・・・」
「場所を指定するだけなんだから、上手くなくても伝わればそれでいいだろ」
「まあな」
悪そうなお兄さんが隣の席に座って絵を描き始めたんだけど、結構重要なことだから長くなると思って、ボクは黒の革ジャンの絵を描き始めた。
「よし完成だ!服の素材まで指定しちまったけど、そういうのは大丈夫なのか?」
「プリンアラートのドレスも『ギルサイダーの糸』で作ったらしいから、素材が不足していなければ大丈夫だと思うぞ。アレなら防刃効果に優れているから、アタシの服も『ギルサイダーの糸』で作ってもらうことになっている」
「ドレス?どこかのパーティーにでも行くのか?」
「天使様が私のために考えてくれた新装備です!!」
「もう脱いじまったけど『ドレスアーマー』を見たら驚くぜ?」
「ドレスアーマーだあ?・・・なるほど、装備品でお洒落をするのか!ホント、よく次から次へと面白いことを考えつくよな~」
「できたーーーーーーーーーー!」
なんか隣で盛り上がってたみたいだけど、集中してたからあまり聞いてなかった。でも絶対コレも欲しがると思うんだよね。
この服が売れれば店もボクも儲かるので、少しでも多くお金を稼ぐのです!
「おお!これもメチャクチャ格好良いじゃねえか!」
「革ジャンとかいう名前のヤツだよな!?マジで全部カッコイイな!」
「悪そうなお兄さんって組織の幹部なんでしょ?だから骸骨で1番強い『
悪そうなお兄さんが、その光景を脳内に浮かべている。
「「最高だろ!!」」
二人の声がハモった。レオナねえも想像していたようだ。
ちなみに死神を『Grim Reaper』って言っても、この世界では通じませんでした。
でも『Death』だと通じるみたい。ヤバい骸骨がどこかにいるらしいですよ?
「しかしアイツらの分も注文するとなると、このコートの完成が遅くなってしまいそうだ。今入ってる注文はレオナの分だけなのか?」
「今のところはアタシの服だけだな。しかし明日にでもアイリスとナナの服をクーヤに考えてもらう予定だから、ガイアを入れたら4人分の注文になる」
「なるほど・・・。なら俺達の服が完成してから革ジャンの製作に入ってもらうべきだろう。俺以外は服の存在すら知らんのだから、今すぐじゃなくても構わんしな」
悪そうなお兄さんが予め人数分用意して、部下に配布するつもりなんかな?
でもユニフォームみたいな感じだと、ありがたみが少し薄れる気がしません?
「ねえねえねえ!革ジャンを一着だけ作ってもらってさ、悪そうなお兄さんが部下の人に試着させて『格好良すぎるだろ!』って褒めるだけで、みんな興奮しながら自腹で購入するんじゃない?」
「確かに俺が買い与えるよりも、自らの意志で購入した方が、手に入れた時の喜びが大きいか・・・」
「クーヤはそれでいいのか?組織の制服として購入してもらった方が、確実な収入源となるだろ」
「良い服は勝手に売れるのです。喜んで着てもらった方が服も大切にされます!」
それを聞いた二人が、遠くを見るような目をした。
「コイツ本当に子供か?」
「考え方が達観していて、どこかの社長と話してるみたいだ・・・」
「クーヤは社長かわいい」
「とても広い視野で物事を見てますよね!」
タマねえ、『社長かわいい』は意味がわかりません!!
「あ、そうだ!悪そうなお兄さんに時計を渡すために来たんだった!」
ペカチョウを召喚して、時計を出してもらった。
「ゴンドラにあった時計の数倍デカいな!おっと、いくらだ?」
「これはボクからのプレゼントなのです。お金はいらない」
「いいのか!?」
「でも次の購入からは普通にお金がかかるからね~。ボクの知り合いなら今のところ4万ピリンで買えるけど、これを作れる時計屋さんが1人しかいないので、大人気になったらもう少し高くなるかも」
「思ってたより高いな!しかし購入するなら早い方がいいのか・・・」
「パンダ工房でも人気が出てきたから、買うなら今のうちかもだね~」
「なるほど・・・、とりあえずはこの時計を使ってみてからだな。有難く使わせてもらうぞ!マジで感謝する」
「あい!」
注文が殺到したら、レミお姉ちゃんが大変なことになっちゃうかも!
まあそんなこんなで、今日は本当に中身の濃い1日でした。
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・・・と思ったけど、濃厚な1日はまだ終わってませんでした。
なんとレオナねえが湯治について来てしまったのです!!
「あのう・・・、もしかして丸洗いですかね?」
「今日はマジで色々あり過ぎて、忘れるとこだったぜ!!」
「タマは完全に忘れてた」
「私も忘れてました・・・」
正直もう疲れてるから明日にしてほしいんだけど、レオナねえに丸洗い師の腕が試されているのだ。ここで引くわけにはいかない!
「タマねえ、この一戦には丸洗い師としての尊厳がかかってます」
「わかってる。全力でいく!!」
「私はもう丸洗いしなくていいので、レオナさんに集中して頑張って下さい!」
「見せてもらおうか、丸洗い師の実力とやらを!」
こうして余裕たっぷりのレオナねえを討伐するため、丸洗い師の意地とプライドを賭けた大勝負が始まった。
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